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「【『2001年宇宙の旅』でも予言できなかった未来像 1 】 未来の色が白に変わった」
僕もそう思うんですけど。
だけど、そんな『2001年宇宙の旅』にも、もちろん、いくつかのミスがあります。
フロイド博士がスペースシャトルで移動するシーンは無重力なので、そんな中で本当に物が食べられるかどうかわからなかったので「液体を吸う」という描写になってるんです。
今では宇宙ステーションの中でラーメンを食べてるくらいですから。
あとは、まあ、大きいミスとしては「『2001年宇宙の旅』には、途中でパンナム航空の宇宙船が出てくるんですけど、現実の世界では2001年時点でパンナム航空は、もう倒産していて存在しない」という、なかなかショッキングなミスがあるんですけど。
その下にあるのは、ティコ・クレーターの中に入るシーン。これは珍しいスタジオショットですね。
宇宙服着た俳優さんの周りにスタッフたちが写ってます。
ここなんですよ。「宇宙服の色が銀色」というところなんです。
なので、このG.I.ジョー用のフィギュアも、完全に銀色で作られています。
このフィギュアのモデルは、おそらく “ミスター宇宙飛行士” こと、最も有名な宇宙飛行士のジョン・グレンではないかと思うんですけど。
ところが、これが『2001年宇宙の旅』が公開された1968年になると、もう変わっちゃったんですよ。
これを見るとわかる通り、白なんですね。このフィギュアには、バズ・オルドリンが使用した装備とかも丸々一式ついてるんですけど、これ全部、真っ白なんですよ。
たとえば、ハリウッド製のSF映画でも、ロケットは必ず銀だった。
ところが、実際にNASAを取材していたスタンリー・キューブリック監督は、ある日、ロケットの色が白に変わっていることに気が付いたんですね。
表面も、宇宙空間で宇宙飛行士を守るためにセラミックやらプラスチックやら、いろんな複合材料で保護しないといけない。
だから、宇宙船の色が白になって行ったんですよね。
これにビックリしたキューブリックは、すでにかなり完成していた撮影用のミニチュア宇宙船を、全て白く塗り替えさせたそうです。
『2001年宇宙の旅』に登場するはずだった宇宙船というのは、やっぱり銀色だったんですよ。
その銀色のミニチュアを「とりあえず全て真っ白に塗れ!」と言った。
なので、『2001年宇宙の旅』に出てくる宇宙船というのは、ほとんどが真っ白になっているんですよね。
本当に、そんな銀色から、「一夜にして」と言っても大袈裟でないくらい、『2001年宇宙の旅』を作っている最中、『スター・トレック』の企画が進んでいる最中に、真っ白になっちゃったんです。
今、コメントでも流れたんですけど、そうなんですよ、ウルトラマンも身体が銀色だし、ウルトラマンと一緒に戦う科学特捜隊のジェットビートルも銀色でしょ?
銀こそが未来、銀こそが宇宙を象徴するような色だったんですね。
1967年に、ダスティン・ホフマン主演の『卒業』という映画が作られるんですけど。
この『卒業』という映画で、主人公のベンは、エリートの大学を出てパーティでも有力な人から声を掛けられるんですね。
だけど、主人公のベンというのは、そんな中でも落ち込んでいて、「俺は大学を卒業して何をするんだろう? 人生って何だろう? 生きていくって何だろう?」って、かなり哲学的な悩みを持っているんです。
そんな時、ふと、賢そうな老人から話しかけられるんですよ。
「ベン、俺の話を聞け。俺の目を見ろ。お前は人生が何か知っているのか? この世界が何か知っているのか? この世界で一番大切なものを知っているのか?」と。
そう言われたベンは「ああ、やっと話が通じる人に声を掛けられた。この賢そうな老人の話を聞こう」と思い、老人の目を見て「教えてください」と問いかける。
それまでの力強い鉄のイメージから、“軽薄” って言ったらナンなんですけれど、「軽くて安くて簡単で、いくらでも生産できる」というプラスチックの世界に変わっていった。
ところが64,5年くらいから、コンセプトカーにしても新車にしても、白で塗装されることが多くなってきた。
日本でも、70年代に入ってから、車が発売される度にちょっとずつ色が変わって行ったんですけど、最後は80年代に向かってどんどん白に統一されて行きました。
スタンリー・キューブリックは、この結果、映画内で使う予定だった宇宙服や宇宙船の色を大急ぎで修正したんですけど。
ところが、この月面のクラビウス基地のシーンは、かなり初期の段階で撮影を済ませちゃっていたんですよ。
冒頭のアフリカのシーンを撮った次に、もうこの月面のシーンを撮影してしまっていたんですね。
なので、修正できなかったんですね。
その14,5人というのが、どんなメンバーだったのかというと、天文学者、生物学者、宗教家、哲学者。
そういった世界中の超一流の人達に、こんなことを語らせる予定だったんです。
ところが、1960年代前半のアメリカ人にしても、世界中の人にしても、「それは、まあ、おとぎ話の世界でしょ?」くらいの感覚だったんです。
なので、20分にわたって、いろんな超一流な学者さんや、宗教家、哲学者達のインタビュー映像を流すことでリアリティを与えないと、『2001年宇宙の旅』という映画は成立しないと思ったんですよね。
その結果、「この20分、丸々いらないわ」と思って、バッサリ切ることができたんです。
と、同時に、自分が見せようとしている、銀色の宇宙のイメージが古くなりつつあることについて「これはヤバい」と思って、スタンリー・キューブリックは宇宙服にしても宇宙船にしても、どんどん白またはプラスチックのカラーに振って行ったわけですね。
でも、この銀色の宇宙服だけは修正できませんでした。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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