――笹原さん! 今年初の関東圏の大会となったRIZIN46有明アリーナはめちゃくちゃ面白かったです。
笹原 いやぁ、RIZINを舐めてもらっちゃ困りますよ。
――ワハハハハ、自信満々ですね。
笹原 いまやRIZINは「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」の聖帝サウザー状態ですよ。誰がきても道なんか譲りませんよ!
――笹原さん、10代・20代の若者には通じない南斗聖拳ハラスメントはやめてください! それに5月6日有明アリーナで発表したけど、井上尚弥vsネリの噂を嗅ぎつけて回避してたのに!
笹原 いやあまぁ気分はサウザーなんですけど、さすがにモンスターには分が悪いかなと(笑)。有明アリーナはたまたま4月29日も空いてたんで、避けたんです。ボクシングとMMAと客層は違うとはいえ、もう同日なら話題性では完全に「ヒデブッ!」みたいな感じになっていたと思います(笑)。
――こんなにいい大会だったのに、格闘技ファンがALL TOGETHERできなかったかもしれないですよね(笑)。
笹原 もし同日回避できなかったら、社長のことだから井上尚弥vsネリに対抗するために「おい、笹原! 向こうがネリならこっちはダリだ!もうこうなったらロクク・ダリvsパッキャオを有明で組むぞ!」とか言い出しかねなかったので4月29日にスライドできて本当によかったです(笑)。
――そんなの(モハメッド・)アリ!?……という猪木さんばりのダジャレはともかくですね、大会終了後の榊原さんの総括会見では、ある記者が朝倉未来選手の「チケットが売れていない」というポストを背景抜きにぶつけたことで変な騒ぎになってましたけど。
笹原 未来選手のポストって、金原正徳選手の朝倉未来vs平本蓮の感想に対してのアンサーですよね。
――金原選手の「あの試合が盛り上がって本当に強い人たちの試合がそんなに盛り上がらないなら、日本のMMAは世界からどんどん遅れを取る」という発言に対して「会場のチケット売り切れないなんて日本のMMAは盛り上がってないなあ」とポストしたら、記者が榊原さんに「こんなこと言ってますが!」とご注進が入って(笑)。
笹原 なんですか、その地獄の伝言ゲームは(笑)。質問時間の制約があったりするのはわかるんですけど、そのうえで「朝倉未来はなぜそんなポストをしたのか」ということまで含めて伝えてほしいところですよね。だって調べればすぐわかることですし。
――「MMAの万人規模興行は世界を見渡しても稀である」という注釈つきで質問するべきだったんじゃないかなと。完売するに越したことないけど、「完売していない=不入り!」みたいに騒がれがちな風潮もどうかなって思いますし。
笹原 そこだけで切り取られて質問されると「売れてない」と思われちゃいますけど、実際はそうではないわけです。そもそも我々は1年間というスパンの中で興行をやってますが、変な話「今回は負けてもいいけど、これが布石となってべつのところで取り返せればいい」という考えもあるんですよね。こういうと「有明アリーナは負けたのか!」と切り取られそうですけど、有明は負けてないです(笑)。
――つまり将来の投資も兼ねた大会やマッチメイク、選手起用もあるってことですよね。
笹原 有明アリーナにあれだけ人が入って、あれだけ熱があるのはやっぱりすごいことだと思いますよ。
――かつてのRIZINはオールスターシステムで大規模興行をやってましたけど、いまは分散型でもやりくりできている。それってRIZINのブランド力が高まってるということですし、MMAファンが増えている証なんだなと。
笹原 ですね。間違いなく底上げはされていますよね。だからこそ、ネガティブな意見も含めていろいろな声が飛び交うこと自体は非常に健全だと思います。
――メインの鈴木千裕vs金原正徳の試合はいろいろな雑音を吹き飛ばしたわけですから、やっぱりリング上の説得力はすごいですよね。ゲスト解説の朝倉未来選手もやや唖然地味でしたもんね。
笹原 未来選手とは試合前にちょっとミーティングしたんですよ。そのときにメインの話をしたら「金原さんが絶対勝ちますよ」と言ってたんですよね。練習で肌を合わせて金原さんの強さを知っているから、そういう予想になるんでしょうけど。
――金原選手とロータス世田谷で練習している矢地祐介も試合開始直前のタイミングで「あえて言う❗️始まってみたら意外と力の差があってしっっっかり金原さんが勝つと思う🤔‼️」とポストして。その15分後に「悔しい、、、」と。
笹原 未来選手同様に金原選手と一緒に練習してその強さを知っているからこそですね。
――ヤッチくんはその後にアップしたYouTube感想動画も悔しさ一杯のコメントをしたことで炎上してましたけど、ホントに悔しかったんでしょうけど、最近は「SNSのお祭り男」ですよ(笑)。
笹原 矢地選手は金原選手の身体が万全じゃなかったことを匂わせていたそうですけど、たしかに金原選手の身体の状態はよくなかったんです。でも、金原選手にとっては戦極以来、15年ぶりのタイトルマッチ。「この試合が最後になってもいい」という覚悟で戦ったんだと思います。
――事前予想で今成(正和)さんが鈴木千裕について「こんなに奇跡は続くわけない」というコメントをしてたんですが、よく考えたら金原選手も40代であれだけの強さ、コンディションを維持してるのも奇跡的なんですよね。
笹原 たしかに、そうですよね。戦極チャンピオンがRIZINでチャンピオンシップに臨んでいるなんて奇跡以外の何物でもない(笑)。
――格闘技って本当に奇跡の引っ張り合いで、長年に渡って努力を積み重ねてきた金原選手の奇跡を信じたい人たちもいたんだろうな、と。
笹原 金原選手は前回のタイトルマッチからの15年間、ずっと不遇だったわけじゃないですけど、報われなかった時間は長いじゃないですか。だから会場の雰囲気はどちらかというと、チャンピオンの千裕選手が何かヒールっぽい感じでしたもんね。15年ぶりに大きな光を浴びるような舞台に立つとなったら、ベルトがどうこうとかじゃなくて、この15年間応援してくれた人に報いたいとなるのは自然ですよね。
――だから金原選手はたくさんの関係者が見てくれる首都圏の大会でやりたという意向もあったんでしょうね。
笹原 でも、そういう悲壮感や思いを平気で裏切るのが格闘技なんですよね。
――圧倒的現実、ですねぇ。
笹原 なのでボクは試合前の金原さんの状況や様子を聞くにつけて、「でもこういうときって..…」って思ってたんですよね。
――引退する覚悟や15年間の思いみたいなものが、いとも簡単に裏切られると。
笹原 まぁ我々はそういうのを散々見てきましたからね。ただそれにしても勝った千裕選手の戦い方は見事でした。本当にクレバーだったと思います。いつもより構えを低くしてタックルに対応できるようにして、一度テイクダウンを防いだあとは、一緒に見ていた柏木さんいわく「もう鈴木千裕は釣りをしてますよね」と。あとは金原選手の出方を待つだけ。先に手を出させて仕留めると。あのベテランの金原選手ですら、鈴木千裕の術中にハマってしまう。
――「ドーンといってバーンと倒すだけですよ!!」と言いながら。
笹原 金原選手が打ち合ったときにボクは運営本部で叫んでましたね。「打ち合うな!!」って(笑)。そこで打ち合ったら、確実にやられるじゃないですか。金原選手もそこはわかってるんですけど、打ち合いをさせちゃう鈴木千裕のゲームの達人ぶりですよ。
――「ドーンといってバーンと倒すだけですよ!!」と言いながら(2回目)。
笹原 じつはすごく緻密に考えてますよね。みんな騙されてますけど。
――バカのふりをしてるんですよね。でも、国歌吹奏のときの鈴木千裕のウォーミングアップぶりをみると騙されますよね(笑)。
笹原 ハハハハハハハ! まさしく“稲妻メンタル”ですよ。
――試合後のマイクもすごい元気よく喋ってるけど、ほとんどが宣伝だったからあんな勝ち方したあとなのにじつに冷静なんですよね。
笹原 千裕選手の対戦候補はたくさんいるから今後も楽しみですよ。ピットブル、クレベル・コイケとの再戦、朝倉未来vs平本蓮の勝者……誰とやっても面白いじゃないですか。千裕選手のビッグファイトを組みたいですよね。
・金原正徳には最後までとことん付き合う
・“冬の時代”を生き抜いた選手にしかわからないこと
・スーチョルvs井上直樹の流れ?
・最高だった扇久保博正vs神龍誠の師弟劇場
・期待感を表現するのがプロ
・ベアナックルというより篠塚辰樹が面白い
・RIZINと日銀、オイルマネー……11000字インタビューはまだまだ続く
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