GWはいかがお過ごしだったでしょうか。私は日本EU議員会議でフランス、その後、マイナンバーやサイバーセキュリティ関連で山口IT担当大臣とともにエストニアを訪問という大変充実したGWでした。今回のメルマガは、今年の10月から仮カードの郵送が始まる「マイナンバー制度」に関して説明させていただきます。
本会議の代表質問、内閣委員会の質疑でも言及しましたが、「マイナンバーは次の時代を切り拓く新しいプラットフォームとなる制度である」ことは間違いありません。ただ現状は、社会保障と税、災害対策だけに使われる「マイナンバー」、公的個人認証を搭載する「個人番号カード」、さらには行政機関が保有する自分に関する情報やお知らせを自宅のパソコンから確認できる「マイナポータル」という3つの機能が混同され、誤解や事実誤認に基づいた報道も散見されます。
歴史を遡ると、わが国では1960年代の佐藤内閣の時代から番号制度の必要性の議論が始まったのですが、国民総背番号だ、政府による国民監視社会だ、という当時の野党からの猛烈な反対を受けて計画が頓挫したため、政府のシステムは国民IDなきまま、バラバラに開発が進みました。特に、社会保険庁の年金システムは、個人単位ではなく年金手帳単位に管理するという仕組みで開発が進んだのです。手帳単位だと、職も変わる、住所も変わる、名前も変わるというような中で、当初から年金情報を一元管理することができないシステムになる懸念がありました。その後、97年にようやく基礎年金番号が導入され、この番号に国民年金や厚生年金の手帳情報を名寄せしようと試みるのですが、残り5千万件まで進んだ段階で、民主党議員に「消えた年金だ」とぶち上げられ、これが政権交代の引き金になったのは、記憶に新しいところです。その後、グリーンカード、住基カード、社会保障カードと議論のかたちを変えながら国民IDは頓挫していたのですが、政権交代を機に民主党がそれまでの方針を変更してマイナンバーを推進する立場となり、当時野党だった我々が協力して成立したのがマイナンバー法案です。
公平公正な社会の実現、デジタル社会の進展と時代の要請に応えるための政策パッケージである今回のマイナンバー制度の思想は、国が国民を管理するものではなく、その対極にあるもので、いわば、国民一人ひとりがセルフマネジメントで自らの権利を守ることのできる社会を目指すものです。政府は情報提供等記録開示システム、いわゆるマイナポータルによって個人情報が機関間でやりとりされたログを国民自ら確認できる仕組を導入して、行政の透明性は格段に上がります。また、個人番号カードの普及は、なりすましのない、IT利活用社会の幕明けになります。また、マイナンバーは大切なものですが、個人番号カードのICチップには機微な個人情報が蓄積されないし、情報を一元的管理できないような設計になっているので、仮に漏えいしたとしてもマイナンバーだけでは何もできない仕組みになっています。ここが十分に理解されていないため、的外れな心配論が後を絶たないのだと思います。
「馬車を何台つなげても鉄道にはならない。」約1世紀前、経済学者のシュンンペータが言ったイノベーションの本質論です。馬車を改良し続けるより、鉄道に乗り換えることに挑戦したからこそ産業革命は実現しました。革命には痛みが伴いますが、それでも新たな道に踏み出す勇気が必要です。現在、コンピュータとネットワークによる第3次産業革命は加速して進行中であり、マイナンバーは次の世代のためにも、日本が成長するためにも、公平公正な新しい社会のプラットフォームとして定着させる責任が我々にはあると確信しています。