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ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第2回:北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』
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ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第2回:北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』

2014-09-10 03:30
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ほぼ週刊若者論テキストマイニング
第2回:北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』

\QRK(急にリクエストが来たので)/

いや驚きました。8月31日の「コミティア109」のサークルペーパーで、鈴木謙介氏の『サブカル・ニッポンの新自由主義――既得権批判が若者を追い込む』(ちくま新書、2008年)のテキストマイニングをやる、ということをコミティアの会場に向かう東北新幹線の車内で宣伝したら、なんと過去に私が『おまえが若者を語るな!』(角川Oneテーマ21、2008年)で批判した、社会学者の北田暁大氏からリクエストが来てしまい…。

【訂正】コミティアのサークルペーパーでは、鈴木謙介氏の『サブカル・ニッポンの新自由主義』(ちくま新書、2008年)のテキストマイニングを行っています。若者論本のテキストマイニングは今後も続けていく予定です。 pic.twitter.com/RZU2rPTJ0A

― 後藤和智@大阪文フリE34/大⑨州L19 (@kazugoto) 2014, 8月 30


わたしの本もしていただけると改定版に活かせるんですが…|ω・`)@kazugoto コミティアのサークルペーパーでは、鈴木謙介氏の『サブカル・ニッポンの新自由主義』(ちくま新書、2008年)のテキストマイニングを行っています。若者論本のテキストマイニングは今後も続けていく予定です

― 北田暁大 (@a_kitada) 2014, 8月 30


というわけで、いずれ採り上げることになるであろうと思っていましたが(注:今回北田氏のリクエストを受けたのは、今回採り上げる著作が将来的に採り上げる予定であったことと、北田氏が信頼の置ける書き手だと判断したためであって、外部からのリクエストは原則受けていません、念のため)、予定を繰り上げて、北田氏の『嗤う日本の「ナショナリズム」』(NHKブックス、2005年)を採り上げることとしました。同書は1960年代~1990年代のサブカルチャーを採り上げて、2005年のネット上における所謂「右傾化」について論じた本ですが、今回再読しても、最初に読んだような、サブカルチャー談義に終始して現実とのつながりがどれだけ担保されているのか、という疑問はあまり消えませんでした。また、同書も、残念ながら、香山リカ『ぷちナショナリズム症候群――若者たちの新ニッポン主義』(中公新書ラクレ、2002年)の流れを受けるような、〈若者文化論〉としての「右傾化」論、という枠組みを、残念ながら脱しきれていないような気もします。もっとも、香山氏のように、ひたすら「若者」的なものを「右傾化」の源泉として、さらに自民党などの動きと重ねて「病気」とレッテルを貼るようなものに比べれば格段に良心的ではありますが…。

とはいえ本論の目的はあくまでもテキストマイニングであり、単語の使われ方や関係から書籍の内容を見るというのが主目的ですので、これ以上の論評は差し控え、分析に入りたいと思います。なお今回は、北田氏の著作のみならず、いくつかの関連書籍を交えた分析も行います。今回も、例によって単語の集計と、多次元尺度法及び対応分析による単語の布置を行います。また今回から、KH Coderに実装されている機能である、コーディングルールによる集計を行います。そのほか、今回は関連する複数の書籍を交えた分析も行います。

1. 単独での分析

まずは、北田本単独での分析を行います。今回抽出した主要な単語を表1にまとめました。とはいえこれらの抽出結果の羅列ではわかるものもわかりませんね、というわけでまず、出現回数24以上の単語のうち、名詞(ひらがなだけのものを除く)を多次元尺度法で2次元にプロットしたものが図1となります。まず横軸を見ると、右側に連合赤軍関係、左側にサブカルチャー関係の単語が並び、縦軸は上は思想、下はバブル文化系の単語が並んでいることがわかります。

表1-1
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表1-2
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図1-1
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続いて、対応分析を見てみましょう(出現回数25以上が対象。表1-3,4、図1-2)。こちらも、前回分析した『サブカル・ニッポンの新自由主義』と同様に、ある程度はっきりと章ごとに分かれたと思います。北田氏が『嗤う日本の「ナショナリズム」』の中で、どのような言葉を使ってそれぞれの時代を語っているか、ということが浮かび上がってくる結果となりました。また第1,2主成分を平面上にプロットした場合、70,80,90年代については(第2主成分では違うものの)横軸ではある程度の共通性も見えてきます。第1主成分の負方向には、主として80年代以降のカルチャーに関するもの(「なんとなく」「クリスタル」(=田中康夫の『なんとなく、クリスタル』)「ヘンタイよいこ」「ビックリハウス」「浅田」(=浅田彰)「重里」(=糸井重里)から「2ちゃんねる」に至るまで)が並んでいますので、第1主成分は「連合赤軍/サブカルチャー」の軸と言うことができるでしょう。第2主成分は、おそらく「80年代」と「ポスト80年代」を分つものと言うことができます。なお、図1-2のプロットにはありませんが、第3主成分についても検討してみると(第3主成分までで累積寄与率73%程度)、「文化/思想」という軸になるのでしょうか?負の方向に「なんとなく」「クリスタル」「浅田」といった80年代における”思想”を解説する言葉のほか、連合赤軍関係もいくつかありますし。

表1-3
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表1-4
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図1-2
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最後に、今回から導入したコーディングを使って関連する単語を集計したものを見てみます。北田本の分析には次のコーディングを用いました。

#基本

*かもしれない
かも+しれる+ない | かも+しれる+ます+ん

*若者
若者 | 若い+人 | 若い+世代

*彼ら
'彼ら' | 'かれら'

#書籍オリジナル

*アイロニー
アイロニー | イロニー | アイロニカル | アイロニズム

*ロマン主義
ロマン+主義

*60年代
'六〇年代'

*70年代
'七〇年代'

*80年代
'八〇年代'

*90年代
'九〇年代'

*サブカルチャー
'サブカル'

' 'で囲まれたものは「表記」そのものを、囲まれていないものは単語(原形)を示し、+は連続、|はor、(ここには出てきませんが)&はandを示します。表1-5にその集計結果を示しますが、「若者」と「彼ら」について分析、ついでに単語の「世代」について、小見出し・段落単位で集計したJaccard係数(集合の類似度を示す係数)を集計しました。ただ、コーディング「若者」と「彼ら」については取り立てて特徴的なものはあまり見られないような気がします。また単語「世代」に対しては、もっぱら全共闘世代、そしてその後の「しらけ世代」に関する単語が並んでいるのが特徴的で、北田氏は特定の「世代」概念を使って特定の社会集団の特徴を指し示すことが有効であるのは全共闘、そしてその後のポスト全共闘の少し後までとしているのではないか、と推測することができます。なお、単語「世代」の段落ごとの集計で、下の方ではありますが「稲葉」と「糸井」が並んで、私は「日ハムか!?」と思ってしまったのは公然の事実です…が、決して「稲葉篤紀」と「糸井嘉男」ではないですからね。「稲葉三千男」と「糸井重里」ですからね(というか稲葉(篤)氏は今年で引退ですし(お疲れ様でした)、糸井(嘉)氏は昨年からオリックスですし)。

表1-5
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表1-6
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2. 関連書籍と絡めた分析

次に、北田氏が取り扱っている、〈若者文化〉としての若年層の”右傾化”という題材を扱っている次の関連書籍について同時に分析を行い、それぞれの書籍における特徴を見てみることとしました。使用した書籍は、北田本のほか、次の通りです。

鈴木謙介『サブカル・ニッポンの新自由主義――既得権批判が若者を追い込む』(ちくま新書、2008年)
香山リカ『ぷちナショナリズム症候群――若者たちの新ニッポン主義』(中公新書ラクレ、2002年)→「香山a」として扱う。
香山リカ『〈私〉の愛国心』(ちくま新書、2004年)→「香山b」として扱う。

(鈴木本については、辞書の設定が前回分析とは異なるので、単語の集計結果に若干の違いが出ております。また分析のために、北田本単独の分析では、章のタイトルをそのままの表記にしていたのを、章ごとの分析のために「北田_第1章」などの表記に変更しております。ご了承ください。)

基礎データを表2-1に示します。

表2-1
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表2-2
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いくつか分析を行ってみたのですが、ある程度興味深い結果を見ることができたのはコーディングの集計だけだったので、ここではコーディングの集計についてのみ見ていこうと思います。使用したコーディングは次の通りです。

#基本

*かもしれない
かも+しれる+ない | かも+しれる+ます+ん

*若者
若者 | 若い+人 | 若い+世代

*彼ら
'彼ら' | 'かれら'

*保守・右翼
保守 | 右翼 | 右傾

*ナショナリズム
ナショナリズム

#書籍別

*かもしれない_北田
<*かもしれない> & <>書籍分類a-->北田

*かもしれない_香山a
<*かもしれない> & <>書籍分類a-->香山a

*かもしれない_香山b
<*かもしれない> & <>書籍分類a-->香山b

*かもしれない_鈴木
<*かもしれない> & <>書籍分類a-->鈴木

*若者_北田
<*若者> & <>書籍分類a-->北田

(他についても「かもしれない」と同様。)

*彼ら_北田
<*彼ら> & <>書籍分類a-->北田

(他についても「かもしれない」と同様。)

コーディングを集計したのが表2-3となります。単純集計だけ見ると、香山本2冊における「かもしれない」の使用頻度が、他2者に比べてかなり多いということがわかります。夏コミで完全版を出した『「若者の右傾化」論を総括する――平成日本若者論史11』(後藤和智事務所OffLine、2014年)でも示したとおり(近日電子版発行)、香山氏の若者論においては「かもしれない」「(し)つつある」という言い回しの使用頻度が非常に多く、私は同同人誌や、あるいは別の論文(藤原書店主催の「河上肇賞」に投稿。ここでは香山リカの著書65冊について分析)でも述べたとおり、香山氏の――そして他の多くの――「若者の右傾化」論が、論者の政治に関する不安と若い世代の「異常さ」をダイレクトに結びつけて、不安を投影するものだとしましたが、北田、鈴木の両氏といった比較的若い論客については別の見方が必要である、ということでしょう。また北田氏の著作においては、「彼ら」というコードの頻度が他の3者に比べて低いのも特徴でした。その点、北田氏の(カギ括弧付きの)「ナショナリズム」論が、「他者」としての「若者」論とはある程度距離を置いているということの証左と言えるでしょう。また表2-4に著作ごとのコーディングの集計結果を掲載しますが、香山氏の欄においては副詞が異様に出現していることから、私が同人誌などで示した、「不安の投影」という意味での「若者の右傾化」論というあり方は、ある程度実証しうると言えます(『「若者の右傾化」論を総括する』や河上賞応募論文ではもう少し厳密に実証していますが)。

表2-3
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表2-4
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没ネタ:4冊の対応分析(出現回数47以上が対象、第1,2主成分のプロットのみ)

書籍ごと
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章ごと
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資料 登録単語(両方の分析で共通)
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参考文献
樋口耕一『社会調査のための計量テキスト分析――内容分析の継承と発展をめざして』ナカニシヤ出版、2014年

今後の予定
第3回:土井隆義『「個性」を煽られる子どもたち』『キャラ化する/される子どもたち』『つながりを煽られる子どもたち』(すべて岩波ブックレット、2004年/2009年/2014年)、『友だち地獄』(ちくま新書、2008年)
第4回:門脇厚司『社会力を育てる』(岩波新書、2010年)
第5回(繰り下げ):イケダハヤト『年収150万で僕らは自由に生きていく』(星海社新書、2012年)、『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』(光文社新書、2014年)/「仙台コミケ219」のサークルペーパーとして配信予定
将来的にやる予定:中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書、2009年)、『ウェブを炎上させるイタい人たち』(宝島社新書、2010年)、『ウェブで儲ける人と損する人の法則』(ベスト新書、2010年)、『ネットのバカ』(新潮新書、2013年)/「第10回東方紅楼夢」のサークルペーパーとして配信予定

【その他告知】

・「コミックマーケット86」新刊『R Maniax Advance――フリーの統計ソフト「R」をさらに使いこなす本』がCOMIC ZIN、とらのあなで委託中です。
詳細:http://ameblo.jp/kazutomogoto/entry-11893629865.html
COMIC ZIN:http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=20776
とらのあな:http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/23/61/040030236180.html

・「第10回東方紅楼夢」にサークル参加予定です。
日時:2014年10月12日
場所:インテックス大阪(大阪市営南港ポートタウン線「中ふ頭」駅より徒歩2分程度)
スペース:「E」ブロック27b

・「第2回文学フリマ大阪」に一部同人誌を委託します。
日時:2014年9月14日
場所:堺市産業振興センター(大阪市営御堂筋線・南海高野線・泉北高速鉄道「なかもず(中百舌鳥)」駅より徒歩5分程度)
スペース:「E」ブロック34「でいひま」様

・「大⑨州東方祭10」に一部同人誌を委託します。
日時:2014年9月14日
場所:北九州市・西日本総合展示場(JR各線「小倉」駅より徒歩5分程度)
スペース:「L」ブロック19「虹の戦士」様

奥付
後藤和智の若者論と統計学っぽいブロマガ
ほぼ週刊若者論テキストマイニング 第2回
著者:後藤 和智(Goto, Kazutomo)
発行者:後藤和智事務所OffLine
発行日:2014(平成26)年9月10日
連絡先:kgoto1984@nifty.com
チャンネルURL:http://ch.nicovideo.jp/channel/kazugoto
著者ウェブサイト:http://www45.atwiki.jp/kazugoto/

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ブロマガに記事を投稿していらっしゃったんですね、陰ながらですが応援しています。

No.1 124ヶ月前
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