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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『2001年宇宙の旅』でも予言できなかった未来像 1 】 未来の色が白に変わった」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『2001年宇宙の旅』でも予言できなかった未来像 1 】 未来の色が白に変わった」

2018-12-04 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/12/04
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    今回は、ニコ生ゼミ11月25日(#258)から、ハイライトをお届けいたします。

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     【『2001年宇宙の旅』でも予言できなかった未来像 1 】 未来の色が白に変わった


     『2001年宇宙の旅』というのは、よく「全てにおいてカッコよく “予言的” だった」というふうに言われます。

     僕もそう思うんですけど。

     だけど、そんな『2001年宇宙の旅』にも、もちろん、いくつかのミスがあります。


     このミスというのは、例えば、よく言われるような「宇宙食をストローで飲んでいる時に、ストローの中の水位が下がる」とか、そういう細かいツッコミじゃないんです。

     もっと本質的に「別に、宇宙食は液体でなくても良かった」というか。

     というのも、ちょうどこの映画が作られた当時というのは「宇宙で人間が物を食べたとして、本当に飲み込めるかどうか?」というのが怪しかった時代なんですね。


     ディスカバリー号の中では遠心力による擬似重力、いわゆる人工重力があるので、ボーマンやプールは普通に飯を食ってるんですけど。

     フロイド博士がスペースシャトルで移動するシーンは無重力なので、そんな中で本当に物が食べられるかどうかわからなかったので「液体を吸う」という描写になってるんです。


     ただ、後に、人間は無重力空間の中でも普通に物が食べられることがわかったんですよね。

     今では宇宙ステーションの中でラーメンを食べてるくらいですから。


     あとは、まあ、大きいミスとしては「『2001年宇宙の旅』には、途中でパンナム航空の宇宙船が出てくるんですけど、現実の世界では2001年時点でパンナム航空は、もう倒産していて存在しない」という、なかなかショッキングなミスがあるんですけど。


     ただ、最大の計算違いというのは、こういった細かいツッコミじゃなくて、ここだったんですね。

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     これは、月のクラビウス基地から発信するムーンバスの中で、フロイド博士達がサンドイッチを食うシーンなんですけど。

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     その下にあるのは、ティコ・クレーターの中に入るシーン。これは珍しいスタジオショットですね。

     宇宙服着た俳優さんの周りにスタッフたちが写ってます。

     ここなんですよ。「宇宙服の色が銀色」というところなんです。

    ・・・

     ここでは、宇宙服が銀色であるところに注目してほしいんですけども。

     これは、撮影中にちょうど進んでいたマーキュリー計画やジェミニ計画での宇宙服を反映しているんですね。

     これは宇宙服を着ているG.I.ジョーのフィギュアです。

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     「マーキュリー・アストロノート」と書いてあるんですけど、わかりますか? 完全に銀色なんですね。

     このマーキュリー計画からジェミニ計画の頃までの宇宙服というのは、実物も、本当に銀色だったんです。

     なので、このG.I.ジョー用のフィギュアも、完全に銀色で作られています。


     このフィギュアのモデルは、おそらく “ミスター宇宙飛行士” こと、最も有名な宇宙飛行士のジョン・グレンではないかと思うんですけど。

     ところが、これが『2001年宇宙の旅』が公開された1968年になると、もう変わっちゃったんですよ。


     これは、バズ・オルドリンという、『トイ・ストーリー』のバズ・ライトイヤーのモデルになった人と、その人が実際に着ていた宇宙服のフィギュアです。

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     これを見るとわかる通り、白なんですね。このフィギュアには、バズ・オルドリンが使用した装備とかも丸々一式ついてるんですけど、これ全部、真っ白なんですよ。

     この差がミス、というのかな?

     キューブリックは「宇宙服というのは銀色だ」と思い込んでいたんですけど、実際は白かったんです。

    ・・・

     じゃあ、なぜ、こんなことになったのか?

     実は、宇宙のイメージが銀色から白に変わったというのが、ちょうど『2001年宇宙の旅』を作っていた1964年から66,7年あたりの大きな変化だったんですよ。

     それまで宇宙のイメージというのは銀色だったんです。


     たとえば、ハリウッド製のSF映画でも、ロケットは必ず銀だった。

     ところが、実際にNASAを取材していたスタンリー・キューブリック監督は、ある日、ロケットの色が白に変わっていることに気が付いたんですね。


     これは、マーキュリーのカプセルを打ち上げるための “アトラスロケット” です。

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     銀色ですね。

     ところが、ジェミニ宇宙船を打ち上げるための“タイタンロケット”は、完全に白なんですよね。

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     一部には、まだ銀が残ってるんですけど。こんなふうに、銀色から白に変わって行ったんですよ。


     これは塗料の性能が進んだ、というか、当初は、宇宙までロケットを飛ばすために塗料の分だけでも重量が増してしまうのは損なので、無地の銀で行こうと思っていたんですけど。

     ところが、宇宙船という物の構造を考えた時、外側が剥き出しの金属では都合が悪いことがわかったんです。


     たとえば、大気圏に突入するカプセルの裏の方には、“融剤” という、ポリエステルみたいな溶ける材料を塗らなきゃいけない。

     表面も、宇宙空間で宇宙飛行士を守るためにセラミックやらプラスチックやら、いろんな複合材料で保護しないといけない。

     そんなふうに、徐々に徐々に「どうも、それまで考えられていた、銀色のステンレス、もしくはアルミニウムの金属製の宇宙船というものよりも、表面の一部をプラスチックにした方がいいんじゃないのか?」という考え方に変わりつつあったんです。

     だから、宇宙船の色が白になって行ったんですよね。


     この「未来とか宇宙のイメージが銀から白に変わる」というのは、かなり革新的な出来事でした。

     これにビックリしたキューブリックは、すでにかなり完成していた撮影用のミニチュア宇宙船を、全て白く塗り替えさせたそうです。

     『2001年宇宙の旅』に登場するはずだった宇宙船というのは、やっぱり銀色だったんですよ。

     その銀色のミニチュアを「とりあえず全て真っ白に塗れ!」と言った。

     なので、『2001年宇宙の旅』に出てくる宇宙船というのは、ほとんどが真っ白になっているんですよね。


     同じ頃に作られたテレビドラマの『スター・トレック』でも、宇宙船エンタープライズ号って、真っ白なんですよ。

     エンタープライズ号以前のTVシリーズに出てくる宇宙船やロケットというのは、だいたい銀色なんですよね。

     
     本当に、そんな銀色から、「一夜にして」と言っても大袈裟でないくらい、『2001年宇宙の旅』を作っている最中、『スター・トレック』の企画が進んでいる最中に、真っ白になっちゃったんです。

    ・・・

     第2次大戦の頃は「未来は鋼鉄(スチール)で出来ている」、つまり「銀色が世界を征服する」というイメージだったんです。

     B-29もジュラルミンに輝いていますし、P-51ムスタング戦闘機という第2次大戦を勝利に導いたアメリカを代表するような戦闘機も、無塗装の銀色なんですよ。


     今、コメントでも流れたんですけど、そうなんですよ、ウルトラマンも身体が銀色だし、ウルトラマンと一緒に戦う科学特捜隊のジェットビートルも銀色でしょ?

     銀こそが未来、銀こそが宇宙を象徴するような色だったんですね。


     ところが、60年代に入ると、プラスチックの時代がやってくるんです。

     1967年に、ダスティン・ホフマン主演の『卒業』という映画が作られるんですけど。

     この『卒業』という映画で、主人公のベンは、エリートの大学を出てパーティでも有力な人から声を掛けられるんですね。

     だけど、主人公のベンというのは、そんな中でも落ち込んでいて、「俺は大学を卒業して何をするんだろう? 人生って何だろう? 生きていくって何だろう?」って、かなり哲学的な悩みを持っているんです。


     そんな時、ふと、賢そうな老人から話しかけられるんですよ。

     「ベン、俺の話を聞け。俺の目を見ろ。お前は人生が何か知っているのか? この世界が何か知っているのか? この世界で一番大切なものを知っているのか?」と。

     そう言われたベンは「ああ、やっと話が通じる人に声を掛けられた。この賢そうな老人の話を聞こう」と思い、老人の目を見て「教えてください」と問いかける。

     すると、その老人は、ちょっと笑って「 “プラスチック” だよ。覚えておけ、ベン。これからはプラスチックだ。お父さんにも言ってくれ。プラスチックに投資してくれ!」と言って去って行き、ベンはすごくガッカリするという、そんなシーンがあるんですけど。

     こういったやり取りが、この時代には、やっぱりあったんですよ。


     それまでの力強い鉄のイメージから、“軽薄” って言ったらナンなんですけれど、「軽くて安くて簡単で、いくらでも生産できる」というプラスチックの世界に変わっていった。

     モーターショーで発表されるコンセプトカーや新車も、1962,3年くらいまでは、本当に見事に銀色だったんですね。

     ところが64,5年くらいから、コンセプトカーにしても新車にしても、白で塗装されることが多くなってきた。


     日本でも、70年代に入ってから、車が発売される度にちょっとずつ色が変わって行ったんですけど、最後は80年代に向かってどんどん白に統一されて行きました。


     そんなふうに、未来というもののイメージが、銀色から、無難な白か、もしくは “プラスチックカラー” と言われる、発色のよいカラフルな色に変わって行ったのが、60年代半ばからの変化なんです。

     スタンリー・キューブリックは、この結果、映画内で使う予定だった宇宙服や宇宙船の色を大急ぎで修正したんですけど。

     ところが、この月面のクラビウス基地のシーンは、かなり初期の段階で撮影を済ませちゃっていたんですよ。

     冒頭のアフリカのシーンを撮った次に、もうこの月面のシーンを撮影してしまっていたんですね。

     なので、修正できなかったんですね。

    ・・・

     もう1つ、キューブリックの思い違いがありました。

     キューブリックは、まさか、60年代のうちに本当に人類が月に行けるだなんて、ちょっと信じてなかったそうなんです。

     なので、『2001年宇宙の旅』では、冒頭の20分くらい、14,5人のインタビュー映像が入るはずだったんですよ。


      その14,5人というのが、どんなメンバーだったのかというと、天文学者、生物学者、宗教家、哲学者。

     そういった世界中の超一流の人達に、こんなことを語らせる予定だったんです。

     「嘘っぽく聞こえるかもわかりませんが、月に行くことは可能です」とか、「これから人類は宇宙空間に行くことになるでしょう」とか、「宇宙には人間以外にも生命がいるかもしれません」とか、「宇宙にいる生命は、人間と同じくらいか、ひょっとしたら人間を超えるくらいの知性を持っているかもしれません」って。


     現代を生きている僕らからしたら「いや、そんなの当たり前だよ」と思うんですけど。

     ところが、1960年代前半のアメリカ人にしても、世界中の人にしても、「それは、まあ、おとぎ話の世界でしょ?」くらいの感覚だったんです。

     なので、20分にわたって、いろんな超一流な学者さんや、宗教家、哲学者達のインタビュー映像を流すことでリアリティを与えないと、『2001年宇宙の旅』という映画は成立しないと思ったんですよね。


     ところが、キューブリックが映画を作っている間にも、宇宙開発競争はどんどん激しくなってきて、世界中の人々も、日常生活で宇宙に関するニュースを見るようになった。

     その結果、「この20分、丸々いらないわ」と思って、バッサリ切ることができたんです。

     と、同時に、自分が見せようとしている、銀色の宇宙のイメージが古くなりつつあることについて「これはヤバい」と思って、スタンリー・キューブリックは宇宙服にしても宇宙船にしても、どんどん白またはプラスチックのカラーに振って行ったわけですね。

     でも、この銀色の宇宙服だけは修正できませんでした。

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