結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2020年2月25日 Vol.413
目次
- 自分には理解できないのではないかと不安になる - 学ぶときの心がけ
- 情報整理環境をどう構築してきたか - 仕事の心がけ
- 小学五年生に割合を説明したい - 教えるときの心がけ
- 運命は初めから決まっていると思うか
はじめに
結城浩です。
いつもご愛読ありがとうございます。
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「結城浩の作業ログ」の話。
二十日ほど前に始まった「結城浩のサークル」ですが、現在約50名ほどのメンバーに参加いただいています(感謝)。
サークルでは「結城浩の作業ログ」と銘打って、結城の毎日の作業ログを随時配信しています。具体的な方法は、Vol.411, Vol.412の「結城メルマガ」でも紹介しましたね。
まだまだ運用方法は手探りですけれど、結城にとって自分の作業を俯瞰してながめるいい機会になっています。新しいことを試してみるというのは大変いい刺激になりますね!
よろしければ、あなたも覗いてみてください。ひと月200円です。
◆結城浩のサークル
https://mm.hyuki.net/circle/
後ほど、読者さんから質問のあった「情報整理環境」についても触れたいと思います。
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「圏論と学びをめぐる往復書簡」の話。
「圏論と学びをめぐる往復書簡」というWebサイトを更新しました。
このWebサイトは『ベーシック圏論』訳者の土岡俊介さんと、結城浩による往復書簡形式の対話企画です。『ベーシック圏論』を出版している丸善出版さんの発案によるものです。ぜひお読みください。毎月一回で2020年3月まで更新予定です。
今回の更新はNo.05とNo.06で、ややプログラミング寄りの内容になっています。
No.05 同一視が生む感動と失敗談 結城浩→土岡俊介
No.06 プログラミングについて 土岡俊介→結城浩
◆圏論と学びをめぐる往復書簡
https://talk.hyuki.net/
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エールを送る話。
スーパーで騒ぎまくる幼児を引き連れて買い物中の親御さんとすれ違う。
疲れ果てながらも子供をなだめすかしあやしながら大荷物でカートを進ませる親御さんに、そっとエールを送る。
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ほのめかしを避ける話。
Twitterではできるだけ「ほのめかし」や「エアリプ」や「皮肉」を避けるように心がけています。
特に「何かに対する批判をほのめかす」ツイートはできるだけ避けることを心がけています。ツイートを読んでいる人が多い場合、読んでいる人の中には「批判をほのめかすこのツイートは、自分にあてたものではなかろうか」と誤解する人がいる可能性があります。遠回しで批判されていると感じるのは不愉快なものですから、結城はできるだけ「ほのめかし」を避けるようにしているのです。
「ほのめかし」と誤解されそうな場合には、明示的に「一般論。」と書くようにしています。もちろん「一般論。」と書いたからといって誤読を100%避けられるわけではありません。でも、その危険性を意識して下げるのはいいことだと思い、そう書く心がけにしています。
似ている心がけとして、冗談にはできるだけ(冗談)と書き、軽口には(軽口)と付記しています。さすがに毎回ではありませんし、明示的にリプライとして書く場合には省略することもありますけれど。
ツイートは、言葉を世界に向けて放つ行為です。放った後はどこの誰に届くかわかりません。そして、他の人が私の言葉に対して何を考えるかは完全にその人の自由であり、それを書き手がコントロールすることはできません。ですから、せめて、できる限りのことを考えてツイートしているのです。
ふだんから「ほのめかし」を避けていると、万一「ほのめかし」に読めるツイートがあったときでも、多くの人が「いつものトーンから考えると、これは、ほのめかしじゃないな」と判断してもらえる可能性が高くなります。でも逆にしょっちゅう「ほのめかし」や「皮肉」ばかりツイートしていると、まじめな一般論を語ったときでも「このツイートには裏の意味があるのだろうな」と誤解される危険性が高くなります。
この話題に関連して、約20年前に書いた文章があります。
◆皮肉について
https://www.hyuki.com/dig/irony.html
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似ている話。
「景気が上向きなときにたまたま自分がやっていた方法」を「儲けるにはこうすればいいんだ」と思う勘違いがある。
「仮想通貨が値上がりするときにたまたま自分がやっていた方法」を「儲けるにはこうすればいいんだ」と思う勘違いがある。
この二つの勘違い、時間のスパンに長短の違いはあるけれど、とても似ている。
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物語の話。
「結城さんは毎日なにをやっているの?」と問われたら「物語を作っている」というのはなかなかいい答えではないかと思った。
もちろんここでの「物語」はとても広い意味で用いている言葉だ。
技術書であれ、数学読み物であれ、Web記事であれ、心がけであれ、私の中では「物語」なのかもしれない。
そこでいう物語とは何かというと、バラバラではないもの。まとまりを持っているもの。一貫性と必然性があり、どこかからどこかに至る動きがあるもの。そして、そっと、誰かから誰かに渡されるもの。
それを読んでいる(聞いている)読者は少なくとも一回は「なるほど」と肯きたくなる(なってほしい)。
「なるほど、確かに」かもしれない。
「なるほど、でも本当かな」かもしれない。
でも、いずれにせよ「なるほど」だ。
論理はある。でもいわゆる論理じゃなくて、もっとゆるい。秩序はある。でも動きや遊びがないわけではない。必然性といっても、有無を言わさぬ感じではない。思わずそこに導かれるような種類の必然性だ。
そういったものを主に言葉を使って組み立てて提示する。それが、結城の日々おこなっていることのように思う。
それを簡潔に表現するならば「物語を作っている」となるだろう。
私は今日も物語を作ります。
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では、今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞごゆっくりお読みください。