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小池壮彦 怪奇探偵ブロマガ vol.43
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小池壮彦 怪奇探偵ブロマガ vol.43

2014-05-23 20:00
     ちょっとしたクイズなのだが、こんな問いがあったら、どう答えるか。

     Q.もし日本列島に位置する〝在日米軍基地〟が他国に攻撃された場合、それに対する〝アメリカの自衛行動〟というのは、アメリカの個別的自衛権か、それとも集団的自衛権か?

     世の新聞の論調ではあるまいし、こういう問いを発すること自体、ばかばかしいと思えるかもしれないが、これはいまから54年前の1960年に、衆議院日米安保等特別委員会で、当時の社会党議員・岡田春夫が実際に質問したことである。答えはどうかというと、当時の法制局長官・林修三は次のように答弁した。

     在日米軍に対する攻撃については、日本にいる以上、日本の領土、領海、領空に対する攻撃をせずに、これを攻撃することはできませんから、日本においては、これを個別的自衛権の発動として排除できる。
     しかし米国の立場に立ってみた場合は、いわゆる日本にいようと、どこにいようと、自国の軍隊に対する攻撃ですから、自国に対する攻撃と見て、その場合には個別的自衛権、しかし同時に、日本を守るという意味においては集団的自衛権、この両方の自衛権の発動ということになると考える。

     これはまあ、そういうことでいいだろう。
     しかし、続いて岡田春夫はこんな質問をした。
     こちらがおそらく本旨である。

     Q.在日米軍に対する攻撃は、日本にとってはどうなるのか?
     日本の施設・区域に対する攻撃であるかぎりは個別的自衛権というが、
     しかし、その上にいる在日米軍に対しての攻撃であるかぎりにおいて、
     日本としては集団的自衛権の行使ではないか?

     つまり、日本の領土攻撃に対しての日本の自衛行動は日本の個別的自衛権であるが、在日米軍基地そのものへの攻撃に対して日本が発動する自衛権というのは、日本がアメリカを防衛するのだから集団的自衛権の行使にならざるを得ないのではないか。この点の政府見解を引き出すことが質問の趣旨だったようである。

     さて、世のお父さん、お母さん方は、上記の問題をお子さんにでも出題してみたらいかがだろう。ヒントとしては「日本は集団的自衛権を行使できないことを前提に考えてごらん」とでも言っておけばいい。すると、お子さんはこう答えるかもしれない。

    「日本は集団的自衛権を使えないの? だったら日本は米軍基地を守れないじゃないか」

     もしお子さんがそう答えたら、「おまえね、それがラストアンサーでいいのか?」と確認してみよう。「人が言ったヒントに頼るのではなくて、少しは自分の頭で考えろ」と。

     国会で半世紀以上も延々とやってきた議論というのは、ほぼ言葉遊びの類いである。しかし、日本は集団的自衛権を行使できないという内閣法制局の見解は、建前としてそれなりの意味を保持してきた。〝できない〟というのは、〝できないことにしておく〟ということで、本音は〝やらぬが得策〟だからである。裏を返せば、やる方が得策ならやるのであって、それが実は前述のクイズの答えに関わるのである。

     日本は戦後に国連に加盟して以来一貫して、集団的自衛権を持ちながら、それを行使する権利を保留してきた。ただし、権利を放棄したことはない。憲法上できないというのは、内実を見えにくくするための方便にすぎない。

     もし憲法上できるできないにこだわるならば、日米安保条約そのものが憲法違反である。在日米軍基地の存在も、憲法違反である。それが砂川訴訟の争点だったわけで、米軍の駐留を違憲と判断した伊達判決のことは誰でも知っている。在日米軍基地の存在自体が憲法違反という〝本音〟を言ってしまった伊達秋雄判事の一審判決は最高裁でひっくり返されたが、その逆転判決がアメリカの外交圧力によるものだったことも誰でも知っているはずである。

     要するに、諸々の事情から〝建前〟でやっていることに対して、その種明かしをいまさら云々するのが得策かどうかという議論ならあり得るが、どうやら本気で個別的だの集団的だの、できるだのできないだのと言っているのが今日の政府のレベルである。そして一内閣の解釈変更で方針が180度かわるといった夢オチのコントを真に受けているのが今日のジャーナリズムのレベルである。

     さて前述のクイズの答えである。

     在日米軍基地への攻撃に対する日本の防衛措置が集団的自衛権の行使になるのではないかという質問に対して、当時の法制局長官・林修三はこう答弁した。
     
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