最終戦自戦記1
17回戦終了時スコア
木原+238.1 鍛冶田+99.0 阿賀+70.7
開始前のポイント差を考えるのは意味がない。
140ポイント差と170ポイント差をつけて残り3半荘という現実さえ知ればいい。
忘却能力には定評がある。
今日起こった出来事はキレイさっぱりと忘れ――
それにしてもおかしいな・・・鍛冶田はともかく、阿賀ってこんなに近かったっけ?
まあいい。そんな疑問も今は無意味だ。
まだ圧倒的優位には違いないが、この先どこかで決定打となる局は必要だろう。
決定打を入れる対価として、それ相応のリスクを負うことになるかもしれない。
できれば――
まだ余裕のある18回戦、この半荘で決定打を入れるのがベスト。
18回戦南1局・東家6巡目
ここがいいかな―― と思った。この手をダマテンに構える。
「ピンフのみをリーチしても、1500点が2900点になるだけ――」
リーチ棒を出すのに見合わないと思う人は、考えを改めたほうがいい。
2900点というのはただの最安値であるということ。
両面リーチのツモアガリと出アガリの比率が、仮に4:6だとしても。
裏ドラが乗る確率が仮に3割5分だとしても。一発の可能性が仮に1割だとしても。
確かにリーチ時のアガリ点は2900になる可能性が一番高い。
では3900、5800、7800、12000になるケースを合算して考えるとどうだろうか?
これは2900になる可能性を確実に上回る。一発裏有りルールにおいて「先制ピンフのみリーチ有利」というのは2000、2900以外のアガリの可能性が高いからだ。
それを承知の上でダマテンにした。局収支をMAXする選択が勝率を高めるとは限らない。
僕の考えた決定戦における勝率を高める選択は、ダマテンで出アガリ拒否。
ツモアガリは渋々アガろうと思っていたが
2~3巡以内なら、2枚打たれても見逃すつもりだった。
6pが先、4mが後、ツモの順番にも恵まれた。
裏ドラを2つ乗せて6000オール。これが逆なら700オール、天地の差があった。
これが良いと主張しているわけではない。リーチせずの選択には相手に足枷をつけられないリスクが、見逃しの選択には相手のアガリを成就させてしまうリスクが
鍛冶田
鈴木
阿賀
テンパイ直後の3者の牌姿がこう。1歩間違えれば大事故だった。
しかしここで事故ったとしても、まだトータル首位はキープできるはず。
ま、いいか―― とリスクを避けるのは、不特定多数相手に無限回数を戦うやり方だ。
特定の相手に有限回数を戦い、1番を目指すなら――
互角の状態からリスクを負うのも、後が無くなってからリスクを負うのも
失敗した時に取り返しがつかない痛手になる可能性がある。
リスクを負うとしたら、失敗したってリードを保てるうちがいい。
失敗したとしてもまだ挽回のチャンスがあるうちに前倒しにリスクを負うこと。
まだ余裕があるうちに積極的にリスクを負うこと。
これが決定戦の勝率を少しでも高めるために、事前に練ってきた戦略の1つだった。
今回自戦記を書いたのは、別に自慢したかったわけではない。
いや、本音を正直に言うと少しだけそれはある。
自分の戦略がベストだったとは思わない。
忘れないうちに書き留めておき、新たな戦略構想の糧にするのが真の目的だ。
我々は決定戦という大事な大事な対局であるのにもかかわらず、決定戦を勝つための準備、勝率を高めるための練習量は圧倒的に不足していると思っている。
「普段通りに打つ」というのは精神面での心構え。
普段通りの麻雀で、全く違うステージにおける勝率が上がるとは到底考えにくい。
このシーンは18回戦オーラス、ラス目阿賀のリーチに全ツした局面。12000放銃となるとかなりの痛手だ。普段の麻雀であれば、これを勝負することは有り得ない。
今まで自分が決定戦を戦って
今まで決定戦を観戦して、対局者から学んだこと。最近でいえば――
今年の麻雀マスターズ決勝を戦って
今年の日本オープン決勝4回戦の南2局1本場を観戦して
決定戦を勝つために、何か得るものがあればと
同時期に行われてた最高位決定戦もタイムシフトで観戦した。
普段の麻雀よりも、横移動による局進行が
圧倒的に少ないステージで、1局潰すことの大切さを教わっってきた。
決して勝負を急いだわけではない。これも事前に練った戦略の1つだった。
アガリの手応えだって十分あった。ま、結果は失敗したけれど――
そうまでしておきながら、最終戦南3局だけは慎重に行こうと思ってしまった。
そのせいで阿賀の親番を落とすのに約1時間もかかってしまった。
余裕があるうちに積極的にリスクを負うじゃなかったか?これは大いに反省したい。
やはり勝利を目前にして、自分では気づかないプレッシャーがあったんだろうなー。
プレッシャーといえばこの件。頭はすっきりしていたし、緊張しているつもりも無かったのだが、疲労からか体が、指先が全く言うことをきかなかった。
大いに反省したいところではありますが―― これは果たして治るのものだろうか?
来年までにもっともっと練習して、良い麻雀が見せることが出来たらいいなと思います。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
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