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第26回 グレイシースタイル。

日曜日は練習が休みだ。最初の日曜日だけじゃなく、日曜日にはいつもカーリーは僕を誘って色んな場所に連れて行ってくれた。カーリーの2人の息子達もいつも一緒だった。ロストンとクラーク。ロストンは幼稚園児、クラークは小学3年生だった。今はもう2人とも立派な大人になっている。

カーリーに「子ども達は柔術をやらないの?」と聞いてみた。「今はまだやらせない。でも彼らはよく道場で遊んでるだろう? それで今は十分なんだ。小さいうちから、道場の空気を吸って育つことが大切なんだ。空気を吸うように、柔術の空気を吸って育つ。それが大切なんだ。小さいうちから、詰め込むと息苦しくなる。そうなれば空気を吸うように柔術と付き合えなくなる。もう少し大きくなって柔術を始めたら、毎日空気を吸うように柔術と向き合うようになる。空気を吸って生きるように柔術で大きくなってゆく」

確かにカーリーは子供たちに柔術を強要していない。たまに道場で遊んであげてるだけだ。技がどうとか教えてるのを見たことがない。道場で大人がやってるのを見て子供たちが真似をする。それをただ笑って見ている。難しいことは一切教えていなかった。ただ笑って見ていた。

でも日常に柔術があるからか、子供たちの動きは結構サマになっていた。きちんと教えたら強くなるのに……何てことを思ったりもした。それが余計なことなんだろうな。せっかく楽しくやってる子供に大人が余計な智恵を授ければ子供は確かに伸びる。でもその伸びたものは人からもらっただけのものだったりもする。細かいテクニックなんていつでも習えるのだ。子供にはそんな余計なものは邪魔にさえなる。