オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第259回 エンタメとして味わいたい人の怖さのウラガワ(1)
◆もくじ◆
・エンタメとして味わいたい人の怖さのウラガワ(1)
・最近の志麻子さん
【配信版】月刊オメ★コボシ【9月】 10/5まで配信
次回、10/16「【配信版】月刊オメ★コボシ」
TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
「岩井志麻子のおんな欲」連載中
カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中
・著者プロフィール
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なかなか収束にいたらない新型肺炎。
怖い話が大好きな岩井さんも、これらの話はまったくもって楽しめる要素が見いだせない。
今月は、新型肺炎とは関係なしの、生きた人が怖い系の話を特集!
出版関係の仕事をしているという男性が、たまに行く飲み屋で話しかけてきたのだが、彼の話す妻のエピソードは、凄いものだった。この夫婦には子供は居ないのだが……。
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2014年11月~18年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2019年1月「去年に縁があったあれこれのウラガワ」
2月「台湾で初めて会った人たちのウラガワ」
3月「胸に引っかかる人を思う春のウラガワ」
4月「こういう人いるよねという出会いのウラガワ」
5月「働くということについて考えたウラガワ」
6月「私なりのプロファイリングをしてみたウラガワ」
7月「芸事業界の人たちの願いごとのウラガワ」
8月「怖さひかえめな怖い話のウラガワ」
9月「まだ挽回できるかどうか気になるウラガワ」
10月「なぜか惹かれる未解決事件のウラガワ」
11月「今頃になってわかってきた出来事のウラガワ」
12月「とりあえず終えたかな、というウラガワ」
2020年1月「愛しい南国の怖い話のウラガワ」
2月「ひきつづき東南アジアの怖い話のウラガワ」
3月「どこか心残りの別れのウラガワ」
4月「未経験な世の中のあれこれのウラガワ」
5月「「あの人実は」「あの人やっぱり」のウラガワ」
6月「アマビエ的なものや人のウラガワ」
7月「怖い話をエンタメとして楽しみたいウラガワ」
8月「どこか楽しめる怖い話のウラガワ」
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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ/ソウルの新愛人のウラガワ/風俗嬢の順位競争のウラガワ/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ/「大人の夏休みの日記」なウラガワ/その道のプロな男たちのウラガワ
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季節は秋になり、完全に一年の後半に入ってしまっているのに。春先から猛威を振るった新型肺炎は、まだ完全収束には至らない。
子どもの頃から怖い話が大好きで、ついにホラー作家になってしまったほどの私も、これにまつわる話はまったくもって楽しめる要素が見いだせない。
病気そのものも怖いが、感染者を差別したり悪者扱いしたり忌避したり、ちゃんと気をつけている人達に対しても嫌がらせをしたり、やっぱり生きた人間が怖い、と暗澹たる気分におちいった。本来、生きた人が怖い系の話も、大好物だったはずなのに。
そんなわけで今月は新型肺炎とは関係なしの、生きた人が怖い系の話を特集してみる。
全編に渡って登場人物はすべて仮名、背景にも脚色を加えてある。匿名になると人は怖い、というのは前々からわかっていたが、この措置はプライバシー保護の観点からだ。
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植田さんは出版関係の仕事をしているといい、たまに行く飲み屋で話しかけてきた。私とはあまり縁がないというより、私は絶対に執筆しない系の出版社だった。
失礼だが実年齢よりかなり老けて痩せた顔色の悪い人で、なんとなく粘着質の暗い雰囲気もあったので、あたり障りない対応を心掛けたつもりだ。
なのに彼は妙に慣れ慣れしく私の隣に来て身を寄せ、いきなり奥さんの話を始めた。
彼によると奥さんは主婦で、たまにライター仕事を請け負っているとか。若いとき婦人科系の病気をし、自然妊娠は困難になった。夫婦ともにもう四十半ばなので、完全に子どもはあきらめた。子どもがわりに、可愛い柴犬を飼っているそうだ。
「妻は子どもができなかったことを、とても残念がっているんです。僕は、子どもはいなくていいとずっと前からいってましたよ。老後は二人で世界一周の旅をしようとか、がんばってお金貯めて二人で豪華な老人ホームに入ろうとか、慰め励ましてました」
あら、意外といい人、いい旦那さんだわ。ちょっと見直した。
「妻はSNSで知り合った友達も何人かいて、特に東南アジア某国の駐在員夫人と仲よくなって、彼女とは毎日ラインでやり取りしてるといってました」
その駐在夫人は、若いときは読者モデルなどもしていた美人で、旦那さんは現地でレストランや旅行会社などを成功させ、セレブな生活を送っている。
「正直、僕はその奥さんに興味もないし。むしろ、そんなゴージャスな暮らしを見せつけられたら、庶民の自分がみじめになるでしょ。だから妻がよく話題にしても、彼女の画像を見せてくれなんていいませんでした」
そんなある日、植田さんは別件でこっそり妻のスマホを盗み見ることになる。
「妻が昼間、どこかの男と二人で食事しているのを知り合いがたまたま目撃して。なんかいい雰囲気だったなんていわれたから気になって」
妻が風呂に入っている間に、初めて妻のスマホを盗み見た。そいつとラインのやり取りをしていないかと探っていたら、例の駐在夫人とのが出てきた。
「何気なく見て、びっくりしました。男と浮気しているんじゃないかなんて、どうでもよくなったくらいに。ちなみに、浮気疑惑も単なる仕事関係の男で終わりました」
奥さんは、愛犬を自分のアイコンにしていた。駐在夫人はかなり加工もしているのだろうが、なかなかの美人だ。常夏の国らしく、いつも露出度の高いラフな格好だったが。
確かに、ゴージャスなセレブな暮らしをしているようだ。よく出てくる自宅はホテルのスイートルームと見まがうほどで、現地の有名レストランや高級ホテルのバーなどが、これでもかとばかりに出てくる。
だが植田さんは、妻が送っている画像に衝撃を受けていた。
「まったく僕の知らない子なんですが、とにかく可愛い幼稚園児くらいの女の子の画像が、毎日アップされてるんです」
奥さんはそれを、自分の子どもということにしていた。
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