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2014年04月17日発行 第0793号 特別
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■■■ 日本国の研究
■■■ 不安との訣別/再生のカルテ
■■■ 編集長 猪瀬直樹
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http://www.inose.gr.jp/mailmag/
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「人口減少社会の成長戦略」
人口にはかならずピークがある。日本は2010年の1億2806万人を境にわずか
ずつだが着実に、稜線を下りはじめたことを我われは知っている。
今週火曜日(15日)に総務省が発表した最新の人口推計(2013年10月1日時
点)によると、総人口の減少のペースはいまだ1年で20万人程度にすぎない。
新聞の見出しはむしろ内訳のほうにあり、「生産年齢人口が32年ぶりに8000万
人割れ」(日経)であり、こちらの減少は年間100万人以上のペースである。
14歳〜64歳の男女は日本経済の担い手だから、「本格的な人口減少社会 働
き手不足が深刻に」(毎日)となる。
「(生産年齢人口は)95年をピークに減少傾向を続けており、2012年以降は19
47年〜49年生まれの『団塊の世代』が65歳以上の高齢者層に入り始め、傾向に
拍車をかけている」(日経)
社会保障を支える担い手の減少は、成長戦略への足かせとなりかねないだけ
でなく、経済のパイそのものが小さくなっていくという近代日本の未体験ゾー
ンに突入しつつある。
猪瀬直樹著『人口減少社会の成長戦略 二宮金次郎はなぜ薪を背負っている
のか』(05年刊、現在は文春文庫所収)では、生産年齢人口の減少の予兆が意
外なほど早いことを指摘している。
「政治家や役人だけでなく日本人にはそもそも人口減少への危機意識がうすい
ということも無視できまい。狭い国土に過密な人口は、高度経済成長前の貧し
さ、ひもじさの記憶と結びついているし、いまでも大都会のサラリーマンの通
勤地獄は、実感として人口減少を感じさせないからである。(略)
すでに1989年には予想外の出生率の低下にたじろぎ1.57ショックと呼ばれた。
この年、2つの私鉄球団が身売りした。南海ホークスはダイエーホークスとし
て福岡へ移り、阪急ブレーブスはオリックスブルーウェーブに変わった。賢明
な判断だったといえよう。
これに対して、近鉄バッファローズ(現・オリックスバファローズ)は鉄道
事業は安泰だと油断していた。しかし91年に100億人だった私鉄大手16社の
年間輸送人員は年々減少しはじめ、近鉄がさじをなげた04年には90億人を割ろ
うとしていた。
すでに少子高齢化は生産年齢人口を直撃していたのである。サラリーマンの
印象とは裏腹に電車で通勤する人びとの減少はひと足早く訪れていたのだ」
(http://goo.gl/iKsg8v )
「一極集中」と言われる東京ですら、乗客減のトレンドは免れない。米投資会
社サーベラスが西武鉄道に不採算路線の廃止や西武ライオンズの売却を迫って
経営陣と対立した背景も沿線の人口減という強烈な潮流を知れば理解が深まる。
悲観論ばかりではない。団塊の世代が参入によって高齢者人口はまだ上り坂
でピークはまだ先だ。高齢者に馴染みやすいバスが、鉄道にかわって交通イン
フラとして再び重要な役割を担うことになるかもしれない。5年ぶりに増加に
転じた外国人も労働力であり、経済の担い手でもある。羽田空港近くの「天然
温泉平和島」は国際線の発着枠拡大にあわせ、空港と施設を結ぶ無料送迎バス
を、深夜早朝に毎日3便から7便に増やすと報じられた(4月16日付日経)。
2020年東京五輪が控えている。つぎには別のピークがある、と考えることも
できる。
(猪瀬直樹事務所 広野 真嗣)
*
「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp
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