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  • 『不落の重装戦術家』 静かな日【5】
    『不落の重装戦術家』 静かな日【5】

       私の知らぬ間に急遽編成されたという帝国聖騎士隊。耳慣れぬ声をした指揮官の弩弓斉射号令。『不落』たる私を前に遅滞なく命令を遂行する弩弓兵。殺意を乗せて飛来する矢弾の群れ。  なんとも不可思議な光景だ。今この瞬間、世のすべてを敵に回した気さえする。  一方ゴルトマン陣営は、部下一同が身体を盾にゴルトマンへの射線を遮ろうとしていた。この状況においてそれしか防御策を持ち合わせていないことに対しては言いたいことの一つや二つあるのだが、命を投げ出すことに躊躇いなどないその姿には感心する。おかげで防護魔法の展開も容易に済むというものだ、防衛対象は小さく纏まっている方が都合が良い。  私の左前腕部に固定装備されている小型の丸盾は、このような緊急時にその性能を如何なく発揮する。盾に魔力を流し込むとその外周から噴き出すように力場が展開され、即席の防護壁となるのだ。魔力流入量によって防御範囲や強度の調整も利く優れものなのだが、過去この用法を兵装管理課に提案したところ「扱える者などいるか」と一蹴されたことがある。  ともかく、撃ち放たれた矢弾はすべて弾き落とすに至ったわけだが、こ...

    2025-02-27

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  • 『不落の重装戦術家』 静かな日【4】
    『不落の重装戦術家』 静かな日【4】

       決して表情に出すまいと平静を装うに努めたこの数秒が、私には途方もない時間に感じられた。  今回の任務は、何者かに拉致されたゴードン・ゴルトマンの救出と実行犯の殲滅だったはずだ。しかし今、その頭目らしき男がゴルトマンを名乗り、確かにその顔は過去の記憶と一致している。面倒なことになりそうだと思った。とりあえずここにいる全員を死なない程度に痛めつけてから考えるのも手だろうか? ……そんなことを考えていると、ゴルトマンを自称する男が口を開いた。 「安心してくれたまえ、我々は敵ではない。まだ味方でもないがね。少なくとも君に危害を加えるつもりはない、まずはそれを認識してもらえれば結構だ」  まっすぐな眼だった。匪賊奸賊といった類の下卑たものとはまるで違う。だがそれだけで腹の内すべてを探れるはずもない、裏表のある人間なぞいくらでも見てきた。現に私は、ここに至る道中で不意打ちを仕掛けられているのだ。思わず振り向いた視線の先では、案内役の男がまるで意に介さぬとばかりに肩をすくめていた。 「その男は言わば試験官だ、交渉人を見定めるためのな。他に質問は?」  視線一つを質問と捉える判断...

    2025-01-24

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