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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『もののけ姫』の読み方 3 】 モロは本当に人間を憎んでいた?」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『もののけ姫』の読み方 3 】 モロは本当に人間を憎んでいた?」

2018-11-07 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/11/07
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    今回は、ニコ生ゼミ10月28日(#254)から、ハイライトをお届けいたします。

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     【『もののけ姫』の読み方 3 】 モロは本当に人間を憎んでいた?


     次は「モロの秘密」という話ですね。
     
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     これは、映画が始まってから1時間をちょっと越えた辺りのシーンなんですけど。

     傷を負ったアシタカが、モロ達のねぐらで目覚め、外に出る。

     すると、ねぐらの上に座っていたモロから話しかけられるというシーンです。


     このシーンでモロ達の住処が出てくるんですけど、単なる山犬が住んでいるにしては、ちょっと不思議な感じの場所なんですよね。

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     これは、起きたアシタカがモロ達のねぐらの中に立っている様子です。

     このモロのねぐらは、全てが岩で出来ています。

     それも、床と天井と壁の部分が、それぞれ巨大な1枚岩で出来ているんです。

     床も天井も水平なんですね。その上、横の壁もほぼ同じ角度に傾いています。

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     こっちは、その翌朝にアシタカが旅立つ場面です。

     ここで、この不思議な岩で作られたねぐらの全貌が見えます。


     見て分かる通り、完全に1枚板の水平な岩が上に乗っていて、それを両側の岩が支えている。

     床の部分も張り出して、ベランダ状になっているんですよね。

     これと同じ形のものを、どこかで見た気がするんです。

    ・・・

     その答えは、大阪にあります。

     大阪府の交野市にある磐船神社の “天岩戸” です。

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     これが、まあ、そっくりの構造をしているんですよ。


     だからといって、「別にサン達が暮らしていたのは大阪だ!」というつもりはないんですよ。

     そうではなく、これは “巨石文明の遺跡” なんですね。


     アシタカが、もともと暮らしていた村も、先週に話した通り、青森の方でもほんのちょっとしか遺跡が残っていないような “巨石信仰” のある村でした。

     縄文人達は、こういった巨大な岩みたいなものを、御神体として神様のように祀っていたと言われています。

     つまり、アシタカ達の集落というのは、そういった巨石文明の末裔なんですね。

     それに対して、モロがねぐらにしている場所はというと、劇中では何も解説してくれていないんですけど、こんなに水平な床や天井、全く同じサイズの岩で両側を支えていて、その上に水平な岩が乗ってるような洞窟なんて、自然状態で生まれるはずがないんです。

     これはもう、普通に考えたら巨石文明の神殿というか、神様の座である “石座”(いわくら)みたいなものなんですね。

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     これは、大阪府交野市の磐船神社にある天岩戸なんですけど。

     イギリスにある “ストーンヘンジ” も、大体、これと同じです。


     垂直もしくは同じ角度に立てた岩の上に、水平に岩の板を乗せることによって、神様の座を作ろうとしていたんですよ。

     これが巨石文明の特徴なんです。

    ・・・

     つまり、どういうことかというと、モロのねぐらというのは古代人の神殿なんですよね。

     古代の巨石文明の時代には日本には “本当の神様” が住んでいたんです。

     
     モロ達のような一族というのは、巨大な獣であり、おまけに人の言葉を話すことが出来たので、古代人達から崇められていた。

     つまり、本当の神様だったわけです。


     なので、神殿を作ってもらって、そこで祀られていたんです。

     しかし、今や、そんなモロの神殿には、誰もお詣りに来ない。

     これこそが「森が死んでいく」という言葉の意味なんですよ。


     にも関わらず、モロは今でもここに住んでいるんです。

     なぜかというと、モロは “犬の神様” だからです。


     犬というのは、人類にとって、一番 古く、一番 忠実な友なんですよ。

     そんな犬の神様だから、もう誰も訪れなくなった神殿に、今もなお、誰かが帰ってくるのを待ちながら、ずっと住み続けてくれているんです。


     これが分かった時、僕「うわーっ!」って思って、もうマジで、金曜ロードショーを見ながら涙が出そうになったんですけど。


     今でも、人々から忘れられた神殿に住んでいてくれるくらいなんだから、そんなモロが人間を嫌いなはずがないんですよ。

     だから、赤ん坊のサンを育てたんです。


     捨てられていた人間の赤ん坊を、わざわざ自分の娘として育てるくらいなんだから、むしろ、人間が好きなはずなんです。

     彼女は “人間の行為” が憎いだけなんですよ。

     サンを捨てたエボシが許せないだけなんですね。


     だけど、普通の解説書とか、ジブリの公式本とかを見ても、全部「モロは人間を憎んでいる」って書いてあるんですよ(笑)。

     もうね、この『もののけ姫』という作品に関しては、劇中の台詞を信じないようにしてください。

     そこに映し出される “絵” だけを信じてくれれば大丈夫です。

     というか、むしろ絵を信じた方が、どんな話なのか分かりやすいと思うんですよね。

    ・・・

     こういった「かつては神殿と呼ばれていたはずの場所に、お祈りする人が誰も来なくなった」というのが、「森が死んだ」という理由なんです。

     かつての森の神様を誰も信じなくなって、森を “単なる天然資源” としか見なくなったから、彼ら森の神様は、段々と身体が小さくなっていくわけです。


     物語の舞台は室町時代。

     この時点でモロは300歳で、乙事主は500歳。

     なので、彼らが産まれた時代というのは、中国から日本に稲作や鉄が伝えられ、人々が「森には神様がいる」だなどと信じなくなった時代でもあるんです。


     だから、おそらくは、乙事主もモロも、人々が自分たちを「神様だ」と崇めていた時代のことを、正確には知らないはずなんです。

     たぶん、自分たちの親とか一族から「昔はそうだった」と言い伝えられて来たんでしょう。


     なので、乙事主達イノシシの神様は、もう人間のことを信じられなくなり、自分たちだけで、まだ森の神々を信じている巨石文明がかろうじて残っている青森の方まで行こうとしていたんです。

     それに対して、モロは「もう二度と人間が自分たちを信じることはないだろう」なんて口では言いながら、自分でも半分くらいはそんなふうに思っていながら、それでもやっぱり、かつて人間たちが自分たちに作ってくれた巨石神殿に住み続けている。

     なんかね、そういう泣ける話なんだなって思ったんですよね。

    ・・・

     そういった、森の中の神様を信じる巨石文明の生き残りは、もはや青森の果てにしかない。

     そう思ったからこそ、乙事主たちイノシシは、劇中では “鎮西” と呼ばれた九州から移動していたわけです。


     ちなみに「『もののけ姫』の舞台になったのは岡山だ」と言われています。

     宮崎さんが岡山をスケッチに行って「ここを舞台にしよう」と言ったそうです。

     これは “岡山舞台説” の1つなんですけど、僕も、たぶん、そうなんだろうと思っています。


     というのも、もし、話の舞台が京都よりも東だったら、乙事主達イノシシの大群が京都を突っ切ったことになるわけですから。

     あんな群れが、京都を突っ切れるはずがない。


     ジコ坊が天皇から命令されているミッションは、もちろん「不老不死の力があるというシシ神の首を持ち帰る」ということもあるんでしょうけど、なによりも「イノシシ神の大群が、京都に突入してくる前に、最前線である岡山で食い止めろ!」という命令もあったんじゃないかな、と。

     そう考えると、全ての辻褄があってくると思うんですよ。


     だって、巨大なイノシシの群れが京都を横断したら、ただでさえ、室町時代には権威の落ちきっていた、宮崎駿さんの解説によると「当時は自分のサインを売って、その日暮らしをしていた」という天皇家は、もう絶対に潰れてしまうから(笑)。

     こういうのが『もののけ姫』の大きなお話の流れじゃないかと思います。

    ・・・

     もう、この辺の「人間が許せない!」みたいなモロの台詞よりも、「モロ自身は、縁もゆかりも全くない人間の赤子、噛み殺してもいいはずのサンを拾って、ずーっと大事に育てて来た」とか、「なおかつ、その愛してやまないサンを、いずれ人間の世界に返そうと思っていて、アシタカがそれの助けになると思い、少なからずの望みを抱いていた」という部分を見るべきだと思うんですよ。

     アシタカがねぐらの中で、傷にうなされて寝ている時には、屋根の上に、ずっとモロがいたわけですよね。


     モロは、アシタカが起きて来た時に「お前が一言でも唸り声を上げようものなら、噛み殺してやろうと思ったぞ」とか言うんですけど。

     これがどういう意味かというと、アシタカは右腕が呪われているんですけど、モロもモロで、エボシの鉄の銃弾にやられて、死に掛けているんですよ。

     両者共、全く同じ状況だったんですね。


     両者共、自分がタタリ神になりそうなのを抑えているから、余計に苦しいんです。

     この痛みを他者への恨みに変えれば、2人共、簡単にタタリ神になれて、楽になるんですよ。

     でも、アシタカは、うなされつつも、それを恨みに変えずに必死に耐えていた。


     そんなアシタカを見て、モロも「こいつと同じく、この痛みをタタリ神にせずに、ここで一人死んで行こう」と考えていたんだと思います。


     ……まあ、「エボシの頭だけは噛み砕いてから死ぬ!」とは言ってるんですけど。

     つまり、モロは、自分自身の負の感情に負けずに、苦しみに耐えるアシタカを見て「可愛い娘を任せられる男だ」と見たんでしょう。


     でも、宮崎駿は相変わらず、そういうことをアニメの中では全く書いてくれないんですよね(笑)。


     そうではなくて、モロに怖い台詞ばっかり言わせるから、すごく怖いバアサンみたいに見えちゃうんです。

     だけど、本当のモロというのは、いろんな人を冷静に観察しているような重要な役になっているんです。

     だから、モロの声優を務めた美輪明宏は、宮崎駿から色々と設定を聞いた後、ものすごく喜んだそうです。


     美輪明宏から「うわあ、そういう役なんですね。……でも、ちっともそれを書かないんですね」と言われた宮崎駿が「そう。書かないんですよ」と、嬉しそうに返すというやりとりが、ドキュメンタリーの中にも収録されています。 


     
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