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窪寺博士のダイオウイカ研究記-その22

2019-08-26 14:55
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    【本号の目次】
    1. 東海大学海洋学部・望星丸実習航海
    2. 望星丸の船内生活
    3. 海洋観測実習開始
    4. 魚釣実習、そして深海カメラ調査

    東海大学海洋学部・望星丸実習航海

     2008年6月はちょっと変わった方法で小笠原に行けることになった。2000年に立ち上げたマッコウクジラ胃内容物解析チームの共同研究者である東海大学海洋学部の大泉宏助教から、大学の「望星丸」が6月に実習生を乗せて小笠原沖に航海する計画があり、その航海に私と森さんも乗船できるかもしれないと耳打ちされた。実習航海責任者の澤本教授は知己の間柄である。早速澤本先生に連絡を取り、学生実習のお手伝いをするのを条件に私の深海カメラによる調査もさせてもらえる内諾をもらった。最終的に、東海大学の理事長宛に「小笠原近海における中深層性大型頭足類の水中HDビデオカメラ撮影」を目的に2008年6月10日~14日までの乗船許可願を提出し、受理された。
     望星丸は1993年に東海大学海洋学部50周年記念事業として竣工された全長88m、幅12.8mで総トン数1,777トンの大型海洋調査船で、教員・調査員17名と実習・研修学生140名を乗せて遠洋国際航海を行う資格を有する第一種船舶である。私は望星丸の母港である清水港から小笠原・父島までの片道航海に乗船させてもらえることになった。

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    父島二見港内に錨泊する「望星丸」

    望星丸の船内生活

     6月10日朝10:00、清水港の清水市岸壁を離れた望星丸は、手を振り見送ってくれた学生や両親を岸壁に残して、一路小笠原を目指し南に舵をとった。船内では澤本先生や大泉先生が実習生を集めてレクチャーを開始した。11:30昼食の後、私は研究室に持ち込んだ深海カメラとライトを組み立てて、吊り具や仕掛けなどの準備を始めた。ボースンをはじめ甲板員の皆さんが興味深げに集まってくれた。カメラを納めたブリンプやLEDライトの接続など説明してどのように吊り下げるか相談すると、さすが調査船の乗組員である、直ちに5㎜ワイヤーのウインチを使って左舷から下すことが決まった。
     レクチャーが終わった実習生たちも研究室に集まってきて、深海カメラを触りながらなんだかんだと質問攻めにあった。しかし、なんと女子学生の多いことだろう。昔は海の仕事は男のものと決まっていたのだが・・・。若い女性たちに囲まれて、慣れない私はしどろもどろになってしまった。そういった意味では、私より二回り近くも若い大泉先生はたいしたものである。夕食前に明朝に予定されている動物プランクトンネット(ORI-net)の組み立て作業を指導して、17:30夕食、自室で一杯やってから20:30就寝。

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    後部甲板で動物プランクトン採集用のORI-netをスタンバイする

    海洋観測実習開始

     6月11日朝、調査地点1に到着。ORI-netによる同時水平多層曳(表面, 100, 200, 500, 1000m) で動物プランクトンの鉛直分布を調べる調査を行った。船尾のワイヤーに所定の水深に合わせてネットを取り付け、ワイヤーが水面と45度の角度をキープするように船速を調整して45分ほどを曳いたあと、揚収して各々の水層別に採集された動物プランクトンを標本瓶に入れてホルマリンで固定する。ネットの洗い方やホルマリンの濃度など、結構お作法がある。澤本先生が丁寧に学生たちを指導する。私も若いころに培った海洋調査経験を基にお手伝いをした。さらに、CTD(海洋観測機器)による水深1000mまでの水温と塩分の鉛直プロファイルの海洋観測を行い、全部で三時間ほどの調査となる。昼食のあと、調査地点2に移動して、別の班がおなじ採集・調査を実習する。手の空いた学生は、船橋(ブリッジ)の上で海生哺乳動物の目視調査をしている大泉先生の指導をうけながら、イルカやクジラ、海鳥など双眼鏡をつかって探し出す。午後遅くハンドウイルカの大群が目視されたと聞いた。

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    実習生に採集された動物プランクトンをどのように処理するか説明する澤本先生

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    採集された動物プランクトン。左から表層、100m、200m、500m、1000m

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    採集物の中からソーティングされたイカ稚仔(ナミダホウズキイカ)

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    望星丸の船橋の上(アッパー・ブリッジ)a4ed76c6a82222939a83bdb0e769db01734513c8で目視調査の実習をする学生たちと大泉先生

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    ハンドウイルカの群れが望星丸に近寄り、ジャンプをみせてくれた

    魚釣、そして深海カメラ調査 

     6月12日早朝には小笠原列島の西方100㎞ほど離れた西之島に接近した。この海域で引き縄漁と手釣りの実習を行う予定である。ボースンと甲板員の指導で実習生が引き縄を海に投入して船を微速で走らせながら当たりを待つ。カツオやキハダマグロなどがぽつぽつ釣れあがってきた。さらに島に近づき船をドリフトさせながら竿釣を試みる。海洋学部に来た学生だけに魚釣を趣味とするものも多い。早速、持ち込んだルアーを投入して、カッポレやモンガラハギ、大型のハタなど短時間で釣り上げた。昼食の後に小笠原父島近海に移動し、調査地点3にて動物プランクトン採集や海洋観測実習をおこなった。
     午後5時過ぎ、小笠原ホエールウォッチング協会の森さんが漁船に乗って、望星丸に乗り込んできた。そして、森さんの協力を得て深海カメラをCTDのワイヤーを使って海中に下し、水深400m、600m、800m各層で各々30分間の撮影を行った。カメラを揚収した後、学生ルームで興味を持った学生達と撮影された動画の確認をおこなった。残念ながら船のローリング(横揺れ)が直接カメラを上下に動かしたため、よい映像は得られなかったが、学生たちには良い実習となったに違いない。

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    研究室で大泉先生と深海カメラのスタンバイをする

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    CTD用のウインチワイヤーに吊り下げられた深海カメラ。

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