2008年、アメリカの女子柔道五輪チームに選出され、北京五輪でのメダル獲得が期待されていたロンダ・ラウジーが突然、インターネットの掲示板でアメリカ柔道連盟に対する告発状を掲載した。
役員のフレッチャー・ソーントンが複数の十代の女子選手に飲酒をさせた上で、セクハラ行為をはたらいていたことについて、連盟が何ら手を打たないのはいかがなものかと批判したのである。「審判の一人は警察に提出された被害届に目を通そうとすらしなかった。彼らは選手の安全やキャリアをもてあそんでいる。このような男がいまだに連盟の要職にあって、選手と同じ会場に姿を見せていることが許されて良いのだろうか」とラウジーは書いている。ラウジーの書き込みがニューヨークタイムスなど全国紙に取り上げられると、ソーントンは罪を認めることのないまま、五輪直前になって自ら役職を辞した。ラウジーは当時、ソーントンの不正をなんとしても周知したかった、すでに五輪チームに選出されたいま、私なら発言をしても懲戒を受けないだろうと思った、などと述べている。
米国では、プロを目指して、あるいはフィットネス目的で、格闘技道場の門を叩く女性が増加している。同時に、格闘技の指導者によるセクハラ行為に対する社会的まなざしが厳しくなりつつある。