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僕は「目のプロテイン」を撮るんだ。『パシフィック・リム』ギレルモ・デル・トロ監督にインタビュー
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僕は「目のプロテイン」を撮るんだ。『パシフィック・リム』ギレルモ・デル・トロ監督にインタビュー

2013-08-08 20:30
    デル・トロ


    いよいよ8月9日(金)から公開の始まる、ロボットvs怪獣映画『パシフィック・リム』。今回は、男の子の夢を全力で映画にした「俺達のトトロ」ギレルモ・デル・トロ監督インタビューして参りました。

    対怪獣用ロボット「イェーガー」のネーミングやデザインの誕生の秘密、操縦方法としてパイロットの身体の動きをトレースする形を採用した理由などなど、熱く語っていただきました!
     


    【大きな画像や動画はこちら】

     
    ――各国の対怪獣用ロボット「イェーガー」それぞれの名前は、どのようにして決めたのでしょうか?

    ギレルモ・デル・トロ監督(以下、デル・トロ):トラビス・ビーチャム(脚本)が、「ジプシー・デンジャー」と「ストライカー・エウレカ」の2体、僕が「チェルノ・アルファ」と「クリムゾン・タイフーン」の2体の名前を考えました。

    トラビスは名前をつけるのがとても上手で、「シャッター・ドーム」や「スタッカー・ペンタコス(司令官)」も彼が付けた名前です。「クリムゾン・タイフーン」は中国の港を守る美しい守護者のような響き、「チェルノ・アルファ」はロシアの超重量級のスゴい戦車のような響きにしたいと思い、僕が名付けました。

    名前はすべてデザイン画からつけたものです。デザインには1年間という時間をかけ、そのすべての要素にストーリーを持たせました。僕はストーリーの半分を映像、色、音で伝えています。脚本や台詞だけではなくね。

    僕はデザインをする時、「僕は『アイ・キャンディ』(目の保養)を撮るんじゃない、『アイ・プロテイン』(目のプロテイン)を撮るんだ」なんて冗談を毎回言うんです。僕は映像に栄養素を入れているんですよ。

    例えば、「ジプシー・デンジャー」は本質的にアメリカンである必要があったので、第二次世界大戦の戦闘機のようなカラーリングになっています。ノーズアートによくある、「銃を持った女性」も含めてね。さらに、その姿は、エンパイア・ステート・ビルのようなアールデコ調の建物ジョン・ウェインを彷彿とさせます。ジプシーには西部のガンマンのような歩き方もさせているんです。

    そして、「チェルノ・アルファ」は原子力発電機の冷却塔を元にデザインされています。カラーリングはロシアの戦車からで、手が大きいところなどは、ロシア人の重量級の格闘家のように見えます。

    ロボットのそれぞれの名前は、何かを伝えるものにしました。それはパイロットも同じです。彼らが登場するのを見ただけで、彼らのストーリーがすぐに思い浮かぶような見た目にしています。「この二人は互いを愛し合ってるな...」とか「こいつがリーダーだな...」とか、そういったストーリーをです。


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    インタビューの途中、今作のアイデアを書き溜めた手帳も見せてくれたデル・トロ監督。先日発売された、ビジュアル・ガイドにもその一部が掲載されていましたが、まさか実物が見られるとは......!


    ――イェーガーはパイロットの身体の動きで操縦され、イェーガーへのダメージはパイロットにフィードバックされますが、なぜこのような仕組みを採用したのでしょうか?

    デル・トロ:僕はパイロットとイェーガーの神経の繋がりを作りたかったんです。パイロットのスーツには(コックピットと)脊椎を繋ぐ部品があります。さらに、パイロットはスーツの中に身体と繋がった回路のあるインナーも着ています。それによって、イェーガーに速度や力を伝えているわけです。

    その時、人間のパンチはこうだけど...(素早いパンチを繰り出すデル・トロ監督)...巨大なイェーガーのパンチだとこうなる...(今度はゆっくりとパンチ)。とはいえ、役者にイェーガーのような遅いスピードでパンチをさせるわけにはいきませんでした。それだと興奮しないですからね。そこで、手につける制御装置が速度を計算して、イェーガーに情報を送っているという仕組みにしたわけです。

    でも、実際に機械の中で別のパイロットと繋がりながら戦うことを想像してみてください。感覚で戦うはずですよね? 例えば、ボクシングの試合で僕が君のここを叩いたら(私の肩に拳で触れるデル・トロ監督)、君は身体を引いてそこを守るような動きをすると思います。何の反応もせず、反対の腕でパンチしたりはしないはずです。

    ロボットの頭の中で反応して、反対の腕で自分を守るためには痛みを感じる必要があります。(痛みが)一瞬で腕が動かないことを伝えてくれれば、「右腕が損傷しました」みたいな情報をわざわざ読む必要はないわけです。戦いの中では、状況に応じての反応が必要です。腕が損傷したことを感じて、反応する。すなわち、痛みこそが最も速く反応できる、情報の伝達方法なんです。

    とにかく、観客にパイロットとロボットを切り離した形で見せたくありませんでした。ロボットが損傷した時に、パイロットに「左腕が壊れた!」と言わせるのではなく、「グアァ!」と声を上げるような感情的な繋がりを持たせたかったんです。そうすることで、ロボットではなく、パイロットが巨大な怪獣と戦ってるんだということがわかりますからね。

    でも、もし怪獣が腕を引きぬいたとして、2人のパイロットが「グアァ!」となったら、イェーガーは操縦不能になってしまいます。だから、パイロットは神経で繋がりつつも、右側と左側に担当が分かれているんです。右側のパイロットが痛みを感じたとしたら、左側のパイロットはそれを感じながらも、左腕で反撃ができると。戦いに2人のパイロットが必要であるというアイデアもここから来ています

    パイロットとロボットとの関係を重視したのと同じ理由で、怪獣とイェーガーがビルの間で戦う時に、その路上には人が出てきません。観客の視線が、イェーガーと怪獣から路上に移る状態にはしたくなかったんです。見せたいのは、パイロット、イェーガー、怪獣という3点が直線で繋がる関係で、下(路上)に視線が移るような三角の関係ではありません。観客には戦いに集中して欲しいんです。だから、路上には誰もいません。そうすれば、観客は「少年が車の中に!」とか「子供で一杯のスクールバスが!」などと考えずに済みますよね。

    こういった映画は、全てが粉々に破壊されるのが楽しいものです。僕が子供の頃、怪獣映画が好きだった理由も、模型が壊されるのが楽しいからです。なので、ロボットと怪獣の戦い最中に人間がどうなるのかといったことは、気にしてほしくありませんでした。


    パイロットとイェーガーが痛みを共有するという描写に、合理的な設定と熱い関係性が隠されていたとは! 2人のパイロットで操縦する設定が生まれたきっかけや、道路に逃げ惑う人々を出さない理由も非常に面白いです。

    映画の隅々にまで行き届かせた今作へのこだわりについて、身振り手振りだけでなく、図や絵まで描いて、沢山の事を丁寧に熱く語ってくれたデル・トロ監督。メガネの奥に見えるその瞳は、まるで少年のもののように輝いていました

    1年以上情報を追い続けた映画『パシフィック・リム』が遂に公開され、まさかギレルモ・デル・トロ監督に直接会ってお話を聞ける日が来るなんて......生きててよかった! 監督に握手した手と、触れていただいた左半身は洗いたくなかったですよ!

    ちなみに今作は、中国で大ヒットしつつも、続編が作られるかはまだ未定。ここはぜひ監督の日本への想いに応え、みんなで観に行って、『パシフィック・リム2』の製作を決定させようではありませんか!

    『パシフィック・リム』は、2013年8月9日(金)丸の内ピカデリー 新宿ピカデリー他 3D/2D同時公開。ギレルモ・デル・トロ監督が丹精込めて作った栄養たっぷりの「アイ・プロテイン」を劇場の大スクリーンで摂取しよう!


    映画『パシフィック・リム』公式サイト

    (傭兵ペンギン)

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    RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2013/08/pacific_rim_del_toro_interview.html
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