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文◎山田英司(フルコム主宰、武術評論家)
巌流島、面白かったですね。
特に今回は、打撃系の選手集めに協力しましたが、初めての試みだし、何となく打撃に不利はルールなので、どこの団体も二の足を踏みましたね。そんな中で仲のいいFSA拳真館と士心館に頼みこんで、何とか間に合わせました。
この団体はともに勇気ある決断をしてくれましたが、選手のタイプは対象的なんですね。FSAは押忍の世界で、選手も真面目で、昔の『空手バカ一代』の気風がまだ生きている。羽山館長に出ろ!と言われたら、内田、佐藤の両エースはどんなにコンディションが悪くとも、どんなに過激なルールでも出ていきます。二人ともバンテージのみのケイオスルールにも出場したし、素手、目つき、金的ありルールのアブソリュートにも出場し、活躍してました。
今回も佐藤選手は体調不良で10キロも体重が減り、メシも食えない。腕も上がらない状態で闘っていました。巌流島より先に病院に行った方がいい、と言っときましたが。当然、試合は負けましたが、最後まで立っていたのは立派。
そんな「押忍!」の世界のFSAに対し、士心館はあの、乱暴者が集う新空手の中でも、最も乱暴者が集う団体。なんせ、林館長は喧嘩術の達人なので、「弟子も外での喧嘩の方が、空手より好き」という人ばかり。ま、簡単に言うとFSA対士心館は、学級委員長とヤンキーとの戦いみたいなもんですね。
実際、外での喧嘩に慣れてる士心館勢は今回、実力を発揮しましたね。ルールのある新空手であまり勝てなかった前田選手や鈴木選手らが、いきなり強さを発揮しました。
どうも、巌流島は喧嘩に近いため、打撃技術への要求も変わってくるようですね。
簡単に言えば、「押されない体力」と、「前に出ながら打撃を出す」技術が必要になりそうです。当然、前に出れば組技系の人は組んできたりするわけですが、この間合いで打撃をだすには、これまでのようなコンビネーション中心の打撃技術ではダメかもしれませんね。
そのためにはFSAの内田選手の騎馬立ち、小西選手の前屈立ちのように、伝統の空手の立ち方が必要になってきそうです。
FSAは結果が出せませんでしたが、試みとしては面白い。もう少し研究する時間があれば、最も空手らしい戦いが蘇るかもしれません。特に、内田選手には今後の活躍に期待したいですね。