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 創作小説『不落の重装戦術家』の購読、いつもありがとうございます。


 今回は、先月2月の更新分が月末に近かったこと、また、今月のチャンネル入会では先月分の投稿小説が閲覧できない仕様であることを踏まえまして、現在進行中の【第3話1~3章】をまとめた記事を投稿いたします。

 この記事は、3月現在までチャンネル入会を継続されている方、または今月3月中にチャンネル入会された方ならば、最後までお読みいただけます。


 不落に舞い込む新たな事件。
 轟く雷鳴、脳裏をかすめる過去。


 第3話1~3章、ぜひお楽しみください!









【1章】
 
「……合同調査?」

 思わず口をついて出た言葉だった。私の発したそれは、おそらく多分に苛立ちを伴ったものであったことだろう。話を遮られたユーリィ団長は、溜息交じりに目を伏せる。

 こんな夜中に団長執務室へ呼び出されるのは久しぶりだった。聖騎士団・不落として任務を帯びる際は、団長もしくはその使いの者から唐突に、証拠の残らぬ形で任務を通達されるのが常だ。だが今回は違った。であるならば、いつにも増してどうせ碌でもない話をされるだろうとタカを括ってはいたのだが、たまにはそんな予想を良い意味で裏切って欲しいとも思う。

 照明魔法が煌々と部屋を照らす中、ユーリィ団長は無言のまま、机上に広げた書簡を私に突き出してきた。それを手に目を通す視界の端には、大きく椅子にもたれ、肘掛けを指先で小さく叩く団長の姿があった。


 ──北方古遺跡群における魔物の目撃報告。
 ──対象の正体特定および排除、ならびに出現要因の調査。
 ──帝国諸司は調査員を選抜、編成し、合同調査隊として現地へ派遣。
 ──当該区域は北方ハーピィ自治領との緩衝地帯につき、同族も参加予定。
 ──国交回復の端緒たり得るため、両勢力の利害を損なう行動なきよう厳守。
 ──本件は極秘扱いとし、各調査員の相互連絡は現地に限り許可。


「……どう思う?」

 天井を仰ぎ見たまま漏れ出る団長の声は、苛立ちを通り越し皮肉めいた呆れが滲んでいた。

 我々帝国聖騎士団はいま、高官ゴルトマンの救出任務に続く、外交部エルドレイの汚職事件を極秘裏に追っている。つい先日も、エルドレイの側近トマーズが率いる実働部隊から、露骨な捜査妨害と介入攻勢を受けたばかりだ。

 そんな折に、この合同調査。エルドレイの介入を疑いたくもなる、というわけだ。加えて今回は、過去の降魔戦役により国交が途絶えている北方ハーピィ自治領も出張ってくるという。不十分な規模での調査員派遣は両者の関係に悪影響となりかねない。なるほど確かに、外交部のエルドレイが裏で糸を引けば、この状況を作り出せる可能性はある。

 だが、疑問が浮かばないわけではない。関係断絶状態にあるハーピィ連中を動かすほどの影響力が、エルドレイにあるのか。私はそのまま団長に問うた。

「そこなんだよなァ。バレバレの介入なんだが規模がデカ過ぎる……そこでだ」

 
 
 日が昇りつつあった。
 そう判断できるだけの明度が、森の中にも滲みはじめている。

 だが樹木の隙間から覗く空は、夜の黒を薄めたような灰色に過ぎなかった。雨こそ落ちてはいないものの、相変わらず稲光は執拗に黒雲を裂き、呻るような雷音が低く駆け巡っている。

 視線を戻した先に、森の切れ目があった。大きく一呼吸を済ませ、最後の幹を蹴り越える。視界が開けた瞬間、一面に広がる曇天と、虚空に途切れる地続き。どうやら崖の上に出たらしい。足元に這わせていた照明魔法球を掌に呼び寄せ、軽く撫でると、光は従順に霧散した。

 視線を右へ送る。密林を大きく迂回していた街道が、細く遠方へと伸びているのが見えた。その遥か先は大山脈、北方ハーピィ自治領へと続いている。

 正面には、古遺跡群。山風に抉られた盆地の底、斜めに突き出す岩塔群が不規則に並び、他方で、規則めいた配置の石塊と穿たれた洞窟が、悠久の時を刻んでいる。人の意志と自然の浸食が奇妙に混じり合った情景。かつて紅に染まったこの場所には、今もなお物言わぬ大穴が口を開けている。

 見上げた空は、黒炭と泥を掻き混ぜたような、いやに輪郭のはっきりとした雲に覆われていた。


 ──正体不明の魔物、か。
 不意に、合同調査の通達文が脳裏をかすめる。

 対象の特定と排除、出現要因の究明。書面に並ぶ文言はじつに簡潔だったが、そう易々と事が進む任務など滅多にあるものではない。いっそ、あの大穴から再び魔族が湧き出したとでも言うのであれば、話が分かりやすくて助かるのにとも思う。

 だが現実は往々にして、そんな楽観を許さない。

 大穴から少し離れた位置、緊張感もなく陣を張っている合同調査先着隊が、それを物語っていた。そもそもが急ごしらえの各諸司選抜隊ゆえ、その質を望むべくもないのは飲み込むにしても、警戒線もなければ巡回兵も見当たらないような陣立てが、臨戦区域に臨む構えであるとは到底思えなかった。

 単なる油断か、それとも──。

 確証などあるはずもない微かな疑念が、胸の中で小さく揺れた。……私の悪い癖だ。経験則とは言え、理に適わぬ何かがあるとまず疑いの目を向けてしまう。そう自らを省みながらも次の瞬間にはすでに、あの陣にどう探りを入れるか思考を巡らす自分がいた。


 断崖を下るのに、さほど時間は掛からなかった。空を舞う翼などなくとも、各種防護術式を巡らせ、崖縁から一歩踏み出せば事足りる。この程度の落差は問題にならない。着地の瞬間に走った閃光と短い破砕音も、頭上を裂く雷鳴に呑まれて消えた。陣営が気付いた様子はない。

 その確認を終えると同時に、気配を沈める。魔力の揺らぎを削ぎ落とし、陣の外縁へと歩を進めた。


 陣は緩やかな斜面に粗く広がっていた。正面に大穴を捉え距離は数百歩、背後には低い岩壁。見通しは悪くないが遮蔽物も乏しい。ハーピィとの合流を最優先とするなら、これ以上なく目立つ位置取りだ。

 天幕は整然とは言い難い三角配置、その中央に焚火が一つ。物資は木箱に積まれたままで、防柵も簡素。戦闘を想定した布陣には見えない。

 兵の動きも緩慢だった。焚火の火を意味もなく掻き回す者。武具の手入れをするでもなく弄ぶ者。見張りに立ちながらひたすら空を見上げるだけの者……いずれも帝国支給の軽装鎧を着込んではいるが、戦場を知る者の振る舞いではない。戦地というよりは、野営の延長に近い。

 そこに一人だけ、視線に落ち着きのない兵がいた。焚火から少し外れた位置で槍を握り、柄を抱くようにして周囲を警戒している。石突きではなく穂先を地面に刺しているあたり、練度は相当低いと見えた。

 その男の視界から外れるようにしながら、音を殺して近付く。そして、足元の砂利を捻じるように踏み抜いた。微かな音。雷鳴に紛れる程度の、しかし至近距離であれば確実に届く大きさ。思惑通り、その男だけが反応を示した。両肩が跳ね、一拍おいて頭がこちらを向く。

 数歩、間合いを詰める。
 私を視界に収めた男は、分かりやすくその顔色を変えた。

「ふ、不落……! 様、でしたか。お早いお着きで……!」

 男の声が裏返り、二度、三度と背後を振り向く前に、私は短く返す。

「そうか?」
「え、えぇ……その、不落様は、少し遅れると……!」
「誰から聞いた?」
 

 
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 七年を戦い、五年の復興を経てなお、手にした勝利と癒えぬ傷跡が共存する『帝国』。

 魔族侵略の標的とされつつも、複数国家の連携結託が間に合った数少ない連合体である『帝国』は、だが急造ゆえに名を持つこともできぬまま、属した国々の思惑と解体、責任転嫁と再統合を経て、その枠組みだけが今も辛うじて残されていた。

 その名も無き『帝国』に明日を求め今日を生きる者たちの中に、エルフと魔族の血を併せ持つ一人の女がいる。

 所属、帝国聖騎士団。
 秘匿名、不落。

 勝ち取ったはずの平和の中で、
 今なお終わらぬ戦いと奇妙な日常を送る、
 『不落』たる物語──。



 

 
●第1話 静かな日

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●第2話 楽しい休日

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●第3話 風に散らせぬもの

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3章 → https://ch.nicovideo.jp/game-yo-kai/blomaga/ar2228679
4章 → 執筆中……。






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ゲーム妖怪ジーコの、創作小説とかブロマガとか。

中学生の頃から脳が擦り切れるほど妄想し続け、今もこの世で一番ステキキャラと自負するオリジナルキャラ『不落の重装戦術家』を主人公とした創作小説や、お知らせ・雑記などを不定期更新しています。

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ゲーム妖怪ジーコ

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