普段、自分で考えるときはミドル。
人と話すとき、相手の話を聞かなくてはいけないときはローに落とす。
で、いよいよプレゼンの現場とか、好きな人に自分の想いを伝えたいときというのは、ミドル、ロー、トップの3つのギアを意識して切り替える。
これが戦闘思考力の核になる考え方です。
そのうえで、どんな価値観にも合わせられる応用力、強く頼れる自己が必要となるのです。
というわけで、前章では戦闘思考力の根本的な考え方をお伝えしましたが、こういう話をすると、よく「とにかく自分を責める人に対してちゃんと言い返すようになりたいから戦闘思考力を学びたい」とか、「気の利いたことを言いたいが、どうすればいいのかわからない。
戦闘思考力の鍛え方を教えてほしい」などと聞かれます。
確かにそうしたニーズに対して戦闘思考力が役に立つことは立ちます。
鍛えれば鍛えるほど、島田紳助さんや橋下徹大阪市長のように、切り返しや言い返しがうまくなります。
しかし、それは戦闘思考力の部分的なテクニックにすぎません。
前章でも説明したとおり、戦闘思考力とは、「言い返し能力」に「分析能力」「考察能力」「発想能力」などを加味したものです。
そもそも、相手を言い負かそうというのは、第1章、第2章で相手への共感を基本としたユニバーサル・トークを学んだ意味がありません。
ユニバーサル・トークあっての戦闘思考力ということを忘れないでください。
ですので、本書では戦闘思考力をユニバーサル・トークと掛け合わせた立体的で建設的な利用法を身につけてほしいと思っています。
そのうえで、戦闘思考力を使う際のルールを次のように明確にしておきたいと思います。
ルール(1) 勝たない
ルール(2)「勝つ」のではなく「答えをつくる」
ルール(3) 相手を負けさせない
ルール(4) 相手を笑わせる
ルール(5) 悩ませない
ルール(6) すっとさせる
それぞれのルールについて解説していきましょう。
▼たとえ勝っても、相手は許さないルール(1)勝たない
戦闘思考力の最初のルールは「勝たない」です。
相手を言い負かそうとしないことが目標です。
言い返したいという、その気持ちはよくわかります。
僕だって言い返したいことはしょっちゅうです。
しかし、ほとんどの場合、言い返しても状況は良くなりません。
実際、いくら上手に言い返せたとしても、その後うまくいった試しがないんです。
なぜか?
もし相手を言い負かしたら、その瞬間は自己満足するかもしれません。
でも言い負かされた相手は、ふつうは素直に「参りました」と認めることはできません。
逆にそれまでの議論の前提をひっくり返して無茶苦茶なことを言い出したり、恨み事をごちゃごちゃ言い出したりして、結局ろくなことになりません。
そもそも「勝とう」というのは、ユニバーサル・トークの「誰にでも通じる話し方・伝え方」とは、まったく別方向のベクトルです。
▼敵対していても協力をするルール(2)「勝つ」のではなく「答えをつくる」
会話で「勝たない」としたら、何を目指すべきなのでしょうか?
僕は「勝つ」のではなくて、「答えをつくる」と意識しています。
話している相手との間に「答え(共通の利益)をつくる」ようにするんです。
こう言うと、ビジネス用語で言うところの「ウィンウィン」だな、と思う人もいると思います。
が、似ているけどちょっと違います。
話し合いになったり、言い合いになったりしているということは、そこに何か問題があるということです。
だから、その問題を解決するため、お互いがもっと良いことを思いついて、「これだったら2人が協力できるよね」という「答えをつくる」のが最終目的です。
極端な例で言うと、夫婦ゲンカで「じゃあ離婚しようか」という結論になったときに、「どっちが悪いから別れるのか?」という言い合いをしてもしょうがないじゃないですか。
しかし、「これから2人でどういう関係をつくれたらお互いが快適か?」と切り替えられると、かなり楽になるし、2人が協力して考えられるんですね。
大の大人が2人、知力の限りを尽くして相手の悪いところを見つけて責め合うというのはいかがなものかと思います。
あんまり楽しくないし、あとで思い出してもうれしくないし、有益でもない。
せっかく、顔を突き合わせて頭を全力で回転させるんです。
どうすればお互いがさらに納得できる答えを見つけられるのか、ということを考えたほうが、ずっとましだと思います。
「答えをつくる」ことこそが、会話では大切で最終目標なんですよね。
頭の回転が速い人の話し方
――あなたの会話力が武器になるユニバーサル・トーク×戦闘思考力