「キ○ガイですね、みなさん(笑)。僕らももっと弾けなきゃダメだなあ」
柳沢 つい先日『かみぷろ』と姉妹サイトとしてオープンした『Tany’s Labo』というサービスがあるんですが、これは格闘技ファンのコミュニティで、様々な話題を議論して、最終的にクラウドファンディングでファンの夢を実現していく、というシステムなんです。
家入 へえ〜、面白そうですね。
柳沢 これ、家入さんがやられている『CAMPFIRE』というクラウドファンディングのサービスが参考になったんです。
サイトのシステム開発をお願いしているチームに僕のやりたいことを伝えたら、「それって家入さんの『CAMPFIRE』みたいですね」って言われて。
「何それは?」って聞いたらクラウドファンディング云々という説明をされて、「ああ、それそれ!そんなのあるんだ」っていうことで家入さんの存在を知った。
で、家入さんのことをググってみたら、なんか僕のアンテナに引っかかる「くだらないこと」をやり倒している若者だった(笑)。
家入 ありがとうございます(笑)。
柳沢 僕らも昔ずいぶんひどい「悪ふざけ」をしてきたんで、家入さんたちが「悪ふざけ」と称してやってることを見てると妙に懐かしい感じがする(笑)。最近はなんか「悪ふざけ」してますか?
家入 つげ義春じゃないですけど、「石を売って生きていくことはできるのか?」というのをやりたくて。
山口 石!?
家入 例えば、「家入一真の石」ということで、僕がその石についてストーリーとか語って、一コ5000円とかで売ったら、売れるのか、売れないのか。もし、売れるのなら、もう僕は石を売って生活していこうかなと思って。
山口 実にいい理想ですね(笑)。
家入 それでミッドタウンまで石を探しに行ったんですよ。ミッドタウンの石と言ったら田舎者が買うかなと思って(笑)。ミッドタウンに石はたくさんあったんですけど。コンクリートで固められてる石ばかりで取れなくて。しかも、あとで調べたら、石でも窃盗になるらしくて。
柳沢 へえ。
家入 ミッドタウンにある石もミッドタウンの所有物だから、勝手に取っちゃいけないらしいんですよ。僕、石を拾って捕まるのも面白いなと思って(笑)。
そういうことをTwitterに書いたら、「全日本愛石協会」という団体があって、『月刊愛石』という雑誌も出てるんですよね。そこから連絡がきて。僕は1コ10万とか20万で売買される石なんて興味ないんですよね。そう言ったんですけど、「まあまあ、でも見て下さいよ」って写真を見せられて。
「ああ、いい石っすね」しか言えなかったですよ。20万だって言ってましたけど、本当にいい石で。
柳沢 思わず買っちゃった?(笑)
家入 いやいや(笑)。あと、石を語ってると、「最終的に人は石に行き着く」と名言を持ってる人がいて。「ああ、家入君もとうとう石いった?」みたいに言われたりして(笑)。「ようやく石に来たかあ。いやあ、石に行くんだよ、みんな一度は」って。
柳沢 「みんな」ってどこの「みんな」だ(笑)。
家入 くだらないことばっかりです。
山口 いやー、実にくだらない(笑)。我々も悪ふざけでは人のこと言えないけど。
家入 昔の方々がやってる悪ふざけってシャレにならないことが多いじゃないですか。(昔の『紙プロ』をパラパラと眺めながら)こういうのを見ると、僕なんか全然ダメだなあと思いますね……これ何ですか!? 「咲かせパンジー」って(「ALWEYS 八丁目の夕日'94」参照)。
柳沢 ああ、誌面で「パンジーを咲かせましょう」っていうだけの企画(笑)。
家入 シュールだなあ(笑)。
柳沢 全然、意味がない(笑)。 「次号、早くもパンジーが大暴走!」って。
家入 やばい(笑)。こ、これは!?
山口 近所の中華料理屋から出前を取って、めちゃくちゃまずくてね。でも、ただ「マズイ」って文句言っててもつまらないから、写真を撮って誌面にして、「ここで取ったらこんな店」みたいなこともしてたよね。
柳沢 ああ、「食いさしですいません」ね。
家入 ひ、ひどい! ひどいなあ〜。この麺がどんぶりから垂れてるところが凄いなあ。
柳沢 わざと汚くして撮ってますから。エッジの効いたInstagram(笑)。あと、初めてカラーページの口絵を作った時には、嬉しくて嬉しくて、その美しさを紅かまぼこで表現してみたり。
家入 「躍動するかまぼこ」って(笑)。ちょっと感動しました、僕。こういうのを本気で作ってるんだもんなあ。でも、これを笑いにできるから楽しいんだけど、いまこれを真剣に捕らえる人ってたくさんいますよね。
山口 当時でも怒られたり、白い目で見られつつ無視されたりしましたけど、なんだかへっちゃらでしたね。
家入 こういうノリがいまないと思うんですよねえ。
山口 ネットの中に、点としてはけっこうあるんじゃないんですか?
家入 ああ、確かにあることはあるけど。『オモコロ』とか。でも、ネットだからコストもかからないし、そこにリスクはないですよね。『紙プロ』はこうやってお金をかけて雑誌を作ってるわけじゃないですか。このページ、ちょっと写真に撮っていいですか?
柳沢 どうぞ、どうぞ。
家入 キ○ガイですね、みなさん(笑)。僕らももっと弾けなきゃダメだなあ。これを作ってたのは何歳ぐらいの時ですか?
柳沢 30歳前後ですね。
家入 いまの僕より若い頃に作ってたんですね。やばいですね。僕も負けてられないなあ。
柳沢 気をつけた方がいいですよ。シャレにならないことばかりやってきてこのザマですから(笑)。
山口 こういうザマになっても、なぐさめることくらいしかできないですから(笑)。
家入 うわぁ、糸井(重里)さんも若いですねえ。
柳沢 この頃の糸井さんが今の我々ぐらいの年齢ですよ。当時は我々も糸井さんから「若手」と呼ばれてた(笑)。 今は我々が「若手」の家入さんに話を聞く。すべてを「世代」で括るつもりはまったくないけど、この歳になると、やっぱり「世代」を感じちゃうんですよね。
家入 僕は今年で34歳になるんですけど、僕の少し上には堀江(貴文)さんとか、藤田(晋)さんとかIT長者がいて。
僕の下の世代になると、僕らと「liverty(リバティ)」というチームを一緒にやってる高木新平君とか、ブロガーのイケダハヤト君とか、新しい価値観を持って出て来た人たちがいて。
失われた30年とか言われてる年代の中で生まれて大きくなった子たちで、いわゆる「草食系」と呼ばれてる子たちなんだけど。
僕は彼らを草食系のひと言で片付けられないなと思ってて。生まれてすぐバブルが弾けて、大きくなったら9・11があったりとか、震災があったりとか、結局、いいことがないんです、ずっと。
「お金が正義」とか、「金が成功の証」とか、「お金をたくさん持ってれば幸せ」とか、大人たちは言ってきたけど、「結局、それ嘘じゃね?」というのが僕らの下の世代、20代の考え方なんですよ。
「お金なんか別にいらない」という子が本当に多くて。こういう子たちに最初に出会った時には「何、ぬるいこと言ってんの?」と思ったんだけど。実際に触れ合って見ると、リアルにそう思ってて。
お金じゃないところに幸せを求めていて。月5万ぐらいバイトをして、残った時間で読書したり、友達と遊んだり、物を作ったり、NPOを手伝ったりしてた方が彼らは幸せなんですよ。
だから、彼女と付き合うのなんかも面倒臭いし、セックスもダルいし、みたいな。僕らお金があればすぐキャバクラに行ったりしてたんだけど。
山口 ああ、家入さんはまだそういう心持ちなんだ?
家入 全然そうでした。会社を上場した時に得たお金は、ほとんど六本木や西麻布で消えちゃったので(笑)。
山口 握手したくなってきたね(笑)。
家入 もっとお金を持ってる先輩たちから「そんな飲み方してたら、あっとういう間に酒でお金は消えるからね」って言われてて。「まあ、そんなこと言っても、簡単にはなくならないでしょ」と思いながら飲んでたら、ホントになくなって(笑)。
山口 なくなりましたか!でも、そういう時って、どっかで「なくなってもいいや!」という気持ちもあったでしょ?
家入 ええ。結局、自分で0から作ってるから、最悪0に戻るだけだなというのはあって。