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長谷川幸洋コラム第50回 集団的自衛権の行使容認を「戦争に巻き込まれる」と反対している場合ではない
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長谷川幸洋コラム第50回 集団的自衛権の行使容認を「戦争に巻き込まれる」と反対している場合ではない

2014-05-29 20:00
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    ウォッカで乾杯する習近平国家主席とプーチン大統領。〔PHOTO〕gettyimages

    中国とロシアの連携が急速に進んでいる。中国もロシアも「力による現状変更」を実践している国際秩序への挑戦者だ。両国はともに国連安全保障理事会で拒否権を持つ常任理事国でもある。ということは、両国が国際法に違反しても国連は制裁できない。事実上、国連は無力である。

    鮮明になった中国の野心

    この両国が連携し、これから事実上の同盟関係にまで発展するとなると、世界情勢への影響は計り知れない。ロシアによるクリミア侵攻からわずか2か月で世界情勢は猛烈な勢いで急展開している。いま日本が立っている地点は、そういう局面だ。

    中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は5月20日、上海で会談し「他国への内政干渉や一方的な制裁に反対する」との内容の共同声明を出した。戦勝70周年行事を合同で開催することでも合意した。これは「ドイツのファシズムと日本の軍国主義」に対する両国の勝利を祝う趣旨であり、当然ながら、とくに中国は日本を念頭に置いている。

    続いて同夜には、同じ上海で開かれたアジア相互協力信頼醸成会議(CICA)で習主席が基調講演し「アジアの安全保障はアジアの人々が守る」という趣旨の「新しいアジア安全観」を唱えた。これは「中国主導でアジア安保秩序を構築していく」という宣言だ。言い換えれば「米国の好き勝手にはさせないぞ」という話である。

    アジア相互協力信頼醸成会議(CICA)とは聞き慣れないが、カザフスタンのナザルバエフ大統領が1992年の国連総会で創設を提唱した。99年に15ヵ国で発足し、現在は中ロはじめパキスタン、イラン、トルコ、韓国、イスラエルなど26カ国が加盟している。

    日本や米国はオブザーバーの立場だ。中国の脅威にさらされているベトナムは加盟しているが、フィリピンやマレーシア、インドネシア、それからロシアと対立しているウクライナもオブザーバーにとどまっている。報道によれば、ベトナムの国家副主席は会議で中国の名指しを避けながらも、南シナ海での衝突事件を念頭に中国をけん制する発言をした、という。

    中国は首脳会談でロシアと接近しただけでなく、プーチン大統領も出席した国際会議で中国主導の秩序構築を目指す考えを高らかに宣言した。いまや中国の野心は鮮明である。

    アメリカは中国に弱腰

    習主席は昨年6月、オバマ米大統領との会談で「太平洋は米中両国を受け入れるのに十分に広い」と訴えて事実上、米中による太平洋の縄張り分割を提案した。オバマはこのとき「日本が米国の同盟国であるのを忘れるな」と反撃したが、その5ヵ月後に中国が一方的に防空識別圏を設定すると、米国は識別圏の撤回を求めなかった。

    それどころか、翌月には訪中したバイデン副大統領が「米国と中国は世界でもっとも重要な二国間関係である」として「新しい形の(米中)大国関係」を呼びかけた。この「新型大国関係」という用語と発想は、もともと中国が提唱したものだ。

    中国に対する米国の宥和的姿勢が見え始めていたところへ、ロシアがクリミア半島に侵攻した。欧米は経済制裁をしたが、それ以上の手段は手詰まりになって、クリミアは実質的にプーチンの手中に落ちてしまった。これをみた中国が南シナ海で大胆な行動に出る。ベトナムの巡視船への体当たりである。

    米国は中国の行動を口で批判はしたが、それ以上、軍事はもとより効果的な経済制裁オプションをとる姿勢は見えない。そういう中で、今回のプーチンと習近平の首脳会談、そしてCICAでの習演説という流れである。

    私は5月18日放送の「たかじんのそこまで言って委員会」で「日本にとって悪夢のシナリオは中国とロシアが手を握ることだ」と話したばかりだ。だが、1週間も立たないうちに、悪夢が現実になって動き出している。予兆はあった。

    プーチンは3月18日の演説で、クリミア問題でロシアの立場に理解を示した中国に言及し「感謝している」と述べていた。中国はこれに呼応するように、同月27日の国連総会でクリミアの住民投票無効を指摘した総会決議を棄権した(4月4日公開コラム)。

    新疆ウィグル自治区の独立問題を抱える中国は、たしかにクリミア問題で微妙な立場にあるが、基本的には米欧と対立するロシアと連携しようとしているのは明白だ。中国はこれからロシアとの2国間関係を強め、CICAのような日米欧抜きのフォーラムも使って、自前のアジア秩序構築に全力を傾けるだろう。「新しい勢力図」を早く描こうとするのだ。 
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