そこで今回は、Facebookページ運用虎の巻<その1>として、Facebookページ運用の成否を分ける5つのポイントについてわかりやすく解説したいと思います。企業でFacebookページの運用に携わっている担当者の皆さまの少しでもお役に立つことを願っています。どうぞ最後までお読み下さい。
Facebookページで成果を出すことが難しくなってきている
2012年頃までは、ある程度名前の知られている企業やブランドのFacebookページであれば、Facebook広告やFacebookページ内でキャンペーンを実施すれば、比較的短期間でそれなりのファン数を獲得することができました。また、毎日定期的にコンテンツを投稿していれば、それなりのいいね!やコメントをもらうこともできました。つまり、成果をあげることがそれほど難しくなかったような印象があります。ところが、最近は誰でも知っていると思われる企業やブランドのFacebookページであっても、成果をあげるのが難しくなってきているように感じます。
では、何がFacebookページ運用の成否を分けるのでしょうか。その要因の一つとして、以前と違い企業のFacebookページが当たり前の存在になってきていることかがあげられます。自社のブランドや出店している店舗毎にFacebookページを開設している企業も今では珍しくも何ともありません。ユーザー及びファン側のFacebookページを選ぶ目が厳しくなってきています。
それを物語る事実として、やみくもにキャンペーンを実施しても、ファンが獲得できなくなってきています。キャンペーンさえ実施しておけばそれなりのファンが獲得できるというのは、もう遠い昔の話だということをです。キャンペーンによって新規ファンを獲得するためには、既存のファンやファンになってほしいユーザーが参加したくなるような面白い企画、キャンペーンに使うアプリの種類、インセンティブ(賞品)、当選者数などを最適化することが重要になってきています。
Facebookページ内でのキャンペーンが珍しくも何ともなくなってきている今、「おっ、このFacebookページは面白いキャンペーンを考えるな」と思わせることが、以前にも増して重要になってきているのです。また、キャンペーンで設定するインセンティブ(賞品)についても、ある程度高額な商品を用意したり、当選者数を100名上に設定するなどの工夫が必要になってきていることは間違いありません。
Facebookページ過多によるFacebookページ同士の競争激化がもたらすFacebookユーザーの心理的な変化。これらの外部要因が、Facebookページで成果をあげることを難しくしています。そして、この外部要因はどうすることもできない問題であり、今後ますます状況が厳しいものになることが予想されます。
そして、もう一つの要因として、Facebookページを提供する企業側の運用上の問題が考えられます。ただし、運用上の問題と言っても、いいね!をもらうために必要な写真の撮影方法やコンテンツを投稿する最適な時間帯を理解するなどといったテクニック的な問題ではなく、もっとFacebookページ運用の本質にかかわる問題です。そして、これらの本質的な問題は、外部要因と違って努力次第で改善することができます。
そこで今回は、弊社の最近の事例から整理したFacebookページ運用の成否を分ける5つのポイントについて解説してみたいと思います。
Facebookページ運用の成否を分ける5つのポイント
1. Facebookページの本質を理解しているか
Facebookページの本質というと少し大袈裟な表現になってしまうのですが、ここで言いたいことはFacebookページに対して過度に期待しすぎないということです。Facebookページの本質を理解することなく過度の期待を持ち過ぎて失敗してしまうケースが、ここ最近増えてきているような気がします。
では、なぜFacebookページに対して過度の期待を持ちすぎてしまうのでしょうか。その一番の原因は、ソーシャルメディアという呼び方にあるというのが僕の考えです。いつの間にかFacebookページもソーシャルメディアという呼び方をされてしまい、最近ではトリプルメディアの一つであるアーンドメディアを代表する存在としての地位が確立してしまっています。そもそもここに問題があると思っています。
Facebookページをマスメディアやウェブサイトなどのオウンドメディアと同列にある存在として捉えるのは危険です。Facebookページは、ソーシャルメディアという呼び方をされる以前の、SNSという呼び方の方が本来の姿に近いと考えるべきです。米国やインドなどのFacebook大国と違い、日本のFacebookユーザー数はまだ2千万人に届くかどうかというレベルです。2千万人のユーザーしかいないサービスを、現時点でマスメディアやオウンドメディアと同等に考えてしまうことに疑問を感じてしまうのです。
たとえば、スタートアップ企業や立ち上げたばかりのブランドが、最近ウェブサイトをやめてFacebookページだけを開設するケースがありますが、同じような相談を受けた時は必ず反対します。なぜなら、ユーザー数が2千万人に満たないサービスだけを対象としてビジネスを行うのは、あまりにもリスクが大き過ぎるからです。ウェブサイトやブログから始め、ある程度認知されてきてから、ウェブサイトやブログをサポートする役割としてFacebookページを始めるのが正しい方法だと考えています。
では、Facebookページの本質とは一体なんでしょうか。それは、コミュニティです。Facebookページには、メディアではなくコミュニティとして向き合うのが現状では一番適切であると考えています。そもそも、Facebook自身がユーザーのことをあえてファンと呼んでいること自体、Facebook自らが強くコミュニティであることを意識している証拠ではないでしょうか。ウェブサイトやECサイトをサポートするためのファンとコミュニケーションする場所、それがFacebookページの本質であると考えるべきです。
2. Facebookページによって達成したい目的は明確か
Facebookページを何のために始めるのか、Facebookページで何を達成したいのか、明確な目的を設定しておくことが重要です。Facebookページの運用で行き詰まってしまう場合、このFacebookページで達成したい目的が明確になっていないことがほとんどです。
競合他社がFacebookページを始めたから、上司にFacebookページを始めるよう言われたから、顧客・取引先から要望があったから、Facebookページがないと何となく格好がつかないからなど、Facebookページによって達成したい目的がはっきりしないまま運用を始めているケースが驚くほど多いことに気がつきます。目的がないということは、当然次で説明するKPIもないわけですから、何を目指してFacebookページを運営すればよいのかがわからない状態になっているわけです。
Facebookページを始めてみたものの、数ヶ月で運用に行き詰まってしまい弊社に相談に来る企業があるのですが、話を聞いてみると、Facebookページで達成したい目的を明確にすることなく始めている場合がほとんどです。反対に、成果をあげることに成功しているFacebboページの多くは、自社のFacebookページで達成したい目的を明確に設定しています。
投稿するコンテンツやキャンペーンの企画に頭を悩ませる前に、まずはFacebookページで達成したい目的を明確にしておくことが重要です。多少時間がかかっても、ここから始めましょう。
3. KPIを設定しているか
Facebookページの目的が決まったら、次にKPI(重要業績評価指標)を設定する必要があります。目的が設定されていない場合は、当然KPIも設定されていませんし、仮に目的が設定されていたとしても、KPIが設定されていないケースをよく目にします。
Facebookページを運用して行く上で、目指しているゴールのどの辺りに今いるのかを知る手がかりとなる評価指標を設定しておくことは、Facebookページで成果をあげるためにも非常に重要です。この評価指標がないと、何を目指してFacebookページを運用したらよいのかもわからなくなってしまいます。このKPIに関してもお客さまからよく相談を受けるのですが、その相談のほとんどが、「KPIをどう設定してよいかわからない」というものです。
FacebookページのKPIとして考えられる指標値としては、ファン(いいね!)数と投稿したコンテンツに対するいいね!やコメント数を基に計算したエンゲージメント率が一般的ですが、最低でもこの2つの目指す指標値だけは設定しておく必要があります。
何をKPIとして設定するかですが、そんなに難しく考える必要はありません。ベンチマークに設定したFacebookページがあれば、そのFacebookページのファン数やエンゲージメント率を参考にKPIを設定するのも1つの方法ですし、メルマガ会員が10万人いるとしたら、その何%をファンにしたいかといった設定のし方でも問題はありません。
重要なのは、その設定したKPIがFacebookページで達成したい目的と大きくかけ離れていないことと、チーム内でちゃんとコンセンサスが取れていることです。
4. KPIの達成に必要な予算は確保しているか
Facebookページで達成したい目的もその目的の達成度合いを評価するためのKPIも設定しているのに、そのKPIを達成するために必要な予算を確保していないがために、Facebookページの運用が行き詰まってしまうケースをよく見かけます。
たとえば、開設から3ヶ月後にファン1万人を獲得するという、かなりチャレンジングなKPIを設定したFacebookページがあったとします。もちろん、Facebook広告やキャンペーンを展開することで目標に設定したKPIを達成することは可能です。しかし、目標とするKPIを達成するためには、Facebook広告の出稿料金、Facebookページでキャンペーンを行う際に必要なアプリの利用料金(無料も有り)、キャンペーンで用意するインセンティブ(賞品)の購入料金、インセンティブの発送料金などの費用がかかります。
相談を受けた企業にこれらの費用を載せた見積りを見せた途端、「えっ、こんなにかかるの?予算とっていないんだけど。。。」と言われるケースがよくあります。キャンペーンも、以前のように簡単にファンが集まるという時代ではありません。目標とするKPIが高ければ高いほど、それを達成するために必要なコストも高くなってしまいます。
Facebookページを始めるだけであれば、確かにコストは発生しません。しかし、コストをまったくかけずに成果をあげるには、相当な努力と時間が必要になってきます。ウェブサイトと同様、Facebookページもできるだけ短期間で効率良く結果を出すためには、それなりのコストが必要になるということを理解しておくことが必要です。
目的とKPIを設定したら、それを達成するために必要な施策を検討します。そして、その施策の実行にかかるコストを計算し、予算を確保しておくことが重要になってきます。
5. 長期的に取り組む覚悟があるか
企業のFacebookページ運用のコンサルティングサービスを提供させていただく場合、6ヶ月や12ヶ月といった長い期間で契約を交わすのが一般的です。たとえ目標とするKPIが達成できたとしても、Facebookページの運用に終わりはありません。また次の新しいKPIを設定して、達成に向かって突き進むことになります。目標を達成するためには、長期的に取り組むことが必要になってきます。
ところが、目的とKPIを設定し、KPIを達成するために必要な予算も確保して始めたはずなのに、運用を開始してから3ヶ月も経たないうちに計画していた施策をやめてしまうようなケースが時々あります。理由は、最初の数ヶ月の目標としていたKPIが達成できなかったからなのですが、Facebookページの運用で結果を出すためにはやはりそれなりの時間が必要になってきます。長い目で、長期的に取り組む覚悟がないと成果が出難いというのが正直なところです。
また、目標としていたKPIが達成できない月が続いてくると、コンテンツの更新回数が減ってきたり、予定していたキャンペーンが中止になったり、毎週行っていた定例会が開催されなくなったりといった現象が起きてしまいがちです。運用する側のモチベーションが低下してくると、KPIの達成がますます難しくなってきます。悪い状態にある時こそ皆で意見を出しあい、心を一つにすることが大切になってきます。
企業のFacebookページ担当者は、自分が運用するFacebookページに対して愛情と長期的に取り組む覚悟を持つ必要があります。そして、企業及び組織には、それをバックアップする体制作りを急ぐことが求められています。なぜなら、Facebookページ担当者が長期的に取り組む覚悟を持つためには、何よりも企業及び組織のバックアップが必要になってくるからです。
伊藤 靖
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