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『カエルの楽園』

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 ソクラテスが生まれ育った国を追われ、長い旅に出たのははるか昔のことでした。
 自分でもそれがいつの頃だったか思い出せないくらい遠い昔です。
 春のある日、凶悪なダルマガエルの群れが国にやってきたときから、平和だったアマガエルの国は地獄に変わりました。
 毎日のように仲間たちがダルマガエルに食べられました。
 多くの仲間たちが池を離れ、草むらに逃げ込みました。でも、アマガエルは近くに水がなければ生きてはいけません。それに池には食べ物になる小さな虫がいます。
 ソクラテスたちは毎日、水と食べ物を求めて池に行きましたが、そのたびに多くの仲間たちが命を失いました。
 それに草むらも安全な場所とは言えませんでした。なぜなら、そこには恐ろしいシマヘビがいたからです。シマヘビは闇にまぎれてそっと近づき、あっというまにアマガエルを飲み込みます。気付いた時はすでに体の半分がシマヘビの口の中で、そこから逃れることはまず不可能です。
こうして毎夜、草むらでも多くの仲間がシマヘビに食べられました。
このままではいずれ自分たちは死に絶える――そう考えたソクラテスは国を捨てることを提案しました。