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今回は、ニコ生ゼミ6月9日分(#285)から、ハイライトをお届けいたします。
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「【『ひとの気持ちが聴こえたら』解説 2 】 アスペルガー症候群の著者・ロビソンはTMS実験を通じて他人の気持ちが理解できるようになったのか?」
ロビソンは、自閉症患者、いわゆるアスペルガー症候群で、それまでは「悲しげな音楽」とか「楽しげな音楽」とか、そういう曲調しかわからなかったんです。
他人が喧嘩してても「ああ、怒ってるんだな」くらいしかわからない。
「なんで彼が怒っているのか」というのが、全く理解できなかったんですね。
それまでの彼にとって、音楽というのは「技術を持ったテクニシャンが正確な音階やメロディーで操作する音の連続だ」というものだったんです。
その曲のテーマなんていうのは考えたこともなければ、説明されたところで何を言ってるのかもよく分からなかった。
でも、ロビソンは、運転している最中に、急に「これは誰かに向けたメッセージであって、自分の思いを伝えるために書かれ、歌われているものだ」と分かるようになったんです。
「そのおかげで、こんな変化が起きた」というプロローグから、この本は始まります。
“音楽” に関しては何ひとつわからないんですけど、音に関してはすごくよくわかる。
ただ、「自分は周りの子供とは違う」というのは、彼にも子供の頃から分かっていたんです。
だけど、「なぜ違うのか?」というのは分からなかった。
彼が40歳の時なんです。
既に40歳になっていたロビソンには、もう、1人で生きていく方法が分かっていたので、「アスペルガー症候群だと言われて、逆に気持ちが楽になった」と言っています。
なので、そういった自分の経験を、自閉症に関する本とか体験記としてまとめたものを本にしたら、それがわりとベストセラーになって、ワークショップに呼ばれるようになっていたんですね。
そのワークショップでの体験です。
彼がワークショップで講演を行うと、自閉症の子供を持つ親たちのほとんどは、ロビソンが自立し生活しているという話に勇気づけられる反面、「しかし、自分の子供達はダメだろう」と思い込んでいた。
なぜかというと、「自分たちの自閉症の子供は、テレビを見てゲームするくらいしか出来ない」というふうに、まあ、親達は勝手にそういうふうに思い込んでいるわけですね。
ロビソンは、一生懸命「いや、そんなことないよ! 自閉症というのは、そのおかげでこの部分が強くなるという才能でもあるんだから、それで食っていけるし、生きていけるよ! 俺を見てよ!」と言うんだけど、なかなか親たちには通じないんですね。
ある時、そんなワークショップが終わると、地味な外見の娘が近づいてきて、「私はリンジー・オバーマン博士です」と自己紹介したんです。
ロビソンは「本当かよ? 博士って言ってるけど、見た感じは地味な姉ちゃんじゃん」と思ってたんですけど。
そのリンジー博士は、「自分はベス・イスラエル病院で、成人の自閉症患者相手に心の知能指数を上げる実験を行うプロジェクトに参加している」と語りました。
彼女の話によると、“TMS”……「Transcranial Magnetic Stimulation(経頭蓋直流電気刺激)」、つまり「頭蓋骨を経て磁気を通じて刺激を与える」という治療をTMSというんですけども。
そんな新しい技術を使って脳の蓋層に電磁波の信号を送るという実験だそうなんですけども。
ロビソンはその話を聞いて「ちょっと怖いな」と思ったんですけど、自分自身も、自閉症の研究に関する本も書いているくらいだから、その好奇心から研究への協力を約束しました。
キャデラックに乗って、高級な服を着てたんですけども。
しかし、その頃から友達がいなかったそうです。
自分としては「ただ単に論理的なだけだ」と思っているんだけど、周りの人は自分のことを「思いやりがない」とか、「ロボットみたいだ」とか、「他人に無関心だ」といって笑ったり嫌ったりしてるんですね。
なぜなら、この成功というのは、たとえば「パーティーに出て友達に取り囲まれること」なはずなのに、自分の周りには理解者がいないし、自分を好きだという人もいない。
いつの間にか、ロビソンは周りから誤解されて、その誤解も訂正すればいいんだけど、誤解されていることもよくわからなくて、いつの間にか爪弾きにされて、音楽業界から追い出されてしまったんですね。
ロビソンは、この時に「会社で成功するのは、社交性があって他人の感情に訴えるのが得意な、自分と逆のタイプだ」と気付き、そういった人間を「ズルいヤツ」というふうに呼んでいました。
そういうズルいヤツばっかりが成功して、自分みたいな人間は、結局はクビになってしまうんですね。
“ファラデーの電磁誘導の実験” というのを、まあ、誰でも中学か高校くらいでやったと思うんですけど、覚えてますか?
その電線に強力な磁石を近づけたり離したりすると、テスターの針が上下します。
これが、TMSの原理である、電磁誘導です。
脳の近くで、強力な電磁石を一定のリズムで動かすと…
…電磁石自体を動かさなくても、電位が発生する場所を動かすだけでいいんですけど。
脳内で同じ現象が起こる。
つまり、脳の中に流れている電位差というものが、微妙に動くのだと思ってください。
極性やパターン次第で、脳の機能に影響を与え、働きを高めたり、逆に抑えたりもできるんだそうです。
なので「治したい部分の逆の部位を下げる」と。そうすることによって、自分が狙っている部位の活動を上げることができる。
「1日限りの名画家」という記事です。
僕、これ、本当の記事を読みたくて、原文の英語のタイトルから検索したんですけど、ちょっと見つからなかったんですけども。
彼は作家ですから、絵が全く描けないんですよ。
本当に絵が描けないんですけども、TMS実験を受けた後では、絵が描けるようになったんですね。
猫の絵というのを描いたんですけど、これがもう、プロ並みなんですよ。
メッチャクチャ上手かったんですよね。
しかし、その「プロのような絵が描ける」という能力は数時間で消えてしまった。
そういうニューヨーク・タイムズの記事を読んで、ロビソンは、この実験にすごく将来性を感じます。
たとえば、「まぁ、そーですね。やってみましょーか(適当)」っていうのを、“まあ、そうですね。やってみましょうか” という言葉の部分しか理解できないんですね。
「いいじゃないですか! 素晴らしいですよ!(称賛)」の違いというのを、全く見分けられないんです。
なので、トラブルが多発するんですね。
そして、「その回路というのは、おそらく前頭葉のここにあるんじゃないか?」というふうに、研究書によって何箇所かのターゲットまで、すでに決まっていると説明しました。
ロビソンも「これはいけるんじゃないか?」と思いました。
いつも物事の悪い部分だけを見てる人なんですよ。
しかし、自閉症の自分には、それが気にならない。
むしろ、この奥さんは、物事の悪い部分をちゃんと見てくれるので、ロビソンが他の人と話している時にも「ちょっとあなた、あの人、あなたのそれを嫌がっているわよ」みたいなことを、他人より先に気付いて、ロビソンに言うことが出来るんです。
空気を読めず、無神経で、自分の傲慢さに気が付けないので、彼には友達もいないんですよね。
もちろん、社会がロビソンを見る目というのは、それとは違っているんですよ。
あくまでも彼は、成功している事業者で、自動車マニアで、家族思いで、本も売れたという、成功者だというふうに、周りは見ている。
でも、実際のロビソンは、子供の頃からずっと「お前は変だ」と言われていて、それが自閉症という病気だということも分かった。
しかし、「治療法がないから受け入れるしかない」と思っていた。
この病気のおかげで、音響エンジニアとか、自動車修理の才能があることも分かっていた。
しかし、社会の敗北者であることは耐えられない。
やっぱりそういうことに関しては「受け入れるしかないけど、耐えられない」と思っていたんですね。
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