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早田英志のスーパー人生論 第三回~ゲリラの対処法~
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早田英志のスーパー人生論 第三回~ゲリラの対処法~

2013-10-18 06:02

    <ゲリラの対処法>

    このサブジェクトは一般の人にはあまり縁がなさそうにみえるが、人間の運命は予測できない、何時あなたの会社がアフリカやイスラム教国にあなたを派遣するかわからない。今やゲリラの存在する国は少なくなってきたが、アルカイダや反政府ゲリラでなくとも身代金目当ての山賊、強盗まがいの誘拐団がはびこっている国は多い。
    アラブの戦時国ではニュースメデイアの報道員が事件に巻き込まれるケースが後を絶たないが、彼らには仕事優先のために無謀な行動も辞さないという側面もある。ウズベキスタンのアフガニスタン国境近くで会ったアメリカ人の若いリポーターは、“いい写真を撮るためには人並みの事をやっていたのでは競争に勝てない”と言い、戦乱激しい中でも闇雲に突っ走るタイプだった。私をテレビの“驚きもものき”に引っ張りだした近藤青年もまた戦時国を股にかける特攻カメラマンであった。
    若い日本の青年が“盾”になるためあるいは戦時国の状況を直接肌で感じるためアラブの戦時国に出掛けているが、それはそれで非常に勇気の要る素晴らしい冒険だと私は思う。ただし十分に現地人の性格、習癖を知らなければならない。特に戦時下のアラブに限ったことではなく世界中の後進国において教育の無い最下層の連中にとっては人を殺す事など犬を殺すのと大して変わらない感覚だ、という事をよく認識しておかなければならない。
    私も以前アフガニスタンヘ、エメラルドを掘りに出掛けようと思った事があるが、現地の人間があまりにもタフ、粗暴なために断念したいきさつがある。
    さて本題に入り、いかにしてそういう無法ゲリラからの誘拐、虐殺を防ぐか、一部と二部に分けて語ろう。一部は誘拐を防ぐためのトータルな防御策であり、二部では不運にもゲリラに拉致されたら如何にしてゲリラ集団と巧くつきあっていくか、を語る。
    もちろんその目的は手っ取り早く処刑されないようにする事と逃げ出すチャンスを見いだし、上手く逃げる事だ。

    1.ゲリラからの防御策
    コロンビアの共産ゲリラ、FARCやELNに誘拐された友人や知人を何人もみてきたが、彼等はかれらなりに気を付けていたと一様に言う。話しを聞くと確かに基本的な警護態勢はとっていた。毎日の出勤時間やルーテイン(日常)スケジュールを変えるとか出勤ルートを変えるとかいったベーシックな予防策はもちろん、なかには常時四、五人のボデイーガードを伴っていた者もいる。私がオフイス不動産を買った前の持ち主、ユダヤ人のメンデル氏はFARCゲリラに誘拐され、自ら身代金をゲリラと交渉し脱出してきた一人だ。強靭な根性の持ち主で、百万ドルの身代金を値切りにねぎって三十五万ドルにした。彼の場合、一歩、家を出てから夕刻家に帰り着くまで万全の防御態勢を敷き、彼の行動範囲は完全に五人のボデイーガードで固められていた。しかしこれは一般の誘拐団に対しては有効だがゲリラには通用しない。それは、ゲリラが多人数で襲ってきて、四、五人の用心棒では不十分だ、という事ではない。誘拐の対象になるような金持ちは皆、よく研究し知っているが、街中ではゲリラに対しても四、五人の用心棒で十分なのだ。何故なら、無法のゲリラでもそれを敢行する為に一個小隊近くの人数を大都市のド真ん中に派遣する事はできないからである。彼は盲点を突かれオフイスビルの中で拉致されたのである。ビルの外に車を待機させておけばこれは意外と簡単だ。
    コロンビアリアノスの大平原に広大な牧場を営む友人の竹本氏の場合、手薄な警護体制が原因でゲリラに拉致されたがそういう粗放地ではたとえ一個小隊のボデイーガード陣を敷いてもゲリラには対処できない。誘拐されたくなければ牧場には近ずけない、と所詮しかたないケースであった。
    一般の誘拐団の犯行も含め、一番重要な防御ポイントは自分の回りの人間関係で、周りに居る人間の手引きで誘拐されるケースが最も多い。ボデイーガードを始め自分の接する従業員や訪問先の人間、強いては親類縁者の身内まで信用してはいけない。友人モンテネグロ氏のケースはボデイーガードの一人がゲリラのシンパであった。これを防ぐには普段から用心棒たちの前で強面ぶりを発揮しておかなければならない。“裏切った日には、テメーら必ず仕返しを受けるぞ”、という意気込みを見せておく事が肝要。そして大事なことは周りの人間を信用しているフリは見せても決して信用してはいけない。すぐ人を信用するというのは日本人の美徳でもあるが、デメリットでもある。後進国では通用しない、デイフェクト(欠点)なのだ。
    私の場合もこのゲリラのシンパが娘の誘拐を仕掛けたが、相棒を捕まえたら彼は勝手に自殺した。これは私の映画、“エメラルド カウボーイ”で解説してあるとうりである。
    誘拐された日本人のケースをみると、周りの人間を信用しすぎているのが原因になっている場合が多い。ほとんど周りの人間が情報を流しているという事実に留意しない。それに初期の段階で疑いサッサと逃げ去れば助かる可能性があるのに怖さのためか相手にズルズルとくっついていってるケースもある。中には複数の人数でまとめて拉致され、何の抵抗も試みず、無惨に虐殺されてるケースもある。誘拐は起こったとたんにあらゆる可能な行動を起こすべきだ。まず逃げを敢行する事、拉致直後には相手が慌てているのでその隙がいっぱいある。これで助かった者が結構居る、中には銃弾を食らった者も居るが。もちろん時と場合、臨機応変な対応を即断しなければならぬが、“よけいな行動は相手を刺激するので逆効果、慎むべきだ”、などと常一辺倒に云うのは他人行儀の臆病エクスキューズに他ならぬ場合が多い。9/11 ナイン イレブン を見よ。あのとき乗客の誰かがテロリストに組み付いていれば別の男もそれに続き、あの大量殺人は防げたのである。要は,もしその時チャンスがなければジッと我慢して次のチャンスを待つ事だ。よくないのは、後で何とかなるだろう、のナリユキ主義で座して死を待つ事である。
    完全とはいかずも、最善の防御法はもっと言い足さなければならぬが、紙面の都合次回に譲り、二部にいこう。
     
    2.
    ゲリラへの対応
    誘拐された人の末路は悲惨だ。女性ならばなおさらである。身代金の支払いができなければどうなるか言うまでもない。たとえ生還できてもその後の人生はトラウマに苦しみルーザーとしての人生を送る人が多い。それほどゲリラ キャンプの中での彼らの扱いは厳しく、醜い。鎖(くさり)の足かせ手かせをはめられ、食事はプラタノ(青バナナ)とユカ(芋)の到底日本人の口にはあわぬひどい物で、便所もままならぬ豚並みの生活となる。
    そこで気落ちしてはいけない。これは非常に難しい事だが一番重要なことである。云うまでもないが、衰弱し食事ものどを通らなくなってはおしまいだ。こういう逆境の時こそ、“死なない限り問題はない”である。精神状態を気丈に保っても敵にはそれを見せない。あくまでも弱々しく不安げに振る舞う。時々接触するゲリラ兵が同情していろいろ話をしてくれるようになる。相手の信用をかち取れば第一ステップはパスだ。興味本位を装いキャンプ内はどうなっているのだ、と訊き出してキャンプの構図を頭に入れる。警戒態勢の概要も人質に逃げ出されないように誇張して教えてくれる。事前に鎖を切っておいて夜半にゲリを装い見張りをできるだけ遠ざけて素早く逃げ出し、暗闇のジャングルを駆け抜けて助かった国軍兵士や警察官、一般人も数多い。むろんゲリラの追跡であえなく捕まり厳罰に処せられる人質も多い。しかし金がとれる間はまだ殺されないから大丈夫、ヤリ得、失敗してモトモト、やらぬはペンデーホ(アホで臆病者)と、現地では言う。
    国軍兵士や警察官の人質は政府軍に捕まり刑務所に収容されているゲリラ兵の捕虜と交換するために確保している。
    アルカイダの方はあまり情報が無いが、人間のやる事似たり寄ったりだろう。どこかに必ず隙があるはずだ。日本人は信用されているから余計スキを見せるはずである。
    いずれにせよ、誘拐される者はルーザーだ。私の大物友人達はコロンビアの鉱山王ビクトルカランサをはじめ皆、誘拐されるようなドジは踏んでいない。
    余談になるが、エメラルド鉱山村と隣接するゲリラ村に間違って踏み込んだ私以下私の用心棒兵隊20名たらずはゲリラ兵に追跡されながら脱兎のごとく村を逃げ出したが、その後が大変だった。あちこちのゲリラ村に回状が回り、“自軍のテリトリーを冒涜したハヤタを捕まえろ”と顔をツブされ怒ったゲリラが執拗に私を追いかけ回した。一年間ほどは、鉱山街道を通過するのも午前三時から五時までの間に限定した。捕まらないために大変な努力を要した。
    現在コスタリカに在住の友人岩沢氏は日本の化学肥料会社の特派員でゲリラの支配地に近い地方都市や村の大農場を過去四十年間も駆け巡っていたが、ついぞゲリラに誘拐される事はなかった。それはひとえに彼の人徳のなす取り得で村々で接する人々の中に誰も彼をゲリラに手引きする者が居なかったからである。ジェラシーが最大の敵になる事は前著で説いた。まず誘拐対策の第一歩はこの人間関係にある。現地についたら現地人と仲良くする事が大事だが、大言壮語はイケナイ。金持ちに間違えられ二度もゲリラに誘拐されたオメデタイ日本人がコロンビアにいた。
     
    今日はここまで、ではまた。
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