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中国を注意深くけん制した 〔PHOTO〕gettyimages
日米首脳会談の共同声明がようやく発表された。主役である安倍晋三首相とオバマ米大統領の会談が終わった後、脇役にすぎない両国の閣僚が環太平洋連携協定(TPP)をめぐって夜を徹した交渉を続けた末、声明発表にこぎつけるという異例の展開である。
TPP交渉決着へ一歩前進
これを見ただけでも、両国がいかにTPPをまとめたいかがよく分かる。首脳会談の「陰の主役」である中国をけん制するために、日米としては、なんとしても強固な絆でアジア太平洋地域の連帯感をアピールしたかったのだ。
これまで何度も書いてきたように(たとえば、2013年8月23日公開コラム)、TPPは貿易自由化と中国をにらんだ安保防衛という2つの側面がある。ロシアによるクリミア侵攻という「あからさまな力による現状変更」の試みが中国を一層、刺激しかねない局面で、日米関係を軸にしたTPPは一段と重要になっていた。
結末は協議継続という形になったが、声明は「TPPに関する2国間の重要な課題について前進する道筋を特定した」と述べている。一歩前進であるのは間違いない。最終合意までには曲折があるだろうが、これで基本路線ははっきりした。日米両国はなんとしても交渉をまとめる方向だ。
声明は尖閣諸島の防衛について、あらためて大統領によるコミットメントを明確にした。さらに日本の集団的自衛権の行使をめぐる検討についても「歓迎し支持する」と書き込んだ。これらはもちろん、日本にとって大きな成果である。
声明は、中国が昨年11月に設定した防空識別圏について「中国」という国名の名指しを注意深く避けながら「日米両国は、事前に調整することなく東シナ海における防空識別区の設定を表明するといった、東シナ海及び南シナ海において緊張を高めている最近の行動に対する強い懸念を共有する」と記した。
これらの記述には、米国の中国に対する警戒感がにじみ出ている。「日米両国は…中国との間で生産的かつ建設的な関係を築くことへの両国の関心を再確認する」という原則を踏まえつつも、しっかり中国をけん制している。
日米が力を入れる東南アジアほかとの関係強化
その点は、アジア太平洋の国々に言及した部分に大きなスペースが割かれたことからも読み取れる。声明本文はこう書いている。
<日米両国は、地域の安全と繁栄にとっての東南アジア諸国連合(ASEAN)の一体性及び中心性の重要性を認識し、外交上、経済上及び安全保障上のASEANとの協力を深化することに対するコミットメントを新たにする。
(中略)この文脈において、日米両国は、東アジア首脳会議(EAS)がこの地域における政治及び安全保障面の主要なフォーラムであると認識している。>
ここにある東アジア首脳会議(EAS)という枠組みが、まず1点だ。EASとは東南アジア諸国連合(ASEAN)10ヵ国に日米韓、それに中国、インド、ロシアなどを加えた18ヵ国から成る首脳間の地域的枠組みである。加えて、次の部分では具体的に韓国、豪州、インドという3つの国が挙げられた。
<アジア太平洋及び世界における平和と経済的な繁栄を推進するという共有された目標を達成するため、日米両国は、韓国、豪州、インドを含む志を同じくするパートナーとの三か国間協力を強化している。>
これだけ読むと、単に「外交、経済、安全保障の側面でEASと韓国、豪州、インドとの関係を強化するのか」と軽く受け止めてしまいかねない。
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