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     * 堀潤のテレビでは言えない話 vol.21

  ~「漂流原発 現場からの告発」の巻~

         

      発行:8bitNews  2013.8.27 (毎週1回発行)

               

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皆さん!こんばんは!

厳しい暑さ、そして突然の豪雨など続いていますが、皆さんはいかがお過ごしですか? 堀は今、米カリフォルニア各地で取材中です。

渡米した都合で更新が遅くなってしまいました。申し訳ありません。

現地時間の24日は、シリコンバレーで開かれた「JAPAN EXPO」を訪ねました。日本のコンテンツ産業がどのように海外戦略を打ち出しているのか見たかったのですが、印象としては「ようやくか」といった感じ。日本からの発信力よりも、愛好家の検索力に頼っているのが実情でした。商売を成り立たせるだけの相互コミュニケーションについてはは、まだまだこれから育てていかなくてはいけないなと実感しました。言語や権利処理の問題なども現実的な課題として、日本の発信力に足かせになっています。

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詳しくはまた記事にしますので、そちらもご覧くださいね!

平日深夜0時から放送している「ネルマエニュース24」などでも、現地から米国取材について報告いたしますのでぜひご覧ください。

よろしくお願いいたします。


【リンク】http://live.nicovideo.jp/gate/lv150449940


さてさて来月、本が2冊出版されます。

幻冬舎からは「僕らのニュースルーム革命」。次世代メディアの在り方について論じた堀のマニフェスト的な著書で、9月13日の発売です。アメリカやヨーロッパの最新メディア事情や、堀が仲間とともに仕掛ける8bitNewsの展望など一冊にまとめてありますので、よろしければぜひご予約ください!

もう一冊は講談社の「ぼくがメディアで伝えたいこと」。堀のこれまでの取材経験などを振り返りながら、今後伝えていきたい社会のあり方について論じたもので、こちらは9月18日の発売です。NHK時代に「ニュースウオッチ9」でリポーターとして活動した頃のエピソードや、なぜ堀がパブリックアクセスの実現を目指し退職したのかなど、社会人になってからの13年間を振り返っています。あわせてぜひ、よろしくお願いいたします。


【リンク】http://www.amazon.co.jp/dp/406288223X




ではでは、今号のコンテンツはこちらです!↓


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├○    堀潤のテレビでは言えない話  vol.212013.8.27

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├○  01.【堀潤のソーシャル日記から】

├○  10回「漂流原発 上」

├○ ~メーカー社員の告発~

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├○  02.【ルポルタージュ】

├○  マスメディアが報じない本当の○○

├○  第20回  「漂流原発 下」

├○ ~現場作業員の告発~

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├○  03.【ルポルタージュ】

├○  マイコの下克上✧研究者の道 『被害者学編』

├○  学べど学べど猶わがくらし楽にならざり

├○  第4回「司法を変える」

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├○  04.【ルポルタージュ】

├○  フクシマ日常論 ラジオ福島・大和田メール

├○  第5回「視界の向こう側に」

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├○  05.【告知】今週のスケジュール& お知らせ

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前回「Vol.20」へのリンクはこちらです。

[リンク] http://ch.nicovideo.jp/horijun/blomaga/ar319364


未読の方は併せてお楽しみ下さい。


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┗■  01.【活動日記】堀潤のソーシャル日記

   

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このコーナーでは1週間の堀のつぶやきから3本を選んで深堀り。

毎日新聞「MAINICHI RT」 の連載と連動しています。

NPO法人代表として、そしてジャーナリストとしての堀の1週間からのルポルタージュ。

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漂流原発 (上)


堀 潤 JUN HORI@8bit_HORIJUN

Water leaks may become new Japan nuclear disaster (from @AP) http://m.apnews.com/ap/db_306481/cntentdetail.htm?contentguid=f5fBwOku… https://pic.twitter.com/P5pIY0zCFp

posted at 16:19:32


汚染水の流出が新たな日本の原子力災害となるーー


AP通信は東京電力福島第一原発で相次ぐ汚染水の問題をこう表現し、22日世界に向けて報じた。


筆者は昨年夏、留学先の米ロサンゼルスで、山田恭暉さんらによる講演を取材した。山田さんは、かつて日本の原発メーカーなどで技術者として働いた65歳以上の方々から成る「福島原発行動隊」の代表だ。


福島原発行動隊は、原発事故発生直後の2011年4月から活動を始めた。原発構内での収束作業について、 約2300人のメンバーが若者に代わって買って出ることを希望し、登録している。


「現役を引退した自分たちシニアであれば、放射能による被曝を恐れず収束作業に貢献できる。しかし、私たちはその作業に参加する機会がいまだ与えられていない。外部の人間には閉ざされた産業構造だからだ」


山田さんは、東京電力以下5社、6社と協力企業が連なるいわゆる「多重下請け構造」の実態を、会場に集まった50人ほどの米国人を前に説明。収束作業を巡る利権構造にメスを入れなければならない、と訴えた。


そうした山田さん達の訴えに対し、集まった米国人たちからは実にシビアな反応が返ってきた。地元カリフォルニアのスタンフォード大学が、日本近海を回遊して米国の太平洋沿岸まで回遊するクロマグロから前年比で5倍のセシウム134/137を検出した、と発表した直後だっただけに、講演会では日本の対応に対する注目がいっそう高まっていた。


「利権構造にメスを入れる前に、なぜ日本は国連などの協力を得ないのか? 放射能汚染は海にも広がっていると聞くが、もはや日本一国の問題ではない」「日本政府も東京電力も、日本のメディアも世界に本当のことを発信するべきだ。情報公開があまりにも不十分だ」


太平洋を挟んだ対岸カリフォルニアの人々は海洋汚染の実態には特に敏感だ。


筆者は昨年夏、米国で日本に対する不信の高まりを肌で感じた。あれから1年。「冷温停止宣言とは何だったのか?」。汚染水の問題に端を発し、遅々として進まない収束作業の実態に世界のメディアは目を向け始めた。


福島第一原発構内で作業を続けてきた大手メーカーの関連会社社員に今年春、相次ぐトラブルの原因について聞いた。東京電力を頂点とした多重下請け構造において、1~2次にあたる企業で技術者として働いている。冷却に必要な水を循環させる機器の管理や敷設などを手がけてきた。


その男性の話では、収束作業に必要な部品や機械の発注は相見積もりをしたうえで、最もコストのかからないものが東電によって採用されるという。各メーカーは、性能や耐久年数に優れた高品質のものを提示するが、廃炉にかかる費用を極力抑えたいとする東電側の判断によってコストの安さが優先され、品質の劣るものが現場に投入されていくと証言していた。「強度や耐久年数よりもコストを優先してきたツケが明らかになってきている」。彼はそう語り、事故直後に導入された機器や部品の不具合が事故から2年以上経過してさらに増えてくるのではないか、と懸念を示していた。


今からでも遅くはない。原子力災害史上最悪といわれる東電福島第一原発の事故収束作業を一私企業に任せておいてはいけない。


「なぜ、世界中の技術者や科学者が総動員で収束に当たらないんだ?」。昨年、米国人たちから投げかけられた質問に、日本はそろそろ答えなければならない。私たちの国だけの問題ではない。透明性を高め、危機を共有し、高度な最新技術の絶え間ない投入により、未来へのツケを少しでも減らしておかなくてはならない。世界中が日本の次の一手に注目している。


これ以上、原発事故を漂流させてはならない。


堀 潤 JUN HORI@8bit_HORIJUN

JAPAN EXPOの会場は、早速コスプレーヤ達で彩られている。日本のアニメ情報はFacebookかHuluなどのオンデマンドコンテンツから得ているとか。 http://instagram.com/p/dai2O9tghT/

posted at 08:48:10


筆者は今、再び米カリフォルニア州で取材している。


先週25日、シリコンバレーのサンタクララで開催された「JAPAN EXPO」の会場を訪ねた。JAPAN EXPOはアニメやゲームなど日本のポップカルチャーを紹介するフランス生まれの国際的な展示会で、2000年から毎年開催のパリでは今年7月、過去最高の23万人以上を集めた。そのイベントのアメリカ版が今回初めて開かれた。


会場に着くと、アメリカ人の女子たちが手作りのコスプレ姿で闊歩する姿が目立った。facebookやブログを通じて日本の情報を手に入れているという。「テレビではあまりやらないからネットで」というのがスタンダードだ。

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イベントには日本のテレビ局の関連会社も出展していた。日本のアニメや映画などを紹介する番組を今年パッケージにし、今年初めて世界のテレビ局向けに売り始めたという。版権などが複数の企業にまたがって権利処理が複雑で、わざわざ承諾をとるのが面倒だといったことから、これまで海外販売がおざなりにされたきた、と担当者は語る。飽和した日本市場から海の向こうに目を向けて、生き残りをかける。「背に腹は変えられないですから、面倒な作業もこれからは真剣にクリアしていきます」


ようやくか。


原発問題も日本文化の発信も、抱える問題や悩みにはどこか相通じるものを感じる。海外からみつめる日本の姿はまるで御簾の向こう。姿は見えるようでよく見えない。何を考え、何をしている国なのかを外に向けてはっきり伝えてゆくことが大切だ。ここアメリカにいて強く思う。
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講演や講師の依頼なども受け付けています。

hori@8bitnews.org までぜひ!



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┗■  02.【ルポルタージュ】

  マスメディアが報じない本当の◎◎

     

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「テレビでは言えない話」というタイトル通り、「テレビでは扱いづらい」

という理由でなかなか放送されない話題もたくさんある。

国家や大企業を敵にまわしがちなテーマについては、局側の判断で

ニュアンスが弱められたり、企画そのものが採用されなかったりする場合もある。

このコーナーでは、そうしたマスメディアが報じない現場の実態をルポ。

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20 「漂流原発 (下)」

 ~現場作業員の告発~


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筆者が製作したドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」の上映会を8月初旬、東京・代官山のカフェで開いた。映画監督の岩井俊二さんや女優の松田美由紀さんたちと共に発起人の1人として運営に関わった、「69の会」のイベントだ。

映画は日米のの原発メルトダウン事故のその後を追ったドキュメンタリー。ロサンゼルス近郊のシミバレーで半世紀にわたり詳細がほとんど明らかにされてこなかったメルトダウン事故の汚染実態や、米国の原子力災害史上最悪といわれるスリーマイル島原発の現在を取材した映画だ。

日本については福島県各地の現場を訪ね、あの日どのようにして避難したのか生々しい証言を聞き取り、原発構内で働く作業員による多重下請け構造の実態の告発映像とインタビューなどと合わせて構成される。

「69の会」では映画上映に際し、この作業員の男性を会場に招き、現場の実態を改めて語ってもらった。汚染水の漏洩問題をはじめ、原発の収束作業は遅々として進んでいないのが実情だ。漂流原発(上)では原発メーカー勤務の男性の証言を紹介したが、こちらでは、この作業員自身による現場からの告発を紹介する。

【リンク】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/95558


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■震災1年後の福島での邂逅

 震災による東京電力福島第一原発の事故から、1年あまりが過ぎた2012年5月。

 JR福島駅前の広場で、大きなリュックサックを背負った一人の男性がたたずみ、足早に歩くこちらに視線を送っていることに気がついた。見た目は30代から40代前半くらい。髪は短く刈り込まれ、顔は日に焼けて褐色に染まり、印象的なぎょろりとした目が、まっすぐに僕を見つめていた。ひょっとしたらと思い、こちらから歩み寄り、声をかけた。

「今日のオフ会に参加される方ですか?」。そう尋ねると、男性は照れくさかったのか、頭をかきながらややぶっきらぼうに「そうです。ちょっと早く着いたものでどうしようかと思っていたら、堀さんらしい人が歩いてきたので……」と返してきた。

 当時の僕はNHKの派遣制度を利用し、翌月からアメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に留学するため、準備期間として4月からまるまる2ヶ月間の有給休暇を取っている最中だった。

 同時にSNSを使った個人としての発信にも力を入れていたので、それまでTwitterやFacebookでやりとりを続けてきた全国の人たちと直接会って、放送や報道の在り方について率直に意見を聞いてみたい、と関東や関西、東北の各地でオフ会と称したイベントを開いてまわっていた。

 Twitterでは、10万人近い人たちが常に僕の書き込みを見られるようにフォローしてくれていたが、多くが顔の見えない匿名の繋がりばかり。ネットの参加者はどのようなバックグラウンドを持った人たちなのだろうと日頃から興味も持っていた。なので、逆に「会いたい」とお呼びがかかればなるべく顔を出して、直接対面して意見を交換する場を作ることにしていた。

 そうした中、僕のことをTwitterでフォローしてくれていた福島市在住のご夫婦がオフ会を企画し、市内中心部の公民館の会議室を借りて、原発事故後の福島の現状やメディアの報道姿勢などについて地元の皆さんと意見交換する機会をつくってくれた。県内に住む人たちを中心におよそ30人から参加の申し出があった。

 福島県には、特別な思いを抱いてきた。震災や原発事故が起きるちょうど2週間前に、地元の一次産業に携わる人々と地元の地方銀行が一緒になって農産物のブランド化を進める取り組みを取材したばかりだった。福島県は、関東の食料基地などと呼ばれるほど、安価で多様な農産物を大手流通を通じて安定的に関東地方に供給し続けてきた。

 しかし、TPPをはじめとした本格的な自由貿易時代が到来すると、いよいよ外国産の安い農産物に押され生業として成り立たなくなるのではないかとの危機感から、銀行側がコンサルタント役となり、農産物に付加価値を与えブランド力をつけて、東京や大阪の有名レストランや高級ホテルなどに積極的に売り込むという取り組みを始めたばかりだった。農薬を抑え丁寧に栽培されたアスパラやホウレンソウなどの野菜、磐梯山から流れる澄んだ甘い水を使ってつくられる米や地酒など、農家を一軒一軒まわり生産者の皆が自信と誇りを持って「堀さん、これは、最高だろう!」と説明し、食べさせてくれた。

 しかし原発事故で、それは一変した。自分が取材をして交流を深めた農家の人たちが事故による放射能被害や風評被害に苦しんでいた。不条理な出来事に悔しさがこみ上げた。そうした中、この苦境をどう乗り越えるのか、皆で話し合い建設的な意見を出し合いたいと思い、オフ会を開くことになった。

 東京都内は梅雨を前に蒸し暑い日が続いていたが、福島市内はスーツとワイシャツ一枚ではまだ肌寒く、これではコートが必要だったななどと悔やみながら、駆け足で駅から現場に向かった。

 男性の視線を感じたのは、まさにその時だった。

 彼は黒いTシャツにカーキ色のジャケットを羽織り、頭の丈をすこし越えるくらいの大きなリュックサックを背負っていた。いわゆるバックパッカーのようないでたちだ。県外からの参加者なのだろうかと思い「随分大きな荷物ですね?どちらからいらしたのですか?」と背中を覗き込みながら聞くと、男性はニヤリと白い歯を見せ、こう言った。

「長野県からです。アパートを解約して荷物をまとめて福島に来ました。会社を辞めて原発作業員として働くためです」

 随分思いきったことをする人だと興味がわいた。オフ会の開始時間まではまだ40分ほど余裕があったので、男性と二人で近くの喫茶店に入り、コーヒーを飲みながら詳しく話を聞いた。

■原発作業員・林哲也さんとの協業

 林哲也さん、40歳。長野県で内装や建設関係の仕事を続けた後、自動車関連の会社で営業マンとして働いた。顧客のニーズと会社の経営方針が必ずしも噛み合ないサラリーマン生活。利益を追求するのか、それとも顧客の目線で目先の利益を削ってでも期待に応えるのか、主張すると周りから叩かれ、黙っていると自分に嘘をついているのではと苛まれる。そんな組織人としてのジレンマを感じ始めた頃、原発事故が起きた。

 1年経ってもなかなか進まない被災者への補償。総理大臣が冷温停止状態と宣言しながらもトラブルが絶えない原発の収束作業。事故後の政府や東京電力の対応は、自分が会社の中で働く日常の中で感じてきたジレンマや違和感に通じるものがあったという。

 誰の目線で仕事をしているのか。被災した人たちの立場に立った政策がとられているのか? 情報公開も徹底されず、自分たち一般は、原発事故の収束作業がどの程度まで進んでいるのかも正確なところがよくわからない。

「テレビや新聞を見ていても、現場の実態がよくわからないんです。第一原発の中で、今、何が起きているのか。もはや、自分で確かめにいくしかないと思いました」

 林さんは、春に会社を辞め、携帯電話の求人サイトで見つけた原発作業員の募集告知に思いきって応募することにした。家族や恋人からは心配もされた。高い放射線に身をさらされ一体どうなってしまうのか、自分自身も正直なところ、恐怖を感じているという。

 しかし、それでも作業員として内部の様子を直に確認して、情報を求める一般の多くの人たちに伝えたいという思いを強くしていた。そんなおりに、Twitterを通じて福島でのオフ会を知り、わざわざ会いにきてくれたという。

「たしか堀さんは、一般の人が発信するのを支援するプロジェクトを進めているとつぶやいていましたよね? その中で、自分が作業員として見てきたことを発信できないでしょうか」

 思いもかけない申し出だった。

 僕たちが進めていたプロジェクトは、当時はまだ活動の受け皿となるインターネットのサイトの制作に着手したばかりで、完成は1ヶ月後の6月中旬を目指していた。まだそんな状態でも僕たちの試みの意図を正確に理解して手を挙げてくれたことに加え、「原発の内側で何が起きているのか、多くの人に発信したい」と、会社を辞めてまでも原発に行くという林さんの言葉は、僕の胸に突き刺さった。

 これこそまさに、一般の方と専門技術者が協業する新しい報道の、第1号にふさわしい試みだ。

「お手伝いするので、一緒に取材活動を進めてみましょう」

 福島でのオフ会を終え、林さんとはその後も東京で打ち合わせをした。

 今まで、まったく取材をしたことがないという林さんに、現場で起きている事実を記録することの大切さを伝えた。やりとりされる会話や出てきた数字などは必ずメモをとったり映像に残したりして記録すること。どこで、誰が、いつ、何をしていたのか、いわゆる5W1Hに沿って、毎日、起きている事を日記帳にまとめることを提案した。手に入れた資料も手元に残しておくことも伝えた。

 そうしたやりとりの中で、林さんから、放射線測定器や記録用の小型カメラを買った方が良いかと相談を受け、福島に入る前に、秋葉原などで調達することを勧めた。放射線に限らず、手元の測定器で身の回りの現象をいちいち数値化して残していく事は大切だ。後々になって記録を検証していく上での大切な資料になる。数字が記録されていれば、状況の変化を振り返ったり将来の予測を科学的に行ったりと、情報の時間軸にも奥行きが出る。

 さらに公の機関に電話をかけるなどして、ベーシックな情報を直接確認する作業も必要だ。林さんも、事前に環境省など役所に電話をして、原発作業員の放射線管理の基準や労働環境などについて、基本情報を直接聞き取っていた。

 記者クラブに所属している記者でなくても、ある程度の質問には役所側も対応してくれる。こうやって、一つ一つ職業メディア人たちが、自分たちの経験を積み上げていく中で培ってきた知識や技術を一般の皆と共有することがとても大切だ。取材のイロハを知った上で、物事を伝えるのとそうでないのとでは、情報の純度が結果的に大きく異なってくる。データや正確な記録に裏打ちされない情報は、単なる憶測や思い込みに繋がってしまい、価値を持たない。

 こうした事前準備の中で、林さんも現場で何を伝え、何を改善するべきなのか、より明確にイメージするようになった。

「原発事故が収束するまで、今後も長い時間がかかることは明らかです。今、生まれた子供たちが、将来大人になり20、30年後も原発事故の収束作業に駆り出されているかもしれません。未来の子供のためにも、作業員の労働環境が少しでも改善されるよう、内部の実態を明らかにしていきたいです」

 林さんは、良く晴れた日の代々木公園のベンチに座って空に目をやりながらそう語った。

 それからおよそ1週間後の6月はじめ、僕はアメリカに渡り、林さんはいよいよ現場で作業をするため福島県に向かった。

■衝撃的な原発作業の現場の実態

 福島に入った林さんからFacebookを通じて連絡が来たのは、6月下旬にさしかかった頃だった。

「現場はデタラメなことばかりですよ」