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第14期雀王決定戦・自戦記
残り5半荘、2位鍛冶田まで266.7ポイント差、3位阿賀とは400ポイント以上の差
「普通の麻雀」ならほぼセフティーリードといってもいいポイント差だが――
決定戦は「普通の麻雀」ではない
第13期雀竜決定戦最終日、400ポイント差がたった1日でひっくり返ってしまった大逆転劇。この日私は解説席に座り、ずっとその様子を眺めていた。
この雀竜決定戦だけでは無い。
勝利をほぼ手中に収めていながら、寸前で転落した者を今まで数多く見てきた。
優勝だけに価値のある決定戦。負けるリスクの無いチャレンジャー。
通常なら考えられない大逆転劇も、このステージだからこそ起こり得る。
大量リードだとしても油断も慢心も無い。ただそれでも、普段よりもホンの少しカウンターを警戒しながら打とうかな―― とは思っていた。
16回戦、阿賀に24000放銃。
この時の心境は「鍛冶田にじゃなくて良かった――」だった。
いや、ホントは全く良くはないのだけれど
むしろ恐るべくはこの後、阿賀が鍛冶田にまくられてしまう事。
それだけは避けなければならない。気持ちを切り替え、最悪だけは避けるように――
この半荘の結果は鍛冶田が2着。トータルの差は200ポイントを切った。かなり傷を負った結果になってしまったが、この差ならまだシナリオを変更することもないか――
この時はそう思っていた。優勝まで後4半荘。
17回戦南3局、鍛冶田の親番。鈴木たろうのリーチを受け、上家から8pが打たれたシーン。この決定戦、道中で点差確認をしたのはこの局が初めてだった。
既に仕掛けていた鍛冶田が前巡に手の内から1pを抜いた。2pは自分から4枚見え
鍛冶田の仕掛けは、タンヤオまたはトイトイといったところだった。
鍛冶田はそれまで鈴木のリーチに押していた。
それも当然、このポイント差の南3局で親権維持に拘らぬはずがないのだ。
その鍛冶田が1pを抜いた。もしかしてオリてオーラス勝負??
オーラス勝負なら鍛冶田の条件は―― というのが第1の確認ポイント。
鍛冶田は形式テンパイから無筋3pを引き、打1pのテンパイ維持だった。
てっきりトイツ落としだと思ったのだが、このテンパイ維持は意外と盲点。
オリたかも?と考えたのが思考のミス。この局面、テンパイを崩すならかなり苦渋の選択のはず。あんなにもすんなりと1pを選択するはずがないのだ。
オーラスハネマンツモ、マンガン直撃条件なら
形式テンパイであろうとまだ粘りそうなものだ。「普通の麻雀」じゃないのだから。
第2の確認ポイントは、鍛冶田がノーテンだったときの点差。
自分のテンパイまたはアガリ、自分が非テンパイだった時のオーラスの条件比較。
第3の確認ポイントは、自分が鈴木に放銃してしまった時のこと。
ここで鈴木にマンガンを打つと―― どうなるかな?
この半荘、最悪の結末は自分のラスではなく鍛冶田のトップEND。放銃はラス濃厚になるが、鍛冶田の親番を落とすことによってトップを阻む可能性も高まる。
この日描いたシナリオの一つ。
鍛冶田以外に点棒をバラ撒きながら局を消化するということ。
もちろん自分の加点がベストだが、鈴木に放銃することも自分にとっては――
5200――
微妙な点数。どうせならハネマンが良かった。ハネマンなら鍛冶田のトップ条件はかなり厳しくなる。マンガンでも直撃条件が減る分厳しくなるはずだったのに。
こうなればいっそのこと鈴木のトップをアシストしてやろう。
それも放銃した後に考えていた選択の一つ。しかしその願いは叶わず、オーラスは阿賀に鈴木が親マンを打ち上げ、鍛冶田が2着に浮上して終了した。
自分がラスでも良しとする麻雀は「普通の麻雀」ではない。鍛冶田のトップを阻止し、3着を押し付けられるのであれば放銃OKといった戦略だった。
これは・・・少し面倒くさいことになったかも
と思った。この後トータルポイントを再確認する。もちろんこうなった時のシナリオも用意してある。後はそれを実行するかどうかだが――
優勝まで後3半荘。
続く