「小飼弾の論弾」で進行を務める、編集者の山路達也です。
無料公開部分の生配信およびアーカイブ公開はニコ生・ニコ動のほか、YouTube Liveでも行っておりますので、よろしければこちらもぜひチャンネル登録をお願いいたします!
今回は、2024年2月20日(火)配信のテキストをお届けします。
次回は、2024年3月5日(火)20:00の配信です。
お楽しみに!
2024/2/20配信のハイライト
- 「H3打ち上げ成功」なんだけど
- 今の日本の状態はデフレ? インフレ?
- ナワリヌイ氏死去とヒューゴー賞不正問題
- 視聴者質問「鳥と暮らします」「心理学」「脚本生成とAI」
- 「人間が数学ができる謎」とAIの作る「私のためだけの物語」
- 「サム・アルトマンの1000兆円調達」と「不安感の正体」
「H3打ち上げ成功」なんだけど
山路:最初、ちょっといいニュースからいきますかね。宇宙開発、うまくいってなかったH3がようやく打ち上げ成功という。
小飼:はい、おめでとうございます。なんだけど、
山路:素直に、え、なんで「ですけど」がつくの? 逆接が。
小飼:いや、H3に限って言えば、成功しました。
山路:ほう。
小飼:前の打ち上げから11ヶ月経ってます。まぁ1年弱ですよね。
山路:まぁそうですね。はい。
小飼:その間にファルコン9は何回打ち上げがあったんですか?
山路:おお。もう週刊どころじゃないんだっけ?
小飼:どころではなくて、スターシップも最初の打ち上げというのが実質失敗からだから、次のやつまで半年くらいしか離れてないじゃないですか。
山路:まぁそこでH3というかJAXAの肩を持つならば、それをできてるのってSpaceXだけじゃないかな(笑)。
小飼:まぁそれはあります。それはあります。SpaceXに地位を一番脅かされてるのは、どっちかというとJAXAというよりもアリアンスペースなんですよ。と、あとあれですよね、ロシアの、この場合ロスコスモスになるの。で、今こういうのもなんですけども、アリアンにできることも、ソユーズにできることも、みんなファルコン9でできるんですよね。ファルコンMまで含めると。そう、ISSに人を送り込むのもできれば、静止軌道に衛星を送り込むのもできれば、だから本当に万能で、それを週2度ペースで打ち上げてるんですよね。
山路:週2か(笑)。
小飼:はい。
山路:下手な離島のフェリーよりも多いっすね。
小飼:そうなんですよ。種ヶ島の打ち上げって年間たかだか4、5回なんですよね。これ、さすがに勝負にならなさすぎねーとか。
山路:ただ宇宙ロケットって、安全保障的な文脈もあるからやめるわけにいかないところは。
小飼:うん、いやだからちゃっかりあっさり、スパイ衛星はH-IIAで打ち上げてたじゃん。
山路:やることやらないといけないから。
小飼:そう、だから本来であれば第H3号もH-IIAで打ち上げる予定だったというのをH3に、初号機に回したのはどこのどいつでしょう。はい。まぁでも次がその後継機なんでだよね。だいち4号は次のH3で打ち上げる予定なんですよね。
「何が律速なの? 許可などの申請? それとも予算?」(コメント)
小飼:いや種ヶ島自体がけっこうな律速になっている。
山路:え、位置がってこと?
小飼:位置が。うん。やっぱ日本の近海には漁船がいっぱいいるので、そのクリアランスとかも、もう。
山路:そういうことなんですね。
小飼:しなくてはいけなくて。
山路:あー。緯度とかの問題とかっていうよりは。
小飼:だから、ちゃんとNOTAMを出してっていう。そうやってやってくと。当初は年2回だったんですよ。それを増やしてもらった形跡、いきさつっていうのはあるんですよね。ちなみにSpaceXのほうなんですけれども、週2のペースで打ち上げてるのは確かですけれども、同じ射台からじゃないんですよね。
山路:ん?
小飼:打ち上げ箇所が3つあるんですよ。東海岸からも西海岸からも打ち上げてるんですよ。だから、そこの部分っていうのも。
山路:もうなんか金の引っ張り方がそもそも違うというか、ちょっと本当に打つ手は。
小飼:ただ、それを言ったら、いちおう補助金どっさりもらってるとは言っても、いちおう民間企業なわけですよね、SpaceXって。
「ロケットって儲かるの?」(コメント)
小飼:いや、だからずーっと儲からないもんだったんです。SpaceXのすごいところっていうのは、需要まで自分たちで用意してるんですよ。
山路:うんうん。Starlinkという。
小飼:Starlinkという。Starlinkの需要があるからもう、週2回のペースで打ち上げられるんですよね。
山路:その上、アメリカ政府からのビジネスも受けてる。
小飼:まぁ補助金も受けてっていう。だからそれを言ったら、いちおう日本も確かJAXAの予算と3分の1というのはスパイ衛星絡みです。はい。
山路:あー、国からのお金ってことなわけなんですね。
小飼:はい。まぁ情報収集衛星というやつですね。それもどの程度、役に立っているのかというのはあんまり国民のほうに出てこないんですけれども、本来であれば自然災害が出てきた都度、ちゃんとその性能を発揮してほしいんですけれども、こう言っちゃなんですけれども、今年の元旦の地震の時にもクソみたいな画像を出してきましたよね。それもPDFで。
山路:(笑)PDFで、いろいろオチが。
小飼:いや、だからそもそも今の日本の情報収集衛星って、民間の地球観測衛星よりも優れてるの? っていう疑義さえありますよね。出てる解像度がショボいんで。ただ、この解像度でいけるっていうのはそのまま出しちゃうと、スパイ衛星のスパイ衛星としての価値が損なわれてしまうっていうのも確かなんですよね。それは別の文脈でトランプがやらかしてましたよね。
山路:え、出しちゃったってこと? 高精細な。
小飼:高精細な画像を。特に、NSAとかに諮ることなく出しちゃったんですよね。
山路:そういうのってどれくらいの精度があるかわかっちゃったりするわけだから、非常にヤバい話なわけなんですね。
小飼:一枚あれば、ちゃんとドットピッチ見ればどれくらいの性能がっていうのはやっぱりバレてしまいます。確かに民間よりは高解像度でしたという。
「宇宙で儲けるってなると通信しかないの?」(コメント)
小飼:かつては通信だったんですけどね、という言い方にどうしてもなってしまいますよね。通信衛星で有名なものといえば、静止軌道に上がっているやつですけれども、まぁ遅いわけですよね。光の速度があるので。やっぱり遠くにあるということ、電波ということもあるので、光ファイバーとの競争にはちょっと勝てない状態です。
山路:あと写真なんかのビジネス、観測写真とかのビジネスってけっこうそれなりの規模はありますよね。通信ほどではないのかもしれないけど。
小飼:そうですね、日本でもさくらインターネットさんがやってはいますよね。
山路:ロシア関連の軍事評論家として有名な小泉先生は、個人でそういう観測写真のサービスを加入していたり。けっこうなお金がかかるらしいですけどね。そういうふうなところでビジネスやっている会社はありますけど、でもやっぱり一番でかいビジネスは通信ということですか。
小飼:今のところ一番大きいのは同じ通信といってもLEO、低軌道なやつですよね。何しろ必要な数が多い。
「宇宙から盗撮できるってこと」(コメント)
小飼:いや、だからまさにスパイ衛星がやっているのはそれです。盗撮しているわけです。
「小泉さんの画像解析手法をテレビで紹介してビビった」(コメント)
山路:びっくりするほど、なんか昔の常識から考えるといろんなものが筒抜けだという、
小飼:いやいやいや、冷戦の頃からじつはそれくらいのことはやってたんです。解像度は上がったんですけどね。解像度は上がったんだけど、やっていることは同じです。
山路:単純に個人でも加入できるみたいな(笑)、
小飼:まぁそういうことですね。
山路:ある意味、そこが民主化されただけであって。
小飼:で、あともう一つ重要なのは、きちっと日時を指定できるんですよね。軍事衛星の場合というのは、いざという時はそこの場所を撮るための軌道変更すら辞さないわけです。軌道変更というのは燃料を使うので、ものすごいコストの高い作業なんですけども、国防が絡んでいたら、そうも言ってられないでしょう。
山路:個人で申し込んでいるやつでも、そういうオプションあったりするのかな(笑)。
小飼:ただそれを言うと、さらに安上がりなのは普通の航空写真なわけですよね。だから、敵対的な空域でなければ、普通に飛行機飛ばすじゃないですか。敵対的な環境でも、U-2とかSR-71みたいなオプションというのはあるんですよね。でも、なぜかアメリカはSR-71をやめちゃったんですよね、コストが高い。
山路:ブラックバードですよね。
小飼:ブラックバードです。はい。
山路:まぁなんかそんな感じで、とりあえず宇宙のビジネスいちおういろいろやってますというところで、日本は、でもちょっとビジネスという観点からはまぁ出遅れているというか。
小飼:まぁ少なくとも。結局ものにならなかったリージョナルジェットよりはちゃんとやってるという。
山路:リージョナルジェットがいきなり出てきた(笑)。
小飼:少なくとも、リージョナルジェットとロケットとの一番の違いというのは、FAAのアプルーバル(approval)が、要するにアメリカの連邦航空局の認可は必要ないということですよね(笑)。けっこう大きな違いですね。
今の日本の状態はデフレ? インフレ?
山路:もう一つ、景気がいいんだか悪いんだかよくわからないニュース、次行ってみましょうか。史上最高値の株価と景気後退が一緒に来たよっていう(笑)。ちょっと笑っちゃいませんかと。
小飼:笑っちゃいます。
山路:なんていうのか、脳がバグる感じしませんか。日経新聞なんかはもうすぐ史上最高値、まだ今日はなってないのかな。
小飼:理由はわかってるんですけどもね。
山路:株を持てる者、持たざる者の差と、あと円安みたいな話ですか。
小飼:だから結局、政策がどっち方向を向いてるかですよね。まぁそこなんです。お賃金よりも株価のほうが優先されたわけです、政策的に。で、その結果は如実に出ているという、それだけのことですよね。
山路:あと円安になっているから、日本株がとてもお買い得になっているみたいなこともあるかもしれないですよね。
「中国がコケたし」(コメント)
小飼:それもあるんだよね。中国のコケ方がけっこうすごいんだよね。日本株のゲインよりも、中国株のロスのほうがデカいので。
山路:時価総額が1000兆円消えたっていう(笑)、
小飼:日本のGDPの倍くらいですね。だから中国のGDPの丸々一つ分くらい、これ、株価だけを見てると中国バブル崩壊したっていうふうに見えちゃいますよね。
山路:しかも怖いのが、今リンク出したんですけども、中国政府が、中国経済が悪いっていうニュースを出したところは取っ捕まえるぞ的なことを言い出したという(笑)、
小飼:前からそうだけどもね。
山路:世界的な調査会社とかが、もう中国でそんなこと言われたらビジネスできないからって撤退、そうするとでもますます情報入らなくなるわけですよね。
小飼:まぁ却ってそのおかげでリークするようになりはするわけですけどもね。
山路:ただ投資家は寄りつかなくなるわけじゃないですか、そんな透明性の低い市場には。市場最高値の株価と景気後退の日本のほうなんですけど、最近、貯蓄から投資へみたいなことをめっちゃ言うように。
小飼:ずっと言い続けてたんですけれども、道具立てが揃った感はありますね。特にNISAの枠が200万ぐらいだったのが、いくらになったんだっけ。
山路:1800万でしたよね。
小飼:になったというのがけっこうでかい。まぁでもそっちのほうは、日本株の上昇にはほとんど寄与してない。
山路:まぁだいたいS&P500とかオルカンを買うわけですよね。
小飼:そうなんですよ。海外資産なので。
山路:これってどうなんですか。これ、円安要因にはなり得る話ですよね。だけど、そのドル建ての資産を持っているのは日本人だったりするわけじゃないですか。
小飼:まぁそういうことです。
山路:この場合って、日本の経済にとっては、日本人の多くが海外の株を多く買うっていうのは、日本経済への影響に関してポジティブなんでしょうか、ネガティブなんでしょうか。
小飼:いや、まぁ日本経済っていった場合には海外の資本収支というのも入るので。だから、そこはどこに投資しようとポジティブですし、成長率というのは海外のほうが高い以上は、もし、キャピタルゲインを得たかったら、よりリターンが大きいほうがいいというのであれば、今の日本人の、俗に言うMrs. Watanabeの行動というのは全く正しいですね。
「なんで国内投資だけに制限しなかったのか」(コメント)
小飼:まぁ日本はまがりなりに自由主義を標榜している以上、それはできない。
山路:NISAの手本になったイギリスのISAというんですか、あれなんかではちょっとそれ、イギリスの株とか買うように仕向けたほうがいいんじゃないのという議論が湧き起こっているらしいですけどね。イギリスの株式市場がちょっと低迷しているもので。
山路:私の知り合いの奥さんもNISAで日本国内株の個別株を買って、それが急騰して儲かった儲かったってすごい喜んでて、やたらそれにハマっているという。
小飼:それ、まだ含み益でしょう。
山路:そうなんですけど。
小飼:利確したのであればいいんですけどね。
山路:ただ、もちろんこういう株だから相当なリスク資産ではあるから、損をすることもあるから、べつにみんなに株をしろって私、今言うつもりはないんですけれども、以前弾さんが金持ちがいかにお得か、不労所得の旨味っていうのはもらうようになってみないとわからないっていうことを言ってたじゃないですか。
小飼:そうですね。
山路:自分が金持ちになってみないと金持ちの旨味はわからないって。そういうことで言うんだったら、株を持っているだけでこんなに儲かるとか、あるいは配当がかかるとか、上昇するとか、そういった経験を多くの人がすること自体はそんなに悪いことでもないのかなとも思ったんだけど。
小飼:ただ多く、というふうに言っても、パーセンタイルで言うと、3分の1とか4分の1とかでしょうね。
山路:結局、みんなに行き渡るような話じゃねえよっていう。
小飼:行き渡りようがない。
山路:投資を推奨したところで、種銭ないところに火は起こらないというか(笑)。
「バブルの時に懲りた年寄りは多い」(コメント)
山路:確かにそれあるかもしれないですよね。
「種銭ないと無理じゃね」(コメント)
小飼:まぁおっしゃるとおりです。
山路:いやー、ただ本当に景気後退って、GDPの成長が2期連続で続いた場合はいちおう景気後退って言うらしいんですけども。今、日本の状態っていうかいまいちよくわからない。今スタグフレーションになっているんですか? それともまだデフレなんでしょうか? インフレになっているんでしょうか?
小飼:いや、はっきり言って要はマイルドスタグフレーションでしょうね。
山路:マイルドスタグフレーション。
小飼:はい。なんでGDPが伸び悩んでいるかって言ったら一番はあれでしょう、民需が下がってしまったからでしょう。だから、こう言うのもなんですけども、いつの時代も一番金を使ってくれるのはお金持ってない人たちなんですよ。なけなしのお金を使ってくれる人たちなんですよ。そこにお金が行かないことには。こういう時というのは無理やりにでもお金を回しちゃうのがいいんですよね。パンデミックの時に10万円配ったじゃないですか。あれをもっと続けていれば、こうはならなかったでしょうね。
山路:よく言われるのが、金融緩和したけどぜんぜん効果なかったから、そんなん意味がなかったみたいなことを言う人いるけど、その緩和した金の行き先が金を必要としてた人じゃないでしょっていうことに尽きると思うんですけどもね。
小飼:うん。そうなの。そうなの。直接配るっていうやつ。
山路:この日本のGDPというか財政みたいなことに関して言うと、よく緊縮財政みたいなこと、日本政府ってよく財政健全化とか言って緊縮財政しようと、
小飼:特に文科省のほうがずっとやってるよね。
山路:って言われてますけど、これって素朴な疑問なんですけど、これから日本がぜんぜん成長しないと思っているから、彼らは緊縮財政をしちゃいがちなんでしょうか?
小飼:こう言うのもなんだけども、緊縮したほうが、かえって自分の懐に入るお金が増えるからと睨んでるからという可能性も大きいですね。
山路:だけど、国に入るお金って、まだ民間の企業がお金を蓄えるってわかるんだけど、国にいらないお金があっても、
小飼:待って。その国のやることを決めてる人というのは、国ではないんです。彼らも個々人なんですよ。個々人だからこそ、個人口座に余ったお金を突っ込めるわけですよ。こう言うのもなんだけども、国全体が緊縮財政になっても、その国のやることを決めてる人たちの財布の中はそうではないという状態はあり得るわけで、実際にそうなっているわけですよね。
山路:なんていうのかな、そんなに金持ちじゃない私からすると、今そうなっている人ってもう十分なお金を持っている人じゃないですか、だいたい。
小飼:まぁ十分なお金を持っているかどうかっていうのは、本当こう言うのもなんですけど、心の持ちようなので。
山路:10億円、100億円あっても足らないと思う人は足らないし。
小飼:足らないと思う人は足らないし、はい。
山路:えー、そんな感じで国の財政というのは方針が決まっていく?
小飼:いや、マスクとか6兆円でも足りなかったわけじゃないですか。
山路:ああマスク、ヘタレでしたね。マスク、お金もらい損ねて裁判所ともめてる。
小飼:お金というのか、現ナマではなくて、確かストックオプションの行使だと思ったんですけれども。まぁでもそれは報酬をお手盛りすぎて、それはありえないって、他の株主から、株主代表訴訟だったわけですよね、それを止めたのは。
山路:イーロン・マスクって世界の長者番付で、本当に一番とか二番とか。
小飼:まぁ一番ですね。再び。
山路:そんな男が「お金でまだ消耗」してんすかっていう(笑)。
小飼:それは本当感じますね。でも、こう言うのもなんですけど、本人は普段の生活ではそんなお金使わないタイプなんですよね。今も、普段はトレーラーハウスに住んでるそうですし。
山路:へえ。そうなんだ(笑)、トレーラーハウスに住んでるというのは。
小飼:要するに、ステレオティピカルなお金持ちの生活ではないんですよね。
山路:これちょっとイーロン・マスクじゃないからよくわかんないかもしれないんですけども、イーロン・マスクはなんでお金にそんなにこだわると思います?
小飼:いや、それないと火星まで行けないと思ってんの、どうなんだろうね。
山路:だって個人の財布と、会社として調達する資金ってまた別の話じゃないですか。
小飼:なんだけども、Twitterはまさに個人の財布で買ったわけですよね。で、個人的に借金をして買ったんですよ。そこの部分っていうのがある意味すげえなというところではあるんですけど。
山路:そうか、テスラとかSpaceXは違って、Xは彼のお財布からだから。
小飼:そうなんですよ。ポケットマネーなんですよ。
山路:だから、ちょっと自分のポケットマネーというか、お財布の状況もやっぱり気になって気になってしょうがないわけだ。赤字がガンガン。
小飼:いや、だからこの場合、Twitterくらいの企業であれば、当局の許可も取らなきゃいけないと思うでしょ。いや、でもSNSはもう幸か不幸かそのカテゴリーではないので。たとえばNVIDIAがARMを買い取ろうとして。
山路:ダメって。
小飼:あるいはAdobeがFigmaを買おうとして、当局にダメ出しされたじゃん。SNSってまだそのカテゴリーに入ってないんだよ。
山路:おおー(笑)。
小飼:で、マスクが買い取る前のTwitterっていうのは上場してたじゃないですか。だから、それがまさに、ある意味、状況を悪化させたんだよね。
山路:買えちゃったってところがある意味、
小飼:というのか、それを防ぐためにはマスク以上にいいオファーを出すホワイトナイトが現れるしかないんですよね。これが未上場の企業であれば、水面下の交渉とかっていうのがあり得るわけですけれども。確かあれかな、オファーを出した当時の公の株価の5割増しぐらいで出したのかな。みんな明らかに高すぎとは言ったんだけど、それで買うって言った以上は。
山路:何重にも予想外の想定外がちょっと重なったところではあるんだ。
小飼:そういうことです。
山路:それは彼にとってもけっこう想定外だったわけなんですね。
小飼:通っちゃった以上は買わなきゃいけないということで、マスクもわざわざ借金して手に入れたわけですよね。
山路:へー(笑)。
「マスク以上の金持ちが生まれて、すべてのSNSを一元化してほしい」。(コメント)
山路:それはしかし、そのSNSがしでかしたら、一巻の終わりじゃないですか(笑)。
小飼:そうだよね。
「Blueskyは品行方正な優等生の楽園って偏見が」(コメント)
小飼:それはない。
山路:これ、言っちゃ悪いですけど、まだユーザーが少ないってだけなんじゃないですか(笑)。
小飼:そういうことですね。
山路:結局、なんていうんですかね、世界の人口が、80億人がみんな使うようになれば、同じようなカオスが再現されるだけだと。
小飼:というのか、これスケールするのかなっていうのはずっと。
山路:Twitterの話? Xの話?
小飼:Blueskyのほうの。要するにTwitter以外のSNSですよね。前にも言ったように、技術的にスケールアウトするのがすごい難しいですよ、SNSっていうのは。
山路:Blueskyって、たしかActivePubでしたっけ?(※編注:Blueskyが採用しているのは、ActivePubではなく、AT Protocol)そうしたような仕組みを使って、それに対応したSNS間でのメッセージ、投稿のやり取りというか、そういうことが可能になるというようなことを言ってますけれど。
小飼:言ってはいるけれども。
山路:それって、弾さんから見ると、コストの高い、つまりコンピューターリソースの必要とされるやり方になりますかね?
小飼:分散型の場合、同じだけの投稿を処理するのに必要なリソースというのは、一元型よりは絶対に多くなります。
山路:もう本当に、決まったところとやり取りするよりも、それがもっと増えるわけだから、n乗になっていくって感じですか?
小飼:そうです。nの自乗ですよね。2倍なら4倍、3倍なら9倍という具合ですよね。
山路:じゃあ分散型を謳ったSNSとかも、それぞれの規模が小さいうちはまだいいにしても、増えてきたら、今のX的な使い勝手というのは果たしてそれで実現できるのかという。
小飼:結局、Mastodonもそれで大きくならなかった。少なくともTwitterの代わりにはならなかったわけですよね。
ナワリヌイ氏死去とヒューゴー賞不正問題
山路:いやー厄介な話ではありますね。じゃあちょっと国際ニュースのほうに行って、これがやっぱりでかいなと思ったのが、ナワリヌイ氏死亡。
小飼:まぁ死亡なのか、暗殺なのか。
山路:普通に考えて暗殺ですけどねっていう(笑)。暗殺というか。
小飼:まぁこう言うのもなんだけど、よく今まで生きてたというのが、そもそも国外で殺されかかったわけですよね。それで、でも死ななくて、生き延びて、生き延びてはいいんだけれども、また祖国に戻ってきたというのは、それはすごいですよね。本当にもうクオバディスの時のキリストみたいですよね。
山路:それに関連して、まさに『ナワリヌイ』という映画が一昨年かな。
小飼:今、アマプラでやってるんだっけ?
山路:そうですね。無料じゃないんですけど、500円くらい、400円かな、レンタルできて。私もApple TVで配信されたやつを買って見てみたんですけど、キャッチコピーが「どんなスパイ映画よりもスリリング」って、何を大仰なキャッチコピーでつけてんだと思ったら、本当にそうでしたっていう。このナワリヌイ氏側のチームっていうのもすごいんですけど、それ以上に恐ろしいのが、ロシアの愚鈍さなんですよね。本当にアホなんですよ。その本当に愚鈍なチームが、ものすごい数の要人とか、自国の経済資本家だったり、あるいは記者だったりとかを暗殺してきた。その暗殺の事実の一環をナワリヌイ氏がやっているYouTubeチャンネル上で全世界にリアルタイムに公開したっていう(笑)。すごい、そのシーンを見るためだけでも、この映画見てほしいと思うんですけど。
小飼:いや、でも当局が意外とアホ間抜けっていうのは、もうロシアに限った話じゃなくてさ。いや、たとえばさ、日本の公安とか、税金泥棒じゃん。はっきり言って。