難敵ケラモフを薄氷の判定勝利でクリアしたRIZINフェザー級王者斎藤裕インタビュー。物議を醸した判定、ケラモフのダーティファイトぶり、そして朝倉未来vsクレベル・コイケ戦までスカッと語ってくれた!(聞き手/ジャン斉藤)
――すっかりSNSに嵐を巻き起こす男になってますね。いや、斎藤選手が何かやったわけではないんですけど(笑)。
斎藤 そうですね(笑)。 何をやっても騒がれてしまって、お騒がせな感じになってましたね。
――まず今回の試合順が騒ぎになってましたし。「第3試合だなんてチャンピオンに失礼!」とか。
斎藤 ハハハハハハハ。ボクを応援しているファンの方々は怒ってましたね。
――アゼルバイジャンズ(ムサエフ&ケラモフ)のセコンドの人数の関係で、2人の試合の間隔を空ける理由もあってケラモフの試合が3試合目になったそうですけど。RIZINから第3試合だと伝えられたときはどう思われたんですか?
斎藤 地上波が絡んでいたり大人の事情を察しましたね。
――変な感情はなかったんですか?
斎藤 うーん、決まったものに何か言ってもしょうがないし、目の前に試合に集中したいなと思ってました。
――選手って試合順は気にするんですか?
斎藤 ボクはあんまり気にしないですね。第1試合だったら「えっ!?」ってなるかもしれないですけど。
――第1試合はあまり。
斎藤 どうしても会場入りしてから試合までの準備時間が短くなってしまうので。東京ドームは初めての会場でしたし、地上波があるということでバックステージに関係者も多かったんですよね。「いつもと違うなぁ」と思いながら過ごしていたので。できれば準備する時間があったほうが気持ち的にも楽かなと思っていたんですけど。
――場の空気に馴染みたいということですかね。
斎藤 そうですね。テレビが入ってのドームというのはボクは初めてだったので、いい経験になりましたけど。
――今回の試合は体調を含めて万全の状態で臨めたんですか。
斎藤 なかなか試合が発表されずに……。そこも嵐を呼んでいたわけですけど(笑)。
――ケラモフ戦はとっくに内定していたけど、緊急事態宣言下の入国問題の事情で公にはできなかった。なかなかカードが発表されないことで「クレベルから逃げた」とか批判されてしまったという(笑)。
斎藤 そうですね(笑)。淡々と試合に向けて準備はできていたとは思うのでコンディション的には問題はなく……あ、ノンタイトル戦問題もありましたけど。
――ハハハハハハハ。
斎藤 話題に事欠かない感じになっちゃいましたね(笑)。
――あらためて質問するのも馬鹿馬鹿しいんですけど、斎藤選手がノンタイトル戦を希望したんじゃないわけですよね(笑)。
斎藤 そうですね。 防衛戦にするならするで全然いいんですけど。何か……生きづらい時代になりましたねぇ。
――ガハハハハハハハ。 いまってわからないことや、疑問があると、SNSを通して怒りに変換しやいですからね。「斎藤はベルトを失いたくないからノンタイトル戦にしたの?」とか。
斎藤 格闘技のファン層が広くなったのかなと前向きに捉えてますけど。
――今回の判定結果も嵐を呼ぶことになって。イエローカードが判定に影響を与えて斎藤選手が2-1で勝ったわけですが。公式動画のコメント欄の書き込みの指摘によれば、なんとケラモフは17回も反則していたという。
https://www.youtube.com/watch?v=AEZosftj1GE
斎藤 映像で見えないところでもグローブを掴んできたりしてて。あれ、クラッチされると離れられないんですよね。
――17回どころじゃないと。たしかにサミングもあったみたいですし……ここまで反則が酷い試合はなかなかないということで、海外メディアからも斎藤選手に取材の問い合わせが入ったとか。
斎藤 まあ、あんまり言うとあれなんですけど……ダーティというか確信犯だったとは思うので。そこは海外選手の図太いところというか、日本人とは違うところをまざまざと感じましたね。そこはサブレフェリーだった和田(良覚)さんがずっと「掴んでいるぞ」としっかり見ていてくれましたね。そこは感謝したいです。
斎藤 たしかにグローブやショーツ掴みは普通に起きたりするんですけど、「それを5分3ラウンドやり続けるのか!?」っていう話なので。
――あー、なるほど、たしかに。
斎藤 何かの瞬間に結果的に反則行為になってしまったのなら仕方ない……とは言わないですけど。 今回の場合は最初から最後まで確信犯でやり続けてましたからね。
――中でも1ラウンド後半に斎藤選手がテイクダウンをしようとしたときにケラモフが一瞬ロープを掴んだシーンがあったんですけど。あの場面はけっこう大きいんじゃないかなと。
斎藤 四つで倒そうとしたときですよね? あそこでロープが掴まれてなかったら展開はだいぶ違ったと思うんですけど。あそこは相手に有利に働いたところですよね。
――今回からそのへんの反則チェックを厳しくなったという印象はありましたか?
斎藤 そうですね。ロープに引っかかったりすると、すぐにレフェリーの方々が対応したりしていたので、より明確になったというか。反則を“やり得”させないようになってるのかなと感じたんですけど。これからもずっとそうだとありがたいです。
――格闘技には見えない反則はあるとはいえ、ロープ掴みって視覚的にも認識もされやすいし、テイクダウンを防がれた事の重大さは伝わってますよね。でも、ショーツ掴みは理解が難しい。
斎藤 言うならば髪の毛を掴まれるのと一緒ですからね。髪を掴まれたら離れないですよね。
――ああ、それはキツイです。
斎藤 ケンカが強い人は髪掴みが上手って聞きますからね(笑)。 技術といえば技術なんですけど、やってはいけないものなので、 1回注意されたらやめてほしかったですね。
――斎藤選手の金的を掴まれそうになったという指摘もありますけど。要はファールカップをズラそうとしていたのか。
斎藤 それはどうなんだろう(笑)。必死だったのでそういう意識はないですけど。それが本当だったらヤバイですね(苦笑)。よく気持ちを切らせずに頑張れたらと思います。
斎藤 終わったらノーサイド、 自分の中ではそういう考えがあるので。しかもこの大変な中、来日してくれたし、隔離生活も厳しかったと思うんですよ。それでも体重を落として身体を作って戦ってくれたという意味での感謝はあります。
――ケラモフはバックステージではかなり荒れてたみたいですね。 あそこまで反則やっておいて、なんで怒ってるんだって話なんですけど(笑)。
斎藤 ボクはバックステージでムサエフに捕まっちゃいましたよ。
――えっ!?
斎藤 何を言ってるのかわからないんですけど、通訳の方があいだに入ってくれて「君は今回の試合についてどう思う?」って聞かれて。まあ、いろんな波紋を投げかけてしまいましたね(笑)。
――いろんな意味で死闘ですねぇ。反則されたときにもっと怒ってもいいんじゃないかなって。
――そこがラインですか(笑)。
斎藤 それでも試合中に「パンツを掴んでる」とアピールしてたんですけどね。
――注目される試合だからこそこうやって反則がクローズアップされたとこはありますよね。
斎藤 そうですね。これを機にレフェリングのほうも明確になっていくのかなという気がしますね。
――ケラモフってライト級のムサエフより身体が大きいんじゃないかって見えたんですよ。
斎藤 リングで向き合ったときは計量とはだいぶ違いましたね。10キロぐらい戻ってんじゃないかな。凄い身体してたもんな。
――斎藤選手も見劣りしませんでしたよね?
斎藤 あ、そうですか。並んだときに「同じ体格に見えた」っていろんな人に言われるんですけど。ボクは10キロは戻らないんですけど。6キロも戻ってないと思いますね。
斎藤 そうですね。昔だったらテイクダウンされて押さえ込まれて時間がなくなっちゃう……というのが負けパターンなんですけど。そこから脱出はできていたので。その後スタンドで決定的な場面を作れたらよかったんですけど 。相手は1ラウンドから3ラウンドまでテイクダウンからトップキープという作戦だったので、ボクももうちょっと何かできたんじゃないかなって、いまだに思いますね。
――テイクダウンされたのは大きな反省材料ですけども、封じ込められるわけでもなく戻せたのは大きいですね。
斎藤 そこは相手がポジションを取る気配はなかったので。バックを奪われたりとかになったら判定でも分が悪いとは思ってたんですけど、 しがみつくだけだったら、なんとか立ち上がることはできましたね。石渡(伸太郎)さんから負けるんだったらここじゃないかってことで、あそこから逃げる練習は重点的にしてましたね。そこはしっかり理解したうえで試合には臨んだんですけど。
――パウンドもほとんど打たせなかったですね。
斎藤 最初は鉄槌を打ってきたんです。ボクは1回もらった攻撃は次はもらわない自信があるんですけど。頭の位置を変えれば大丈夫だなって。左目がちょっとケガをしてるんですけど、これは最初の鉄槌ですね。あのあともパウンドを打ってきたら逃げられる自信はあったので、それで相手も固める作戦になったのかなと思いますね。
斎藤 解説の川尻(達也)さんも同じような事を言ってましたね。ボクが2年前に負けた修斗でも川尻さんは解説してたんですよね。
――ああ、そんな感慨深いドラマがあった。
斎藤 あの敗戦を経て、どこを補えばいいのかというのをずっとやってきたので。ここを改善すれば、もっと強くなるんじゃないかと。
――2年間の成果がケラモフ戦で出たわけですね。
斎藤 そうですね。金網とリングは違いますけど、あのくらいのフィジカルの強さの選手から逃げられたことは大きいですね。 ケラモフって後半は強くない選手だと思っていたので、その攻防を続けていくうちに体力を削れていくだろうし、後半はこっちは頑張ることができるので、チャンスが来たら勝負をかけようと思ってましたね。
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