マンションやアパートの不動産管理には、大きな目的があります。それは建物全体の資産価値の維持、向上を図ることです。オーナーと居住者それぞれの目の付け所は異なりますが、質の高い管理で「住まい心地」が良ければ、居住者がずっと住み続けることにもつながり、良いコミュニティも生まれます。

管理会社の実力を見る4つのポイント

 管理は、建物の点検やメンテナンスだけではありません。オーナー目線から見て管理会社の実力の差がでるのは、次の4つです。

1. 入居者対応(家賃の回収や督促、クレーム対応など)
2. 客付け対応(広告活動、内見対応など)
3. 建物設備対応(メンテナンス、巡回、定期点検など)
4. オーナー対応(募集条件の提案、報告、連絡など)

 これらを仮にオーナー自身でやるとなると、経験がないため戸惑います。特に神経を使うのは、最近増えているクレーム処理でしょう。居住者が10人住んでいれば、10通りのライフスタイルがあり、それぞれに気を配る必要があります。

 たとえば上の階で子どもの走る音がする、ステレオの音がうるさいといった生活騒音。なかなかクレームは入れづらいものです。しかし放っておくと大きな問題を招くことも予想され、オーナー自身が管理をしている場合、神経を使います。通常は管理を任せている会社がクレームを受け取った際に立ち会ったり、掲示板に注意書きを貼ったりしますので安心です。

 マンションの共用設備には、電気、消防、給排水、エレベーターなどがあります。これらは専門業者による定期的な法定点検と管理会社による点検が必要ですが、点検業者の社歴や実績なども見て、より経験値の高い会社を見極めたい点です。

管理会社の差別化戦略

 マンション管理会社は、上位50社で全体の7割を占めるなど寡占化が進んでいます。このため最近では、居住者対応などを積極的に行うなど差別化に取り組んでいます。

 管理会社は共用部の管理が主な仕事なため、専有部に関して立ち入らないのが原則です。しかし、「浴室のシャワーヘッドが壊れたが、メーカーが分からない」「ベランダの網戸が破れた」といった細かな要望に対しても、管理員を中心に対応するようになってきました。インターネットで、マンション住民を対象に暮らしや集合生活のコツを案内する一方、物品の販売から掃除のサービス案内まで行うポータルサイトを立ち上げている大手不動産管理会社もあります。こうした居住者目線のノウハウを持っているかも確かめたい項目です。

入居募集や空室対策がカギ

 管理会社は、管理している物件が多いためマニュアルなど手順を標準化しています。このため、作業はほとんど日々のルーティンワークと言えます。

 しかし、オーナーにとって関心の高い、入居募集や空室対策については、ルーティンでは済まされません。空室対策のキャンペーンを提案してくれるのか、内見者を増やすコツがあるのか、ちょっとしたことでもどれだけ独自性を出しているかどうかがチェックポイントです。

 見落とされがちなのがオーナーへの連絡、報告です。月次報告などはきちんとしていても、たとえば退去者が出たとして、その際どう行動しているかを見るだけでも管理会社の力量が分かります。

 退去者からの連絡を受け「はい、承りました」としているのか、その際に一言「差し支えなければ、退去の理由をお願いします」とヒアリングをしているのかどうか。前者だと、1枚の月次報告で済ませるかもしれません。後者だと、ヒアリングしたペーパーを、オーナーに手渡してくれるかもしれません。

 オーナーにとって手離れのいい不動産経営は理想ですが、マーケットは常に動いています。物件に付加価値をつけ、入居希望者のニーズを把握し、素早い行動を取るためにも、パートナーとなる不動産管理会社の役割は大きいのです。