「WBCとマーケティング?」
山口 WBC盛り上がってるみたいだねえ。見てる?
斉藤 見てるよ。
柳沢 見てますねえ。
山口 見てるの! すげえな、見るんだやっぱり。俺、見ないもん。
斉藤 オランダ戦のTBSの視聴率が34・4%。瞬間最高は44・6%だったんでしょ。
山口 そんなにいったんだ。プロ野球の人気がなくなった云々と言われて久しいのに、サッカーでいうW杯的な世界大会になると、それだけ盛り上がるんだねぇ。
柳沢 確かに盛り上がってはいるけど。まわりがみんなこの話題で一色というほどは盛り上がってる感じでもないよね。物凄く盛り上がってる感がない中で、それでも視聴率30%以上を取るという。それがいまのテレビの仕組みですね。
山口 はぁ、テレビの仕組み?
柳沢 いまテレビを見てるのは若い人じゃないよね。野球は年寄りがみんな見てるから数字を取るんでしょ。
斉藤 サッカーではわんさかいる、普段の試合は見ないけど、代表戦になるとスポーツ・バーとか行って盛り上がる若い人たちが、野球でも出てきた気はするけど。
山口 サッカーでも野球でも代表戦になるとこれだけ盛り上がるというのはどういう現象なの?
柳沢 「グローバルの中の日本」という闘いじゃないと盛り上がれないんじゃないの?
山口 K-1やPRIDEでも、グランプリになるとローカルなストーリーのときより盛り上がったもんなあ。それと同じ周波数ということ?
柳沢 まあ、「最高峰」という安心感はあるんじゃない? それと世界の中における日本のアイデンティティを実感するにはスポーツが一番お手軽だし。
斉藤 あと単純に、日本は潜在的に野球が好きな人の数がまだめちゃめちゃ多いんでしょ。だから、ちょっとしたきっかけさえあれば、30%ぐらいすぐ取れちゃうんじゃないの。
山口 確かに潜在的な野球ファンはまだまだいるんだろうなというのは感じる。
柳沢 だから、やっぱり年齢の問題がすごく大きいと思うよ。野球を見てるのはテレビが好きな層=年齢が高い層だということがはっきりしたんじゃないの?
30%以上取ったということは世の中のほとんどの人が知ってるっていうイメージだけど、若い人と話した時に、「いやあ、井端は凄かったねえ」という話をする人がどれだけいる? イケダハヤトくんは井端なんて知らないでしょ(笑)。
山口 イケダハヤトくんは、断然WBCよりNPOだろうねぇ。
柳沢 井端の大ファンだったりして(笑)。
山口 俺は野球そのものに興味がないから、WBCで日本が勝とうが負けようがどうでもいいし、どんな感じの楽しみ方をしてるのかもよくわかってないんだけど。WBCに関してターザンがツイートしてたのよ。
柳沢 ほう。
山口 「日本人って本当に真剣勝負が好きだなあ。ここで負けたらすべてが終わってしまう。ここで敗れたら潜在意識的に、深層心理的に死を想像してしまう。そういうシチュエーションが日本人にとっての真剣勝負の意味なのだ」って。
これを見て、日本人の死生観というか、「ここで負けたらすべてを失ってしまう」みたいな勝負論が好きなのはいまも変わらないのかなぁと思った。日本人って土壇場から這い上がるみたいなのが好きじゃない。
でも、いまの若い人は土壇場なんか経験しても無駄、非合理的みたいな世界観の中で生きてるよね。負荷をかけないというか。それでもなぜ、スポーツだと土壇場感で興奮するのか。そのヘンが興味深いな。
柳沢 格闘技で俺らもよく「心が折れた」という言葉を使ったけど。コールド勝ちしたオランダ戦を見てても、欧米人って簡単に心が折れるよね。
斉藤 「リングスのオランダ人選手を思い出した」みたいなツイートをしてた人がいたよね。
山口 折れたら立ち上がるわけがない、オランダ人(笑)。
柳沢 日本の場合、一度、ポキッと折れてからが勝負だからね(笑)。大山倍達じゃないけど、「右腕が折れたら左腕で倒しなさい。両腕折れたら足で倒しなさい。両足利かなくなったら噛み付いてでも相手を倒しなさい。 手と足が利かなかったら睨みつけて倒しなさい。それでも死んだら化けて出て倒しなさい」という。日本人はこういう死生観でやってるからね。
山口 そういう死生観が、めぐりめぐって形骸化して体罰の問題なんかにも繋がっていくんだろうけどね。
グローバルな価値観の中では、スポーツの世界であっても体罰なんかもっての外となっていく中で、そういう日本人の死生観がどう変遷していくのかなあ、という興味はあるよね。
柳沢 しかしさ、台湾戦の9回ツーアウトからの井端の同点タイムリーは、前回のWBC決勝の韓国戦のイチローの決勝タイムリーのあの状態とはまったく違う印象を受けたというか。
同じようなすごいシーンだと言われてるけど。とにかく今回の侍ジャパンは物語性がなさすぎるよね。今回のチームはスケール感が二軍だから。だから、物語が一般受けしてないよね。
斉藤 普段から野球を見てる人にとっては、井端なんかは物語がある方だけどね。数年前に目の手術をしてから成績が下がって、もう引退かというとこまで追い込まれて。
そこから這い上がってあの舞台に立って大活躍してるという。でも、普段の試合を見てなくて、WBCだからってことで盛り上がってるような人たちにはそんな話は何の意味もない。
柳沢 そう。そういう個人の物語があって、台湾戦の翌日にワイドショーで扱われたりして、ちょっと騒がれたぐらいの話で。そのストーリーは一般的な話ではない。
前回のWBCでイチローが胃に穴が開くほど打てなくて、最後の最後においしところを全部持っていくヒットを打ったというのは、日本中が共有してたストーリーだったじゃない。
試合の勝ち負けで言えば、井端のヒットもあれと同じぐらい価値があったけど、一般の人までそのすごさは伝わってない。WBCはそこまで関係ない話になっちゃってる。だから、オランダの心の折れ方のほうによっぽど興味がいくという(笑)。
斉藤 また日本にコールド負けした翌日にけろっとキューバに勝っちゃったのも笑える。日本戦をさっさっと諦めたからまだ余力があったわけでしょ。
柳沢 オランダの気風って、チームラボの猪子寿之さんが座右の銘だと言ってる「自由、寛容、合理的」そのものだよね。
山口 これまでの日本式の負荷のかけ方と真逆だよね。
斉藤 そんなことよりさあ、WBCの盛り上がりを見て、『かみぷろ』をヒットさせるヒントを何か導き出せないの?
柳沢 ターゲットを考えることでしょ。「ああ、そうか。野球はじいさん、ばあさん相手でいいんだ」と。『かみぷろ』も、●△×▼○!&$、また違った相手には違ったむにゃむにゃうにゃむにゃうにゃということを考えていけばいいんじゃないの。
斉藤 ……何言ってるのか全然わかんない。
柳沢 えーっ! こんな明朗快活に滑舌良く答えてるのに!
斉藤 「WEBで『かみぷろ』を成功させるためのキーワードは五つ」とかさ、もっとわかりやすく説明できないの?
柳沢 俺はできない!
山口 俺もできない!
斉藤 断言かよ(笑)。
柳沢 「キーワードは五つ」とかすぐ出てくる人はプレゼン慣れしてると思うんだけど。俺はいま、他人を説得する機会がないんだよねえ(笑)。
斉藤 でも、君たち二人はスポンサーを騙したりするのがうまかったんじゃないの?
山口 また、言葉が妙な角度でえげつないなあ、君は(笑)。
斉藤 昔からいいかげんなプレゼンは得意だったよね。
柳沢 いいかげんじゃない、いいかげんじゃない。ただ、そんじょそこらの詐欺師には負けませんよ、ぐらいだね(笑)。
山口 負けませんよ、詐欺師ごときに!俺はウサギ年生まれだけにね。
斉藤 ……レベルが低いよ、ダジャレの。
柳沢 俺はね、マーケティングが苦手なの。もっとはっきり言えばマーケティングが嫌い。
斉藤 そんなんでどうやってプレゼンするの?
柳沢 プレゼンは幻想が大事なんだよ。
斉藤 出た、“幻想”。そんな言葉、いま誰にも通じませんよ。
山口 だから、まさしく幻想が通じなくなった時代に、『かみぷろ』はどう幻想を作り出すかってことだよね。
柳沢 そう、結局そこですよ。逆に俺がプレゼンされる側だったら、「こういう五つのキーワードがあります」とか言ってプレゼンするヤツを信用しない。そこに幻想が生まれないから。
山口 同意! 五つのキンタマがあるやつだったら信用するけどね。
斉藤 幻想以前に、下品にもほどがあるでしょ、キミの場合。
柳沢 マーケティングはある程度、数字の実績に裏付けされてるから、そういう話にお金を出したいという人はいっぱいいるでしょ。でも、そんな数字の話はつまんないという人も世の中にはいっぱいいるよ。
斉藤 そう言われるとマーケティングと幻想って完全に真逆だね。
柳沢 そうそう。俺はプレゼンでは完全に幻想の方に走る(笑)。
山口 俺たちは幻想しか提示できないもんね(笑)。困ったもんだよな。だから、この俺らの体質を変えれば『かみぷろ』もすぐヒットすると思うよ。
柴田 じ、じゃあ、すぐ変えてくださいよ!
山口 なんだおまえ、モゴモゴと。しかも秋田出身のくせに突然出てきやがって!
柴田 あ、秋田は関係ないでしょ!
柳沢 学力評価全国一位の秋田で日本語を満足にしゃべれないのは、おまえとかかしとナマハゲだけだっていうじゃねえか!
柴田 か、かかしもナマハゲもも関係ないでしょ!
山口 もういいよ。柴田と話すのはもうアキタ!
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