ドワンゴの川上さんが、宮崎駿に「人工知能が作画した映像」というのを持ってきたんだよね。
「人工知能には“痛覚”が無いし、“頭は大事”という考え方も無いので、ゾンビとかを描かせたら、頭を使ってしゃくるように歩きます」という映像を紹介した。
それを見て宮崎さんが「生命に対する侮辱だ!」と怒ったんだ。
「これを作る人たちは、“痛み”に対して何も考えないでやっているでしょう!」
「きわめて不愉快ですよね!」
「きわめて生命に対する侮辱を感じます!」
宮崎さんは、そう言ったんですよ。
でも僕は、それを見て大笑いしちゃったんだ(笑)。
川上さんは「倫理観や一般常識がないAIにアニメを作らせたらどうなるのか?」という実験を持って来ただけなんだよ。
それに対して宮崎さんは、上から目線で一刀両断しちゃったわけだよね。
でも宮崎駿の『風立ちぬ』って作品は、「ゼロ戦を作った人間の美しい人生」を描いた作品だよね。
ゼロ戦って中国の重慶爆撃に使われて、2万人から5万人の死者を出した戦闘機なわけだよ。
スペインのゲルニカに対するドイツの爆撃機。
中国の重慶に対する日本の爆撃機。
日本の広島に対するアメリカの爆撃機。
この三つは、戦争犯罪と言われるぐらい無差別に人を殺したんですよね。
宮崎さんは「美しいものを作りたかった」って理屈で丸め込んでいるけど、それこそ生命に対する侮辱とも言える。
「宮崎駿こそ、痛みについて何も考えて無い作家だ!」とも言えるわけだよ。
だって、中国の重慶の人口の80パーセントが死んじゃってるワケなんだからさ。
そんな視点でゼロ戦の映画を作った宮崎駿が「生命に対する冒涜」とか言い出したら、重慶に住んでいた人や家族が聞いたら「ちょっと待てよ!」って言いたくなるよね。
オマケに、川上さんが作った映像はただの実験だけど、宮崎駿が描いた堀越二郎は本当に人を殺す戦闘機を作ってるわけだからさ。
あの言い合いに関しては、川上さんの言い分は100パーセント正しいし、宮崎さんの言ってる事は100パーセント間違っているんだ。
じゃあ、なんで川上さんは言い負けたような顔をしていたのか?
それは当たり前の話で、川上さんの立場が弱いから。
あそこで宮崎駿を怒らせちゃいけないし、怒り出した宮崎駿は理屈が通じない。
それで、しょうがないから黙ってるだけ。
あのドキュメンタリーの面白さは、そういう理不尽を言う老人・宮崎駿を面白がる事。
反論できない力関係や雰囲気で、相手の意見を圧殺する嫌な人間・宮崎駿の非人間的な一面というのが見どころなんだよ。
その両面があるから、宮崎駿は面白い。
本当にゼロ戦の堀越二郎と同じだよね。
「美しいものを作るんだけど、内面はどうなってるんだ!?」という人間なんだ。
でも、ネットの感想では「感動した!」とか「スッとした!」という声が続出してる。
なので僕は、あのドキュメンタリーを見て「さすが宮崎駿は人の痛みが分かる人だ!」と思っちゃう純粋な人の方を心配しちゃう。
そんな人は、すごく“いい人”が多いんだよね。
だけど、そんな人はちょっとだけ「NHKの演出に騙されたよ」と思ってくれればいいなと思います(笑)。
コメント
コメントを書くあの場面はどういうセッティングで組まれたのか部外者は知りようもないけど、ジブリの作ってきた作風を鑑みればに半笑いで「ゾンビゲームとかにつかえるとおもってんすよwwww」とか持ち込む方がTPOをわきまえないどうかした行動じゃないでしょうか。
はじめて書き込みます。
風の谷のナウシカの漫画にも描写がありますが、宮崎駿さんの作品には、たとえ造られた生物であっても命があり、どんな生命であっても尊いもの、生きようとする様は美しいものだ、という考えがあると思います。粘菌にすら生命を描いてますからね。
今回の川上さんは、作られたCGが動く様を「気持ち悪い動きだからゾンビゲームに使える(=極論、殺して遊べる)かも」と嘲っています。だからこそ「生命に対する侮辱」という言葉が出たんじゃあないですかね。
変な動きであっても、そのもがく様に生命を感じた宮崎さんと、侮蔑し殺すことを想像した川上さん。話題になっている件は、二人の価値観の違いがよく表れた場面のように見えました。
深く考えすぎかもしれませんけど。
長文失礼しました。
少なくとも相手を怒らせるもの持ってくる時点で、プレゼンとしては大失態でしょうね。立場とかそりゃ採用する方が強くて当たり前じゃないですか?
後、風立ちぬ、は岡田さんのいう風には読み取れなかったな。「美しい人生」でなく、美しいものを作りたかっただけなのに、それが人を殺すことに繋がってしまったいう「人生の哀しみ」そのものを描いてると思うんですが。美化なんかしてないでしょ。宮崎さんは堀越に対して同情はしてても肯定はしてないという風に受け取りましたが。