日本人UFCファイターランキング最高位・水垣偉弥などをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が、世界のMMAシーンをわかりやすく解説! 先日、シュウ氏がゲスト登場した『Dropkickニコ生』配信の模様を再構成してお届けいたします! 「UFC日本大会で幻に終わった水垣vsドミニク・クルーズ」や「日本人女子UFC契約第2号の行方」、そしてUFCに導入される「ユニホーム制度」とは何か――?
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――アメリカのシュウさん、聞こえますか~?
ヒラタ もしもし、大丈夫です。
――シュウさんの話はいつもマニアックで面白いという大反響ですので、今日もよろしくお願いします。
ヒラタ ありがとうございます。しゃべれる範囲で(笑)。
――はい(笑)。本日7月18日現時点で佐々木憂流迦選手がUFCと契約するというニュースが流れています。憂流迦選手はシュウさんがマネジメントしていると聞いていますが、どんな進捗状況なんでしょうか。
ヒラタ じつはついさっきサインした契約書をズッファに送りました。
――あ、そうなんですか!
ヒラタ 1時間半ぐらい前に確定しましたね。8月23日のUFCマカオ大会でデビューします。
――しかし、来月とは急な話ですね。
ヒラタ そうなんですよ。5週間前と緊急オファーになるんですけれども。要は佐々木選手とはずいぶん前からUFCとの契約に向けてやりとりをしていて、UFCのマッチメーカーであるショーン・シェルビーとも話をしてたんですけれども。佐々木選手は修斗の世界タイトルを取ってケジメをつけてから海外を狙おうという感じだったんです。それが最近になって彼のほうでも心変わりがあったらしくて。UFCに行けるんだったら行きたいという話になったので、そこから交渉を再開したんです。
――UFCとしてはウエルカムだったんですか?
ヒラタ はい。話を受けてショーン・シェルビーも試合枠を探し始めたんですよ。ただですね、いまはどの階級も選手枠がいっぱいなので、新規契約したくないがUFCの考えなんですけれども。ケガで誰かが欠場したりして試合枠が突然空くことがあるわけなんですよ。なので、5~6週間前のオファーでも受けられるように体重調整を常にしておかないと、いまのUFCと契約するのは難しいんです。憂流迦選手の場合は、たとえば今回の8月を急すぎるということで断ってもいいんですけれども、次にいつ試合ができるか保障がなかったんですよ。本来ならば9月や10月のほうが理想なんですけれども、11月とか12月にズレ込むようだと憂流迦選手の試合感覚が空いちゃうじゃないですか。
――どこかでもう1試合くらいやっておきたい感じですね。
ヒラタ 憂流迦選手はいま頻繁に試合をしているので、そのモードのままUFCに行ったほうがいいんじゃないかなってことで。
――憂流迦選手には日本版TUF出場の話もあったんじゃないですか?
ヒラタ 当然あったでしょうね。けど日本版TUFはまだ詳細も明らかにされていないので。現時点で言えるのはバンタムとフェザーの2階級のリーグ戦。リーグ戦はAとBに分けて4人総当りさせて、AとBの勝者が優勝決定戦を行なう。そのフォーマットは変わるかもしれませんが、一番みなさんが興味があるのは選手の選択だと思うんですよね。
――そうですよね。
ヒラタ 基本的にはパンクラスやDEEPの団体さんの協力も得ると。たとえばパンクラスだったらチャンピオンの石渡伸太郎選手、DEEPは大塚隆史選手が絡んできて、残りはオープントライアウトでピックアップできると面白いんじゃないかなと思うんですよね。
――今回の日本版TUF計画にはどんな思惑を感じますか?
ヒラタ 正直なところ、代理店の電通さんがしっかり力を入れているなと感じます。今回で3回目ですし、何かムーブメントを起こさなくてはいけない表われが日本版TUFだと思うわけですよ。基本的には電通さんにがんばっていただかないと、日本ではUFCをやれなくなってしまう現状はあると思うんですよね。TUFはテレビ局がつかないと成り立たないプログラムなんですよね。ですから、協賛会社が「はい、これ制作費と番組枠買い分ね」みたいな感じでポーンとお金を出してくれることがなければ、現在の日本で、北米や南米と同じTUFをやるのは不可能だと思うんです。だいたいTUFなんて日本の視聴者たちのあいだでは無名、つまりブランドバリューはないわけなんで。それに、TUFにしてもアメリカやブラジルでやっているようにファイターをひとつの家に住まわして、携帯などをすべて没収して外部との接触を2ヶ月断ち切らすとかって日本では難しいと思うんですよね。
――ちょっと厳しいですね。
ヒラタ ですから今回は電通さんが頑張って日本版TUFという企画を進めたんだと思うんです。けどUFCが要求するやり方に対応し、UFCという会社のカルチャーに従いながらも、日本という市場も把握しなが動かないといけないんで、それは一介のファイトプロモーターよりも、代理店やメディア・カンパニーの仕事だと思うんです。ここで一つ面白い話があるのはTUF優勝者の契約って、普通の新規よりも長期契約のうえにギャラアップ率が悪いんですよ。
――あ、そうなんですか(笑)。
ヒラタ じつはそうなんです。TUFは超人気番組なんで、そこで選手のことを有名にしているわけだからという理由もあるので。その一番いい例がこのあいだバンタム級でチャンピオンになったTJディラショーですよ。彼はTUF出身ですけど、同じ階級の水垣(偉弥)選手のほうが2万ドル以上も稼いでいますからね。
――怖いですね、契約社会。
ヒラタ ただTJの場合はチャンピオンになった翌日にUFCのオフィスに呼ばれて契約をし直したしたらしいですから。それは当然だと思いますけど(笑)。
――その水垣選手も大一番が決まりましたね。元王者のドミニク・クルーズ戦。これをクリアすればチャンピオンシップですか?
ヒラタ 水垣選手の上にランキングしているのはユライア・フェイバーとラファエル・アスンサオくらいしかいません。ですから本来なら対アスンサオでも良かったとは思うんですが。ユライアはこないだタイトルにチャレンジしたばかりですし、ドミニクは負傷のためタイトル返上を余儀なくされた大スター選手ですから。ランキング的にはトップ10から外れてますけど、水垣選手が今回ドミニクに勝てばタイトル挑戦できる可能性は非常に高いと思うんです。あとは水垣選手の世界市場での人気、そしてファンだけでなく一般社会での認知度をもっともっと上げるのはどっちの試合か? となると、やっぱりクルーズだと思うんですよね。ファイトスタイル的にはアスンサオの方がやりやすかったかもしれないですが、最終的に決めたのは水垣選手自身なんです。
――この試合は日本大会で行われる噂もありましたけれども。
ヒラタ 水垣選手本人は「どこでもいい」って言ってたんですよ。ボクはぶっちゃけ「ハントvsネルソン下ろしてこっちをメインに」とお願いしてたんですけれども。だって元世界チャンピオンのクルーズとやるわけですし。
――しかも挑戦者決定戦の意味合いもありますし。
ヒラタ だけどクルーズっていうのはアメリカではスターですし、勝った選手がタイトルマッチに進む可能性は非常に高いわけじゃないですか。タイトルマッチのPRを含めて考えると、PPV大会のメインカードでやったほうがいいんですよね。
――今回の日本大会はファイトパス中継で全米の放送はなしですね。
ヒラタ それでもボクとしてはやってもいい思ってUFCに働きかけたので。やろうと思ったのは真実ですよ。前例を作ってやろうと思ったんですよ。ネット中継の大会だろうがタイトルマッチをやったっていいじゃないかと。
――ファイトパス大会の価値を高めますしね。
ヒラタ こういうことをいうとUFCが怒るかもしれないけれど、スポンサー営業をしている我々からしたら、ファイトパスの大会って最悪なんですよ(苦笑)。