多くのMMAファイターをマネジメントするュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるコーナー。今回も16000字で語ります(この記事はニコ生配信されたものを編集したものです)





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映画『ゴジラ-1.0』がアメリカで大ヒットしてるそうですね。

シュウ すごいヒットしてますよ。ボクも息子と一緒に日曜日の午前9時の回を見に行きましたけども、客席は8割くらい埋まってまして、お客さんのほとんどがアメリカ人。上映終了後後に拍手が起きましたからね。アメリカの映画館で日本の作品があんなに拍手されることはなかなかないです。ウチのせがれは6歳なんですけども「このまま座ってもう1回見よう」って言いだして(笑)。さすがに見ませんでしたけどね。

――おかわりしたくなるほど面白かったと(笑)。『ゴジラ-1.0』はたしかにいい映画でしたけど、そこまでアメリカでウケるんですね。

シュウ 戦争に対する罪の意識や、戦後復興しようとする描写は、日本人の目からしたら、ちょっと薄い印象があって「もっと踏み込めるんじゃないか?」って見えたんですけど。表面だけをうまい具合になぞってるところが、こちらの人にはわかりやすくて、それがウケたんだと思うんですよ。感想を読むかぎり、ゴジラという怪獣じゃなくて、それが津波やハリケーンでもこの映画は成り立ったった、登場人物に感情移入できた、感動して実際に泣いた……。そんな大人のアメリカ人がけっこういますからね。

――ゴジラは災害なんかのメタファー的なところがありまよね。

シュウ 『ゴジラ-1.0』に続いて、大谷翔平のドジャースとの1000億円級の契約が発表されて、平良達郎選手もUFC5連勝を達成して、水垣(偉弥)さんの日本人連勝記録に並びましたから、日本にとっていいニュースは続きますね。

――あと女子ボクシングの吉田実代選手がサンフランシスコで世界戦に勝利して2階級制覇達成と。

シュウ その試合はまだ見てないんだけど、よかったですね。

――吉田実代選手はジュエルスに出たり、シュートボクシングで神村エリカさんや魅津希選手と戦ったりして、ボクシング転向後はアメリカに渡って活動を続け、チャンピオンになるってすごいドラマですよね。

シュウ そこですよ。アメリカでの生活をドキュメントしてほしいですよ。どれだけすごいことをやっているか。最近は日本人のスポーツ選手や日本の映画が話題になって本当に嬉しいですよね。この言い方が語弊があるかもしれないけど、日本人はここ数年、いろんなところに押されて、アジア人の中でも肩身の狭い思いをしてきましたからね。

――一方で北米界隈は不穏な空気は流れているというか。ベラトールがPFLに買収され、そして世界制覇をはたしたUFCも独禁法訴訟の件で決して安泰ではないと。

シュウ この先は何が起こるかわからないのが正直なところです。いまUFCが抱えている独占禁止法の訴訟、ジャンさんもツイッターでよく書いてるように、あの当時UFCに在籍していた水垣さんや日本人格闘家がけっこうな賠償金をもらえそうなんですよね。

――取らぬ狸の皮算用じゃないですけど、原告側が請求している金額を選手数で割ってもすごい数字になります(笑)。


シュウ たしかに賠償金もすごく大きいんですけど、原告側の主張がもしもすべて通ったら、どんなことが起きるのか。これはもう業界自体が大きく変わると思うんですよ。まず原告側が要求しているポイントのひとつに、ランキングとベルトを団体が管理してはいけないということがあるんです。

――うわー! それが通ったら完全に変わりますねぇ。

シュウ つまり、ヘビー級チャンピオンのジョン・ジョーンズが「PFLのガヌーとやりたい」とダナ・ホワイトと交渉して決裂したとしましょう。ジョン・ジョーンズはUFCを離脱してもUFCのベルトを持ったままサウジアラビアのプロモーターと交渉して、UFC王者のままガヌーと試合できることになるんですよ。ま、けど、その時点ではまず「UFCチャンピオン」という名称ではなくなり、ボクシングのように第三者機関が管理するんで「〇〇〇チャンピオン」と言うことになるんですけど。

――そうなると、いまのUFCの世界観が維持できなくなりますね……。

シュウ あっという間に崩れます。もうひとつ原告側が主張していることはチャンピオンだろうがスターだろうが契約で1年以上拘束するなってことなんです。でも、よく考えてください。UFCのチャンピオンになったらファイトマネー的に1年1試合でも全然いいじゃないですか。団体側との交渉で気に食わないことがあったら、1年間休めば他の団体で試合ができちゃうわけですよね。

――いわゆるボクシング化が進むってことですよね。最終的にはいまのようにファイターを抱えるわけではなくなると。

シュウ いずれはボクシングのWBC、WBA、IBFのような組織になるってことですよね。昔からUFCが非難されてきたことは、なぜスポーツなのにWWEのようなプロレス団体のビジネスモデルで運営されているのか?っていうことなんですよ。プロレスはどちらかというと所属のタレントたちで興行するものじゃないですか。プロレスは独自でスターを育てていきますよね。道場もあって、給料を払って、試合をさせる。格闘技とは全然違うんです。ですから欧米では、格闘技のプロモーターは「ウチの選手」という表現はしないんです。選手を育てるのは団体ではなくて指導者やチームメイト、そして家族という認識なので。

――団体が「育てるマッチメイク」なんてないですからね。あくまで選手サイドの要望がベーシックで。

シュウ けどプロレス団体なら話は別ということなんですよね。余談になりますけど、今年はハリウッドの各組合がストライキを起こしましたけど、そのときに一部の人から「なんでプロレスラーは俳優の組合に含まれないの?」という声が挙がりましたから。プロレスと格闘技を同じ文章で語ることはそんなにないんです。WWEとUFCが同じTKOホールディングスでも、それはファンからしたらあんまり関係ないんですよね。

――プロレスは一座的なのあり方ですよね。団体側の選手拘束権が弱まると、UFCのように半永久的に続く「見えないトーメント」の成立が難しくなりますね。

シュウ 現実的に何が起こるかといえば、PFLに限らず、カラテ・コンバットやベアナックル、つまりBKFCですね。それこそ榊原さんにも言えることですが、世界中のすべてのプロモーターが同じスタートラインに立てちゃうかもしれないんですよ。PPVが売れるなら平本蓮vsコナー・マクレガーができるし、世界を市場に売ろうと考えたら、体重がかなり違いますが、たとえばジェイク・ポールvs朝倉未来、ショーン・ストリックランドvsイリー・プロハースカも実現可能になるわけなんです。

――朝倉未来がブレイキングダウンのプロモーターとして、自分とコリアンゾンビの試合を組んでもおかしくないと。


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