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【1993 〜日本格闘技近現代史〜】 第10回 見習い期間は試練の期間。
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【1993 〜日本格闘技近現代史〜】 第10回 見習い期間は試練の期間。

2013-07-25 20:28

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    第10回 見習い期間は試練の期間。

    見習い練習の初日に肘を痛めてしまった僕。もちろん翌日の練習を休む訳にはいかない。何が何でも行くしかないのだ。世の中にはイエスとノーの2つの言葉がある。見習いにはイエスしかない。ノーと言った瞬間に夢から離脱する。あの時代、総合格闘技が始まった頃。まだプロレスの名残がたくさんあった時代。古い時代のプロレスの匂いが残った空間。プロレスの新弟子にもノーはない。僕はプロレスから総合格闘技が生まれる瞬間もそこにいた。

    当時はプロレス風の言葉も総合格闘技の中に残っていたりしたものなのです。何かをお願いする時には“○○○○○ごっちゃんです”。本当にそう言っていた。“ミットを持ってくれますか?”こう言えば分かるのに。“ミットごっちゃんです”と言われて僕はミットを持ったりしていた。

    あの頃は今の総合格闘技にはないプロレスの言葉、相撲用語からの流れの言葉が身近にあった。ご飯は何でも“ちゃんこ”と呼ぶのだ。相撲部屋で使う言葉みたいな感じが総合格闘技の始まりの修斗(当時はシューティング)では普通に使われていたりした。

    買出しに行く時には、“ちゃんこ銭ごっちゃんです”と言うとお金がもらえた。不思議な感じで結構楽しかった。自分の知らない世界を感じた。プロレスラーも相撲の流れでちゃんこ鍋を食べる。ちゃんこ鍋には色んな種類がある。水炊きや味がついた鍋。水炊きのたれにも色んな種類があるし、鍋の味にも色んな種類がある。

    野菜と肉の組み合わせも決まっていたりした。なぜか鶏肉にはキャベツがお約束だった。豚肉にはニラを入れるとか、色々な決まりがあってその組み合わせが美味しいのだ。ちゃんこを食べながら自分が憧れた世界に入っていることを感じたりした。今、総合格闘家になったという実感をちゃんこ鍋食べながら感じる人はいないだろうな (笑) 。

    もっとも見習い期間中は練習が終わったら、そのまま飯田橋に帰って一人で真夜中に食事をしていた。ちゃんこ鍋を毎日食べるのはもう少し先だ。肘が痛かろうが、動かなかろうがそんなことは全く関係のない世界。僕はそんな世界に入ったのだ。

     
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    最終更新日:2015-06-24 12:10
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