Omasuki Fightの北米MMA抄訳コラム。今回は両者失格報道も飛び出している「アンデウソン・シウバvsニック・ディアス」について!
13か月ぶりに復活したアンデウソン・シウバはUFC183の大会後記者会見で次のように語った。
「復帰して勝利を飾ることができてとてもうれしい。なにぶん、これは私の使命だからだ。コーチからも、今日の試合はキミの使命だと言われていた。勝たねばならない。勝ち星が必要だった。ブラジル国民が待っているからだ」
「息子が泣いて言うんだ。パパ、もうやめて。お願いだから、格闘技はやめて、家に帰ってきて。だから今後のことに関しては、まず家族と話したい。格闘技は大好きな仕事だ。私そのものといってもいい。でも家族に相談する必要がある。いまの私にとって、家族の方が大切だからだ」
今回はこれら2つのアンデウソン発言の背景に迫ってみたい。
(1)アンデウソンにとって「勝利が使命である」とはいったいどういう意味なのであろうか。
実はブラジルでは、アンデウソン・シウバの復帰戦は、アメリカのスーパーボウルに遜色ないほどの国民的関心事となっていた。この時期のアメリカの広告業界がスーパーボウルを中心にして回っているのと同じで、ブラジルの広告業界はここしばらく、アンデウソン・シウバの栄光からの転落、そこからの輝かしい復活物語にくぎ付けになっている。自動車保険からパーソナルケア商品、英会話学校に至るまで、アンデウソン・シウバは数多くのテレビCMに出演した。アメリカのビール会社バドワイザーは先月、ブラジルでブランドイメージの全面変更を行い、いまでは広告はアンデウソン・シウバ一色だ。テレビではほとんどのチャンネルでアンデウソンの復活ストーリーを特番で放送、なかでも「Spider Life Show」という番組にはシウバ自身も出演した。
ブラジル地上波Globoでなんと午前4時にニアライブ中継された「アンデウソン・シウバ vs ニック・ディアズ」は、首都ブラジリアで20%、サンパウロで18%、リオデジャネイロで16%の視聴率を獲得、平均視聴者数は400万人、瞬間最高は1,250万人、占拠率は実に60%だったという。単なる一格闘家の立場を越えた、ブラジルのスポーツセレブとして、アンデウソンが当座の役割を果たすことができたと、一安心できたのは本音だったといえるだろう。