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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 2 】 21世紀においては疫病も戦争も “対処可能な問題” 」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 2 】 21世紀においては疫病も戦争も “対処可能な問題” 」

2018-09-25 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/09/25
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    今回は、ニコ生ゼミ9月16日(#248)から、ハイライトをお届けいたします。

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     【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 2 】 21世紀においては疫病も戦争も “対処可能な問題”


     次は、感染症と疫病の話。歴史上もっとも有名な疾病についての話です。

     これは、ウィーンの “ペスト塔” というものです。

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     大理石と金属でできた、10数メートルもある立派な建物です。

     こういったペスト塔って、ヨーロッパに行くと、結構、街のそこらへんに建っているんですよ。

     僕も、最初に見た時は、これが何かよくわからなかったんですけど、要するに「ペストが終わってくれてありがとう」という塔なんですね。

     それも「戦って勝利した」ではなくて、「なんとか通り過ぎた! 良かった、良かった!」という記念塔なんです。


     これは、1679年にウィーンで猛威を振るったペストの流行が終わたことを記念して、マリア・テレジアの祖父である当時の皇帝レオポルド一世が建てた塔です。

     最初は木で作られたんですけど、あまりに嬉しかったので、14年掛かりで建て直して、93年にメチャクチャ立派な塔に生まれ変わりました。


     さっきの飢餓の話を覚えてますか?

     1693年というのは、フランスで大飢饉があった年です。

     つまり「ペストが終わって14年掛かりで塔を立ててたら、それと同時期に大飢饉が始まって、また人口の4割ぐらいが死んじゃった」ということなんですよ。

     皮肉なことに、17世紀の末というのは、そういう時代でもあったわけですね。

    ・・・

     もともと、ペストというのは、14世紀に中国で発生しました。

     これによって、人口のおよそ半分が死んだそうです。

     本当に、三国時代での戦死者とか目じゃないですね。


     巨大な中国の人口の半分を減らして、その後、ヨーロッパに伝わった、と。

     最終的に、ペストはヨーロッパの人口の3割を滅ぼしました。

     イタリアの北部では住民がほとんど全滅しました。

     イングランドでは人口の40%が死滅。

     イタリアのフィレンツェでは5割の人が死んでいます。


     だけど、こんなとんでもないペストですら人類の歴史上、最悪の伝染病ではありません。

    ・・・

     時は1520年。

     16世紀の頭ですね。

     日付も分かっています。

     3月5日に、スペインの艦隊がメキシコに到着しました。


     この時、アフリカから運ばれてきた奴隷の中に “天然痘” を患っていた男がいました。

     その奴隷はセンポワランという小さい町で売られて、そこで潜伏期間を終えた天然痘が発症したんです。

     その結果、わずか10日間で、センポワランの町は全滅しました。

     そして、全滅した町から、いろいろな人が逃げた結果、近くの町に次々と天然痘が伝染していったんですよ。


     で、近くの小さな町も次々と全滅していきました。

     なにせ、当時のラテンアメリカの誰も、天然痘の免疫というのを持っていなかったんですよ。


     スペインの艦隊は3月5日に上陸したんですけど、半年後の10月には、天然痘は当時のアステカ帝国の首都にまで広がり、それから2か月余りでアステカ帝国の人口の3分の1が死に絶えました。

     この時、皇帝も死んでしまいました。

     なので、「スペインとの戦争で死んだ」というのに加えて、もう1つ「天然痘との戦いで中部アメリカ文明は滅んだ」と言われています。


     このたった1年間で、当時、2100万人いたと言われているアステカ帝国の人口は、1400万人に減りました。

     さらに、スペイン人が “インフルエンザ” と “はしか” を持ちこんだこともあり、その50年後には人口200万人を切ってしまいました。

     つまり、人口の9割が伝染病で死んだわけですね。

    ・・・

     しかし、歴史上最悪のパンデミックというのは、実は20世紀に起きたんです。

     それが第一次世界大戦です。

     フランス北部の “塹壕戦” では、世界中から物資が集まっていました。

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     塹壕戦ってわかりますか?


     第一次世界大戦というのは “機関銃” が生まれた戦争であり、同時に “鉄条網” が生まれた戦争なんですね。

     それまでの戦争というのは「勇敢な騎兵たちがパッカパッカと走って行って、100人とか200人ぐらいが死んだら大被害」みたいなものだったんですけど。

     第一次世界大戦というのは、世界初の “国家総力戦” であり、おまけに新兵器である鉄条網で、お互いの陣地を守っていたんです。

     その鉄条網を超えようとして、引っかかって怪我をしている兵隊たちを狙って、1秒間に100発ぐらい弾丸を撃てる機関銃をバリバリ撃つ。

     そんな皆殺しが始まってしまったんです。

     なので、これを避けるために “塹壕” と呼ばれる溝を何十キロも掘って、その中でお互いがじっと我慢して戦っていたんです。

     「わずか5メートル前進するのに2か月ぐらい掛かり、そこからまた3か月ぐらい掛けて3メートルぐらい後退する」なんて戦いを、4年くらい続けたんですね。

     で、この間、戦場にはいろんな物資が届けられることになります。


     第一次世界大戦というのはヨーロッパでやっていたんですけど、そこに送られる物資は地球全体から集まっていました。

     まず、中東から石油が来て、インド、アメリカ、オーストラリアからは食料や衣服が来ました。

     南米のアルゼンチンからは牛肉が来て、アフリカのコンゴからは武器とか弾薬に使う銅が、アジアのマレー半島からはゴムが来ました。


     まさに、世界中から戦場に物資が集められたんです。

     「第一次世界大戦こそ、人類の歴史初のグローバルネットワークの戦争だ」と言われたんですね。

     狭いフランス北部の塹壕の一部に、世界中からの物資がバーっと集中して、さらに、そこで使った空の容器や、それを運んだ人間が、またバーッと世界中に散っていく。

     その結果、この塹壕で流行っていた悪性のインフルエンザ、通称 “スペイン風邪” というのが、世界中にばらまかれることになったんです。

    ・・・

    (中略)

     この第一次世界大戦におけるスペイン風邪というのは、今からちょうど100年前の1918年の秋から世界各地で流行り始め、数か月のうちに地球人口の3分の1に伝染しました。

     インドでは全人口の5%が死んで、タヒチでも15%の人が死にました。

     さっきも話した、砲弾や弾丸の先端に使うための銅を採取していたコンゴにも、この病気は流れていって、コンゴの銅山の労働者の5人に1人が死んでしまいました。

     日本でも、全人口の4割が感染して、総人口の1割が死んでしまいました。

     これが100年前の出来事です。

     このスペイン風邪は、たった1年で1億人を殺しました。これは当時の世界人口20億人の5%に相当します。


     『アベンジャーズ・インフィニットウォー』というのをみなさん見ましたか? 

     あの映画の中に、「宇宙の人口を半分殺す」という、究極の悪党 “サノス” というキャラクターが出てきます。

     こいつは、みんなが思いつくSF映画に出てくる一番悪いキャラクターなんですけども、スペイン風邪というのは、それとほとんど同規模のことを100年前に実際にやっているわけですね。


     この100年前のとんでもない出来事を思うと、『アベンジャーズ・インフィニットウォー』は絵空事ではないなと思いました。

     地球人口の3分の1に伝染しましたからね。


     ちなみに、「第一次世界大戦は歴史上最悪の戦争」と言われたんですけども、この戦争での死傷者は、5年間で4千万人です。

     この数字は、スペイン風邪が1年間で殺した人数の半分にもなりません。

    ・・・

     ところが、さっきの飢餓の話と同じように、その後の50年で感染症の発症率も、その影響も、劇的に減りました。

     1979年、世界保健機構WHOは、メキシコを壊滅させた天然痘の根絶を宣言しました。


     その10年前の1969年には、まだ、天然痘で2500万人ぐらい死んでいたんですけど、今世紀に入ってからは、感染した人も死んだ人もゼロです。

     他にも、“SARS” とか、“鳥インフルエンザ” とか、“エボラ出血熱” とか、みんな怖い伝染病の話をいろいろ聞いているじゃないですか?

     「パンデミックが起こる!」って、散々脅されてましたよね?

     でも、結局、そういう事態は起こらなかったですよね。

     これらも、発生してから数年の間に押さえつけられて、WHOにより終結宣言が出されています。


     いまだに蚊が媒介する “マラリア” では、年間数百万人が死んでいます。

     これは事実なんですけど。

     しかし、今や人類の死因のトップ3は “心臓病” と “ガン” と “老衰” なんですよ。


     これまで、心臓病とかガンが死因のトップに上がってこなかったのは「それまでの人間は、そこまで長生きしなかったから」です。

     もちろん、20世紀に入るまでは餓死と伝染病と戦争がトップ3を占めていたようなものでしたから。


     人類はすでに、長生きし過ぎているから心臓病に掛かるし、ガンが発症するし、老衰になる。

     現代では、これらが3大死因になってしまうという時代になってしまいました。


     おまけに、2015年にイギリスで発見された “テイクソバクチン” という、まったく新しい抗生物質があります。

     これは、すさまじく強力な抗生物質で「今現在、地球上に存在するあらゆるバクテリアは、このテイクソバクチンへの耐性を持っていない」と言われています。


     つまり、ここまでをまとめると、「人類にとって、数万年続いていた感染症や伝染病を恐れる時期は、もう終わってしまった」ということなんです。

     すでに我々は、感染症や伝染病で死ぬリスクを、ほとんど考えなくてよくなってしまったんです。

    ・・・

     では、これまで人類を悩ませてきた問題の3つ目である “戦争” はどうか?


     戦争とは、いつの時代も人類にとっての最大の恐怖でした。

     日本人は第二次世界大戦が終わってからの70年以上「戦争は何よりも怖い」とか、「人類最悪の罪だ」と教わってきました。僕もそういうふうに教わりました。

     しかし、そんな戦争すらも、第二次世界大戦の後は、どんどん減りつつあるんです。


     これについてハラリは「戦争がなくなった原因の1つは、核兵器による抑止力だ」と言っています。

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     この核抑止論というのは、「核兵器を作ってしまったおかげで、一回、戦争を始めちゃったら、地球上すべてを巻き込んだ全滅戦争になってしまうようになった。 だから、簡単に戦争を起こせなくなった」という、アメリカ人なんかがよく言う能天気な意見であって、日本人としては「そうか?」って思うんですけども。

     実際にイスラエルに住んでいる人間が言っているんだから、なかなかこれも、腹に来るところがあるんですよね(笑)。


     イスラエルという国が、まだ成立できているのは、核兵器のおかげな気もしますし、リアリティのある言葉だと思います。

    ・・・

     ハラリの調べによると、古代農耕時代において人間の死因の15%は戦争だったそうです。


     すごいですよね。

     農耕時代になる前は “組織的な戦争” なんてものはなかったんですけど、農耕を始めると同時に、人は自分の土地を守らなければいけなくなり、大規模な戦争というのが起こるようになった。

     そして、人間の死因の15%ぐらいは、この戦争や戦いによるものだった、と。


     しかし、20世紀に入ってから、戦争以外のものも全て含めた “暴力” によって死ぬ人というのは、人類の5%になってしまいます。

     さらに、21世紀に入ると、戦争とか犯罪とか全部含めた暴力で死ぬ人の数は、全体の1%になってしまいました。

     古代農耕社会では15%も死んでいたところから、20世紀に入ると5%になり、21世紀に入ったら1%になってしまったんですね。


     2012年の1年間で世界中で死んだ人の数というのは6500万人。

     その内、暴力で死んだ人は62万人。

     1%を切っています。

     で、その62万人の内訳としては、戦争で12万人、残りの50万人は犯罪で死んでいます。

     これに対して、自殺した人は80万人。“糖尿病” で死んだ人は150万人と言われています。


     これを指して「いまや、銃の火薬よりも砂糖の方が多くの人を殺している」とハラリは書いています。

    ・・・

     じゃあ、なぜ戦争はなくなりつつあるのか?

     これについてハラリは、さっき話したような “核抑止” も原因の1つだと言いながら、その他に「世界経済の基盤が “物” であった時代から、“知識” である時代へとシフトしているからだ」と言っています。


     これ、どういうことかというと。

     かつての富というのは、穀倉地帯とか、鉱脈とか、油田といった “土地” に由来するような資源だったんです。

     こういった土地に由来するような資源というのは、戦争で奪い取れるんです。


     でも、知識というのは戦争では奪い取れない。

     そして、この知識が、今よりももっと重要な経済基盤になると、戦争で得られるものはどんどん減っていく。

     「今現在、戦争が起こっているのは、中東やアフリカなどの、物とか土地に由来した“古い経済”に縛られた土地に限定されるようになってきた」とハラリは言っています。


     たとえば、1998年に、ルワンダはコンゴを侵略しました。20年前のごく最近の話です。

     コンゴを侵略した理由は「“コルタン” というレアメタルの鉱山を奪い取るため」で、この戦いは、第二次コンゴ戦争、あるいは、アフリカ大戦と呼ばれています。


     コルタンとは、スマホを作るためとか、バッテリーの寿命を延ばすためなど、いろいろな使い道がある世界戦略物資です。

     ルワンダは、この時に奪ったコルタン鉱山で、年間2億ドルの儲けを得ていました。

     まあ、そのために戦争を始めたんですけども。

     ハラリは「このような戦争が起こるのは、アフリカという土地が、まだ地下資源などの “物” による経済だからだ」と言っています。

    ・・・

     ハラリは、こういう思考実験をしています。

     たとえば、今、中国がアメリカのカリフォルニアに上陸して、シリコンバレーを奪い取ったとしよう。

     しかし、何も意味はない。

     アメリカのシリコンバレーを奪ったからと言って、そこには何の資源もない。


     シリコンバレーには富を生み出すシリコンの鉱脈なんかないし、そこでAppleとか、FacebookとかGoogleの本社を奪ったとしても、何の得にもならない。

     中国はそんなことをするよりも、シリコンバレーにあるAppleやMicrosoftと手を組めば、ルワンダがコンゴから奪った鉱山の年間収益である2億ドルを、わずか1日で稼ぐことができる。

     なので、先進国であればあるほど、戦争というのは無意味化する。


     世界が平和になったのは「平和な方が儲かる上に、管理が簡単だから」だ。

     「平和というのは予想できるけど、戦争というのは予想できないとわかったから」だ、と。


     これについてハラリは、「ドイツのメルセデスベンツ社の年次報告には、来年度はポーランドに侵攻して安い労働力を手に入れよう、なんて書かれていないんですよ」なんて、嬉しそうに書いてるんですけど。

     キッツい “ユダヤジョーク” ですよね(笑)。


     “戦争を行う予定” なんていうのは、今やどの国のスケジュールにも書いていないんです。

     だけど、実はこれは、20世紀前半までの世界ではありえなかったことなんですね。


     第二次世界大戦が終わるまで、どの国も次の戦争の準備をやっていて、どの国も「こういう兵器の開発が済んだら、そろそろこの国と戦争を始めよう」と当たり前のように考えていたんです。

     それが、「戦争はやって当然」という考え方から、「戦争は避けるべきアクシデント」に変わってきたんです。

     その理由は「管理ができないから」ですね。


     結果、今や戦争は、中東やアフリカなどの “いまだに戦争が起きる土地だけの現象” になってしまったわけですね。

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