オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第226回 なぜか惹かれる未解決事件のウラガワ(1)
◆もくじ◆
・なぜか惹かれる未解決事件のウラガワ(1)
・最近の志麻子さん
江平洋巳さんとコラボした『怖ろし譚』発売
11/3(日)「オメ★コボシ47」開催
『小説 エコエコアザラク』が発売中
角川ホラー文庫より『忌まわ昔』発売中
TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
「岩井志麻子のおんな欲」連載中
カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中
・著者プロフィール
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なぜか惹かれてしまう、昭和の未解決事件の数々。
すでに作品化している事件以外にも、気になっているものが多数という岩井さん。
今回はそんな惹かれる未解決事件からピックアップしてお届け。
新宿の歌舞伎町に済んで20年近くになるという岩井さん。
歌舞伎町で起きた事件といえば……。
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2014年11月~17年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2018年1月「命や生きることについて考えたウラガワ」
2月「人はなかなか変わらないのウラガワ」
3月「きれいに卒業できない女たちのウラガワ」
4月「新たな出会いの不気味なウラガワ」
5月「良い季節でも人は病むウラガワ」
6月「『有名な男の女』だった二人のウラガワ」
7月「怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ」
8月「嘘と本当のあわいの怖い話のウラガワ」
9月「大人になりきれない人達のウラガワ」
10月「ベトナム旅行チン道中のウラガワ」
11月「しみじみしんみりな出来事のウラガワ」
12月「来年まで引きずりそうなアノ人のウラガワ」
2019年1月「去年に縁があったあれこれのウラガワ」
2月「台湾で初めて会った人たちのウラガワ」
3月「胸に引っかかる人を思う春のウラガワ」
4月「こういう人いるよねという出会いのウラガワ」
5月「働くということについて考えたウラガワ」
6月「私なりのプロファイリングをしてみたウラガワ」
7月「芸事業界の人たちの願いごとのウラガワ」
8月「怖さひかえめな怖い話のウラガワ」
9月「まだ挽回できるかどうか気になるウラガワ」
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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ/ソウルの新愛人のウラガワ/風俗嬢の順位競争のウラガワ/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ/「大人の夏休みの日記」なウラガワ/その道のプロな男たちのウラガワ
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十月といえば秋の真っただ中。運動会に遠足にと戸外で体を動かすイベントも多いけれど、何やら一人で読書したり静かに何かを考えたくもなる季節。
私は今、古典の『今昔物語』の中から気になる話を選び、現代の話に置き変えてみる試みを角川ホラー文庫でさせてもらっている。今現在、第二弾を書いている。
もう一つの試みとして、実際にあった事件、特に未解決となっているものを題材にしている。もちろんそのままではなく、相当に脚色し、想像と創作を加えてある。
子どもの頃から、未解決事件といわれるものに強い関心があった。私以外にもそんな人は多いようで、ネットでも未解決事件と打ち込めば、多くのまとめサイトが出てくる。
今月はそんな中から、第二弾では書かないがいずれ書きたいと思う話を番外編として紹介する。全編すべて固有名詞は伏せ、背景などもいろいろ変更、脚色してある。
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東洋一の歓楽街、不夜城とも呼ばれる新宿歌舞伎町に住んで、もう二十年近くになる。
昔から事件には事欠かない不穏な街だが、私自身は怖い目に遭ったことはない。
歌舞伎町の一般的イメージは、怖いけどおもしろい街、闇も深いが魅惑的、といった感じか。岡山の子だった私が歌舞伎町を初めて知ったのは、81年のラブホテル連続殺人事件だったと思う。翌年のディスコ殺人事件で、歌舞伎町のイメージは決定的になった。
ディスコ殺人事件の方は、七月に出た『忌まわ昔』という、『今昔物語』の現代風小説集の一編にもしているし、他にもいくつかモチーフにして書いている。
家出してきた女子中学生二人が、歌舞伎町のディスコで自称有名大学の学生にナンパされ、かっこいいスポーツカーに乗せられてドライブに行ったら途中で襲われる。
一人は草むらでアキレス腱と首を切られた血まみれの死体で見つかり、もう一人は首を絞められて気絶したものの、命に別状はなかった。今もって、犯人はわからない。
この事件で一気に、地方の子ども達にとっても歌舞伎町は怖い街となった。
当時の私は、自分より三つも下の彼女らが夜通し都会の繁華街で遊び、夜明けにスポーツカーで大学生とドライブなんかしていた、ということに衝撃を受けた。
彼女らを可哀想、犯人をひどい奴、と思う気持ちも無論あったが、何やらうらやましく妬ましく感じたのも事実だ。私は同級生とあぜ道を自転車で走り、河原でアンパン食べて日暮れにはうちに帰ってたんだから。
しかし後年、この事件の印象は変わっていく。私は大人になって結婚して離婚して小説書いて上京して、曲がりなりにも作家とタレントになった。いろいろイタいこともやらかしているが、思いがけずプチ有名人になって小金も稼げるようになった。
何より、あの歌舞伎町にマンション買ってしまったのだ。あのディスコ殺人のニュースを見たとき、自分に歌舞伎町に住む未来があるとは想像も予想もできなかった。
いつからか私は、なぜ被害者の女子中学生のうち一人は惨殺で、一人は生き残ったのか、そこのところに自身を重ねて考えこむようになった。