• このエントリーをはてなブックマークに追加

ウラン山さん のコメント

逆に生きやすい時代などあったのだろうか?
No.7
66ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
現代は何もかもが便利になりすぎて、人間の欲望もたいがいが満たされ、ビジネスがなかなか成立しにくい。そんな中でも新たなビジネスをひねり出す優秀な人がいて、これがまた便利だったりするから、世の中ますます便利になり、おかげでますます優秀じゃないと生き残れないという世知辛い状況になっている。 先日Anycaというマッチングサービスを利用した。これは一般の人の車をレンタカーのように借りることができるというものだ。AirbnbやUberのレンタカー版である。不動産や自動車など世の中にはたくさんの「隙間」資産が埋もれている。例えばオフィスの会議室も昼間は使うが夜になると空いている。だから、そこを安全に貸すことができれば、貸す方にも借りる方にも得な話だ。 そういうふうに、世の中のちょっとした隙間を埋めることによって、世の中はますます便利になっている。世の中からムダがなくなって、資産を最大限活用できるような社会になってきているのだ。しかもテクノロジーのおかげで、その変化のスピードもどんどんと速くなっている。 おかげで、そのスピードに乗れるかどうかも、人生のクオリティを分けるようになってきた。消費者としてもうかうかできない時代なのだ。例えばUberを使わずにタクシーにこだわる人は、お金や時間をだいぶ損している。Airbnbを使わずにホテルにこだわる人は、行動半径が狭まって行ける場所を減らしている。Anycaを使わない人は、もっといい車をもっと安く乗れたはずなのに、そのチャンスをみすみす逃している。 そういうふうに、変化がますます速く激しくなる今の世の中は、保守的であるだけで生きにくくなっている。スマホを使わないというだけで人生を損する時代になっているのだ。 20年前に携帯電話が現れた頃、使用することに抵抗を示す人が一定数いた。彼らは「便利になりすぎるとその分失われるものがある。自分はせかせかと生きたくない。携帯電話に縛られたくないから使わない」と言っていた。今にしてみると牧歌的な時代だった。携帯電話を使わないという生き方がまだ許されていたのだ。それで生産性が落ちようと社会から許容されていた。 今は、そういう人はいない。みんな死んだ。今はビジネスでスマホを使わずにいたら一瞬でマーケットから封殺されてしまう。収入がたちまち途絶える。だからそういう寝言を言うことさえできなくなっているのだ。 さてしかし、一方でそういう便利さは我々のクビをじわじわと締めつけもする。Anycaが普及すると世の中のあらゆるレンタカー会社は少なくないダメージを被るだろう。また、この分だと一般の人が駐車場を安価で時貸し出すサービスも現れるから、駐車代もどんどん下がっていき、駐車場運営会社も経営が苦しくなる。 それ以上に、自動運転システムが普及すれば、レンタカーも駐車場会社も交通違反を取り締まる警察官も、全ての職がいっぺんに消滅する。そういう未来はもう、そこまで来ている。今、優秀な人たちが鵜の目鷹の目で世の中をもっと便利にしようと日夜競い合っている。だから、世の中が便利になるスピードはますます速まり、それについていけない人はますます生きづらくなり、同時にその便利さの余波で失業してしまう人がますます大量発生するようになるのだ。 そういう時代に、我々はどう生きていったらいいのか? これは難しい問題である。一つ言えるのは、誰にでも一つは能力がある。けれど、もうそれだけでは生きられなくなった。今は、少なくとも三つは能力を必要とするだろう。 それを身につけるためには、不断の努力が欠かせない。勉強、努力、時代を読む目、新しいものに抵抗しない柔らかな心、冒険心、そういう側面にブーストをかけ、したたかに生き残っていくしかないのだ。
ハックルベリーに会いに行く
『もしドラ』作者の岩崎夏海です。このブロマガでは、主に社会の考察や、出版をはじめとするエンターテインメントビジネスについて書いています。写真は2018年に生まれた長女です。