ぱちもんのきんさん のコメント
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今回から「ライトノベルの書き方」について、連載で書いてみたい。
一種の思考実験として、どうやって書くのかを考えていく。
感想やご要望があればぜひコメントやメールでお知らせください。
まず「ライトノベルとは何か?」を考える。
ライトノベルというと、パッと思いつくのは「売れなければならない」ということだ。なぜなら、ライトノベルは売れないとすぐに出してもらえなくなる。編集部から無残な形で切り捨てられた「ライトノベル作家残酷物語」はよく聞く話だ。それほど、売れるということにシビアなジャンルなのだ。
なぜライトノベルが売れなければならないかといえば、ビジネスとしてたくさんの人に雇用機会を創出するのがその目的の一つだからだ。
そこにはどういう雇用機会があるのか?
まず出版社の編集者がある。次に問屋や書店の従業員もある。アニメ化されれば制作会社やテレビ局、レコード会社や声優などの雇用機会が生まれる。声優事務所のマネージャーの雇用機会も生まれるだろう。グッズが発売されればそれにまつわる人々の雇用機会も生まれる。
――と、事程左様に多様な雇用機会を生む「種」として期待されているのがライトノベルなのだ。だから「売る」ということを抜きにして語るわけにはいかない。
では、どうすれば売れるのか?
それは、人々に「買う意味」を与えることだ。買う理由を作ってあげるのである。
この理由が、かつては「読んで面白い」だけで良かった。しかし今はそれだけではダメだ。それにプラスして、何か付加価値が必要とされる。
なぜなら、「読んで面白い」だけだと、ネットでタダで配られているコンテンツがいくつもあるからだ。主に価格面で、それらに敵わない。だから、それに対抗する「価値」をそこに持たせなければならない。
では、ネットでタダで配られているコンテンツに対抗する価値とは何か? それを考えるには、「ネットでタダで配られているコンテンツにない価値は何か?」ということを考える。それは、「所有欲を満たしてくれる」ということだ。ネットにタダで配られているコンテンツは、ちっとも所有欲を満たしてくれない。なぜなら、それは誰でもタダで手に入れることができるからだ。
そのためここでは、まずは第一の目標として「所有欲を満たすライトノベルにする」ということを考えるのである。
では、人間の所有欲とは何か? どうすれば人々の所有欲を満たすことができるのか?
そのヒントは、ヨーロッパの「ブランド品」にある。
中世、ヨーロッパでは王侯貴族が力を持っていた。そこで、商人には「王侯貴族に取り入ることで生活しよう」とする人々が増えた。
王侯貴族に取り入るためには、彼らを喜ばせる必要があった。具体的には、彼らが所有したいと思うものを献上する必要があった。彼らの所有欲を満たしてあげる必要があった。
しかし、王侯貴族はだいたいのものを手に入れていたので、ちょっとやそっとのものでは所有欲を刺激されなかった。そこで、王侯貴族に取り入って生活していた商人たちは、あの手この手で王侯貴族の所有欲を刺激しようと、ブランド品やラグジュアリー品を洗練させていったのだ。
例えば、その一つにスイス人の作る時計がある。
スイスは山岳地帯にあり、農業があまり盛んではない。そのため、農業以外の産業を育てる必要があったのだが、そこで目をつけられたのが時計だった。時計を諸外国の王様に買ってもらうことで、国として生き抜いていこうとしたのである。
だから、スイスの時計には人間の所有欲を満たすためのあらゆる仕掛けが施されている。そのため、所有欲の何たるかを学ぶためには、スイスの時計を勉強するのが一番だろう。
ここから、一つのコンセプトが生まれる。
それは、以下のようなものだ。
「スイスの時計のようなライトノベルを書く」
冗談のように聞こえるかもしれないが、これは本気だ。
今のコンテンツ産業は、これくらい思い切った切り口でないと、なかなかビジネスとして展開していくことができない。
ところで、なぜスイスの時計は人々の所有欲を刺激するのだろうか?
答えの一つは「時計」そのものにある。人は、なぜか時計が好きである。もっというと「時間」が好きだ。時計は、時間を所有した気にさせてくれる。だから、時計は所有欲を刺激するのだ。
ただし、これは男性に強い傾向だ。それに対して女性は宝石が好きだ。だから、女性向けにライトノベルを書くときは、「宝石」を意識する必要があるかもしれない。しかしここでは、とりあえず男性向けに書くこととして、スイスの時計をモデルとする。
話を戻すと、「時間」というものが人々の所有欲を刺激するところがあるのなら、このライトノベルのモチーフも「時間」とする。表紙には、時計をアレンジしたイラストを掲載する。1巻から順に、時計を模したナンバリングを振っていくのも面白いだろう。時計なので、12巻で完結するよう設計してもいいかもしれない。
時計の世界にはかつてブレゲという大天才がいた。ブレゲ自身はスイスの生まれだが、その才能はフランスで開花した。
このブレゲは、時計のために数字のフォントまで開発した。それは「ブレゲ数字」というのだが、これをナンバリングに用いても面白い。
次回は、内容について考えていきたい。 ところで、今週の土曜日、14日から岩崎夏海クリエイター塾の第二期がスタートする。この塾は、主にクリエイティブを中心に、これからの競争社会でどうやって有用なスキルを身につけていくか――ということを大きなテーマとしている。
こちらの塾生を、まだ若干名募集している。
概要としては――
開催期間:2015年1月から6月までの半年間
回数:12回
開催日:隔週で土曜の午後
時間:毎回約2時間半
開催場所:渋谷の貸し会議室
となっている。
もしご興味がおありの方は、ご参加いただければと思う。
詳細はこちらまで。 『第二期岩崎夏海クリエイター塾』塾生募集要項
『もしドラ』作者の岩崎夏海です。このブロマガでは、主に社会の考察や、出版をはじめとするエンターテインメントビジネスについて書いています。写真は2018年に生まれた長女です。
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