『セッション』は素晴らしい映画だった!
私の理論だけで言えば
なのだが
それでも流血しながらドラムを叩き続けるこの映画に
私はたいそう興奮した!
名作『セッション』をご覧になった方は
この映画をどういうジャンルに分類しただろうか?
人間ドラマ?
音楽映画?
舞台裏映画?
ジャンルに分けたがるのは日本人の悪い癖だが
私はこの映画を
「鼻血映画」に分類した!
観客が息を止めて奥歯を噛みしめ続ける映画を
私は「鼻血映画」と呼んでいる!
力み過ぎてうっかりしたら鼻から出血するからだ!
「デビッド・クローネンバーグ」の
『オーバー・ザ・トップ』!
それら「鼻血映画」の金字塔と
ついに並ぶ映画が現れた!
それが前述の『セッション』である!
是非『セッション』を見て
あなたも心地よい鼻出血を体験していただきたい!
そうした私だけのカテゴリー
言わば「ヒロゴリー」の中には
中国人と日本人の区別がついていない
「アチャニーズ」!
糸で吊ったゴム人形をぴらぴら飛ばす
「ワイヤー・バット」!
製作意図不明で
”この映画を作った事には
何か別の訳(Some Reasons)がある”
と思われる
「SR映画」!
などなど様々な物があり
それらは私の「映画日記」の中だけで使用されている!
そんな「ヒロゴリー」の中にあって
私に多大なる影響を与える映画ジャンルが
「そらギロ」だ!
その昔
中国が清と呼ばれていた頃!
皇帝に仕えた秘密の暗殺集団があったという!
「血滴子」と呼ばれるその暗殺集団は
子供の頃から宮中にて
殺人だけを教えられて育ったのだと言う!
そんな彼らだけが使えたという伝説の殺人兵器!
それが「そらギロ」の由来となる
「空飛ぶギロチン」だ!
ここまでは映画の話ではなく
史実だと言うから驚きである!
とあるイギリス産のドキュメントでは
実際に残っているこの「空飛ぶギロチン」を
一体どのようにして使ったのか?
という検証を行ったのだが
鎖のついた帽子のようなその武器を
相手の頭に投げてかぶせる事は結局できずに終わった!
つまり「空飛ぶギロチン」は
”実際は使われなかった”
か
”よほどの達人だけが使えた”
のどちらかである!
なんとも空飛ぶロマンだ!
そんな謎多き武器だからこそ
香港や台湾には
「そらギロ」映画がゴミほど存在している!
つい三年前にも
『フライング・ギロチン』なる映画が
日本でも公開された!
CGを駆使して「そらギロ」が飛び回るのだが
そうなるとなんとも情緒のない作品となり
私は評価点として「1ギロ」しか付けなかった!
現在何かの間違いで
日本版Blue-rayが発売されている
1974年製作の『空飛ぶギロチン』は
「そらギロ」映画の先駆けと称された
言うなれば「初ギロ」だ!
「ブルース・リー」の死去から
わずか1年後の香港映画界と言えば
とにかく「ブルース・リー」っぽい物を作れば
何でも売れるだろうと本気で思われていた!
そのためにこの記念すべき「初ギロ」は
非常に志の低い映画となっており
首飛ぶ思いで鑑賞する事ができない!
私の評価点は「7ギロ」だ!
しかしその2年後に奇跡が起こる!
「倉田保昭」氏の影響により
私までも「ジミーさん」と呼んでいる
「ジミー・ウォング」による歴史的名作
世界の首をはねたのだ!
この映画に登場する奇怪な武道会こそが
後にカプコンが生み出した傑作ゲーム
「ストリート・ファイター」の原点である!
女子カンフー・ファイター!
腕の伸びるインド人!
笠で顔を隠した侍!
ゲームに登場するこれらのキャラクターは
全てこの映画の武道会で対決するあんぽんたん達だ!
「ジミーさん」はこの映画での演技を通して
我々に素晴らしい事を教えてくれる!
「空飛ぶギロチンを最も魅力的に見せるためには
空飛ぶギロチンを必要以上に怖がる事だ!」
へろんへろんに飛んで来るギロチン!
それから過剰に逃げ回る「ジミーさん」!
時折上に糸が見えてしまうギロチン!
なのに逃げられず
ちょいと斬られてみせる「ジミーさん」!
そこからの挫折!
修行!
ひらめき!
やっぱり勝利!
いつもならば”ひろいだ”と表現するところだが
私はこの映画を心の底から”ギロいだ”!
これぞ「そらギロ」映画の最高峰である!
私はこの作品に「280ギロ」を与えた!
誰が「10ギロ満点」と言ったか!
さて!
こんな「そらギロ」映画の中に
実に奇妙な台湾産作品が存在する!
なんとそのタイトルは
『盲(めくら)坊主対空飛ぶギロチン』だ!
あまりに差別的なタイトルゆえに
この作品は後に
『座頭市対空飛ぶギロチン』
と改題されている!
「座頭市」と言えば「勝新太郎」氏が
世界的に有名にしたキャラクターだ!
”世界的に”と言える証拠として
「勝新太郎」演じる「座頭市」が
「ジミーさん」と対決する
『新座頭市 破れ!唐人剣』がある!
この作品はまたの名を
『座頭市対片腕必殺剣』と呼ばれ
当時の日本を代表するキャラクターと
香港を代表する剣術ヒーローが
直接対決をする映画として注目された!
そのため日本版では「座頭市」が勝利するが
香港版では「片腕必殺剣」が勝利するという
ダブル・エンディングを持っている!
勝者がどちらにせよ
盲人vs片腕という前代未聞の格闘は
映画史に残るレジェンド・バウトだ!
タイガー・マスク×ダイナマイト・キッド!
タイガー・マスク×小林邦昭!
そうなれば
ダイナマイト・キッド×小林邦昭は
必然的な試合カードだ!
「座頭市」と「空飛ぶギロチン」が闘うのは
当然の流れと言っていいだろう!
『座頭市対空飛ぶギロチン』は
生まれるべくして生まれた映画だ!
ところが!
当時のポスター等を見る限り
どう見ても「勝新太郎」氏が
出演しているように見えるのだが
「勝新太郎」氏のプロフィールには
そんな映画は入っていない!
私は先日この「そらギロ」映画最後の秘宝と呼ばれる
問題の『座頭市対空飛ぶギロチン』を
遂に見る事ができた!
オープニングクレジットには
しっかりと「勝新太郎」の文字が出るのだが
よく見るとその横に
「(ソックリショー)」という奇妙な表記がある!
なんだ?
そして「座頭市」を演じている俳優は
「勝新太郎」のように見えて
「勝新太郎」ではない!
なんだかもやーっと別人だ!
私は猛烈に興味を抱き
インターネットでこの作品情報を検索してみた!
そこにはやはり
「主演:勝新太郎」
と書いてあった!
いや!
書いてなかった!
よく見たら!
「勝新太郎」ではなく!
「勝利太郎」だった!
もう一度書こう!
「勝新太郎」ではなく「勝利太郎」だった!
まだわからない人は何度も繰り返し読んでいただきたい!
「勝利太郎」!
どう読むのだろう?
「かつ・としたろう」だろうか?
はたまた
「しょうり・たろう」だろうか?
もしも「しょうり・たろう」であるならば
「勝新太郎」よりもむしろ
「東海林太郎」に近い名前であるからして
訴えるポイントは「0ギロ」だ!
更に調べてみるとこの人物!
「酒巻輝男(さかまき・てるお)」という
「勝新太郎」のものまね芸人だったようだ!
しかしそれをいい事に
なんと10本近い台湾映画に
「勝利太郎」として出演していたのだ!
実を言うと私はこの「勝利太郎」に見覚えがあった!
ある時代を関西で過ごした人は
みんな記憶にあるのではないだろうか?
サンテレビという兵庫県のローカル局で
しばしば流れたフィルム撮りのCM
このCMの中で
唐突に宴会場で仕込杖を抜く「座頭市」が現れ
「座頭市のそっくりさんの迫真の演技も楽しめます」
という心のこもっていない女性ナレーションが流れる!
これだ!
私が「山形」から「大阪」に出てきて
「なんだこれ?」
と首をひねった「ホテル淡州」のCM!
この人物が誰あろう「勝利太郎」だったのだ!
彼は余興で雇われているのではなく
何を隠そう「ホテル淡州」の経営者になったのである!
この「勝利太郎」なる人物が
今も存命なのかどうかは私は知らない!
しかしこの日本に
あの恐怖のよろよろ兵器「空飛ぶギロチン」と
対等に戦った男がいた事は
国の誇りであると言っていいだろう!
私も最強格闘技「ひろん道」の総師範として
いつかは「そらギロ」から逃げ回ってみたい!
男なら「そらギロ」と闘うのは夢のはずだ!
そうだ!
私の生み出した架空のがっかりヒーロー
いつの日にか「空飛ぶギロチン」と戦わせてみよう!
タイトルは避けようもなく
『エル・シュリケン対空飛ぶギロチン』だ!
そうなればこの私も映画監督として
「そらギロ」映画の歴史の中に
その名が刻まれるはずだ!
「40ギロ」ぐらいは出せる自信がある!
あぁギロいだギロいだ!