我らがアントニオ猪木が日本維新の会より夏の参院選比例選に出馬することが発表されました。猪木さんといえば、90年代にスポーツ平和党の党首として「国会に卍固め」「消費税に延髄蹴り」をキャッチコピーに掲げて政界入り。その後、金銭スキャンダルに巻き込まれ「手書き1000円札で借りた金を返す事件」「アントニオ猪木・夜のPKO」などで世間から冷笑を浴び、その後のプロレス界においてもズンドコ騒動連発。そのため今回の発表には、日本維新の会に投票はしないが活動だけは見守ろうという好事家たちから熱視線が送られております。猪木さんのズンドコ研究家の私も当選をとくだん願っておりませんが、それなりに応援させていただきます。猪木ボンバイエ、猪木頑張れ。いったいどんなズンドコをやってくれるのかいまから楽しみです。が……。

今回のアントン劇場はどうも薄味っぽいです。猪木さんが石原慎太郎と出席した記者会見や、渋谷ハチ公前で街頭演説をする姿を見るかぎり、かつてのギラギラしたアントニオ猪木ではありませんでした。歳をとった、といえばそれまでですが、ハチ公前の街頭演説と言えば、女子高生に向かって「小川、死ねーーーー!!」「小川ね、あいつは銭ゲバなんですよ!」と怒鳴り散らす猪木さんであり「暴走族は撃ち殺せーーーーッ!!」の佐山皇帝なのに。

今回の猪木さんは「頼まれた」というか「周囲が担いだ」感だけが伝わってきます。そもそも猪木さんはK-1やPRIDEなどの格闘技イベントのスポークスマンとしても担がれてきたパンダ的位置にはいるのですが、あのときは複数のテレビ局や反社会勢力が絡んだりしてビッグマネーが動く世界。担がれた猪木さんの野望もひしひしと伝わってきました。

プロレス格闘技ファン以外には伝わらないかもしれませんが、今回の担がれ方は2010年の大晦日っぽいんです。未払い地獄に陥っていたK-1がとりあえず話題性のある猪木さんに話を持っていった。猪木さんも頼まれたからやるけど、自分の札は絶対に張らない。それはバブル絶頂期のK-1やPRIDEのときとは違って担がれることで大きなものは生まれないことを肌で知っているからでしょう。老いても金と名誉に執着すると言いますけど、猪木さんが「参院選出馬」程度で前のめりになるとは到底思えません。