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『ヘイトフル・エイト』でタランティーノと再タッグ!映画美術界巨匠・種田陽平に直撃 「みなさん、できれば丸の内ピカデリーで観てください」【前編】
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『ヘイトフル・エイト』でタランティーノと再タッグ!映画美術界巨匠・種田陽平に直撃 「みなさん、できれば丸の内ピカデリーで観てください」【前編】

2016-02-26 18:30

    クエンティン・タランティーノ監督の最新作『ヘイトフル・エイト』の公開を前に、日本を代表する映画美術の巨匠・種田陽平にインタビュー! 『キル・ビル Vol.1』(03)以来、二度目となったタラ兄貴との仕事を完璧に終えた種田氏が密室ミステリーの舞台裏と、タラ兄貴の想いを代弁! 「みなさん、できれば丸の内ピカデリーで観てください」と熱いメッセージを放出する巨匠・種田陽平インタビューは、前・後編で発砲予定! これを読めば、タランティーノ監督のことを、一度も会ってないのに"クエンティン!"と呼びたくなるはず!


    ――今作、密室がテーマですが、その部屋についてタランティーノ監督は、どうリクエストしましたか?

    クエンティンは脚本を自分で書いている。その脚本に空間の説明が細かく書いてあるんですよ。だから"まずは台本を読んでくれ"という感じで、打ち合わせでは改めてあまり細く説明はしないんですね。台本がバイブル。たとえば、「一行がミニーの紳士服飾店に着いた」とあると、「その服飾店は......」という説明が続く。だから「書いてあることをちゃんと押さえてくれたら、あとは自由だ」という感じ。阿吽の呼吸であって、面倒な注文はないですね。


    ――部屋のレイアウトも書いてありましたか?

    さすがにレイアウトは脚本には書いてないけれど(笑)。書いてあるのは、「ミニーの紳士服飾店には、バーカウンターがある」 「メスカルとテキーラとブランデーと3本くらいしかないけれど、それでもバーと言われれば一応バーの要素はある」 「テーブルがあって、レストランといってもシチューくらいしかないけど、一応シチューを出すからレストランとも言える」 「いろんな雑貨があって、ブーツ、手袋、そういう雑貨もいろいろ置いてある」 「手紙を預かったり、トレーディング・ポスト・センターにもなっていて、近所の人が取りに来る交易所的役割もある」みたいなことが書いてあって。「ただ、ひとつだけここにないものがあって、それは、紳士用服飾品だ」と。紳士服飾店なのにね(笑)。

    ――面白いですね(笑)

    「haberdashery(ハーバーダシュリー)」っていうのは、高級紳士洋品店に使う名前なんです。ニューヨークなどの都市に行くと、「haberdashery」って立派な紳士服店、テーラーみたいな店があります。でも、この映画では山の中のロッジで、看板に「haberdashery」って書いてあるが、中へ入ると紳士服がないっていうのがひねりなわけです(笑)。ここには何でもある、紳士服飾以外はね、っていう。


    ――そのこだわりが、タランティーノ作品の醍醐味でもありますね。

    それと、70ミリ(映画)だということですね。台本の1ページ目を開くと、70ミリの大画面って書いてある。密室劇なのに70ミリ。クエンティン的なひねりが入っているんだけど、狙いがちゃんとあるんですよ。それは、映画を観てもらうと感じてもらえる。密室なのに飽きることなく最後まで観られるのは、名撮影監督によって空間が多様に捉えられた70ミリ撮影ならでは、なんです。そして、70ミリで撮って70ミリで上映するという狙いもあるんですね。アメリカではLAだけでも70ミリ上映できる映画館が5~6館あって、パリやロンドンなどヨーロッパにもそんな映画館が残っている。日本はかつて映画先進国だったけれど、今は70ミリ上映ができる映画館は一館も残っていない。だから、せめて、スクリーンの大きな丸の内ピカデリーで観てもらいたい。

    ――70ミリ上映の、主な狙いは何だったのでしょうか?

    それこそが監督のこだわりで、「昔はロードショースタイルで映画をやっていて、シネコンスタイルなんてなかった」と。「今はロードショースタイルがほとんどなくなってしまったけれども、俺たちがロードショーの持っていたワクワク感を復活させよう」と。

    20年くらい前までは、東京はニューヨークとパリと並び、どんな映画でも観られる世界の三大映画シティの一つだった。いや、ニューヨークやパリよりも、東京にも大劇場もあったし、ミニシアターの館数も多かった。今はもう一気に多様性を失ってしまった。ションボリですよ(笑)。

    それは世界的な傾向で、だから、昔のワクワクした映画の感触みたいなものを大事にしよう、復活させたいっていうのが、クエンティンの強い思いなわけです。ですから、タランティーノ映画のその雰囲気を楽しむためには、声を大にしてもう一回言うと、「みなさん、できれば丸の内ピカデリーで観てください」。丸の内ピカデリーは昔の劇場のスタイルを保ってますよね。天井にもシャンデリアがあったりして。あそこでこの映画を観ると、クエンティンがこの映画で狙ったことを楽しんでもらえると思いますから。


    映画『ヘイトフル・エイト』は、2016年2月27日(土)より、全国ロードショー!

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    ■参照リンク
    『ヘイトフル・エイト』公式サイト
    gaga.ne.jp/hateful8/

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