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『メタルギアソリッドV』の気球「フルトン」のモデルとなった実話
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『メタルギアソリッドV』の気球「フルトン」のモデルとなった実話

2015-09-25 21:30
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『メタルギアソリッドV』の気球「フルトン」のモデルとなった実話


メタルギアソリッド』シリーズに登場するテクノロジーの多くは、実在した軍事技術がもとになっています。


【大きな画像や動画はこちら】

『メタルギアソリッドV』の「フルトン回収システム」で使われる気球も、現実に存在した技術だって知っていましたか?



お馬さんも回収しちゃう「フルトン」。これは冷戦時代の技術がもとになっています。作中に見られるように地上から空へと回収するために、主にスパイが使用したそうです。

Fulton Surface-to-Air Recovery System」、略して「STARS」、もしくはより一般的には「スカイフック」と呼ばれています。



1965年の『007 サンダーボール作戦』のエンディング(上動画)にも、このSTARSは登場しています。そして最近の映画だと、クリストファー・ノーラン監督の映画『ダークナイト』でバットマンが使っていたのを覚えている方もいるかもしれません(下動画)。



その誕生は1950年代で、冒険野郎(ロンドンから東京までバイク旅行を決行)であり、発明家のロバート・エジソン・フルトン・Jrさんが開発。

フルトンさんは別のプロジェクト(空飛ぶ車)を考案する際に、一体どうすれば飛行機もヘリコプターも着陸できない場所に取り残された人が、その場を脱出することができるか? を考えていました。

フルトンさんは米中央情報局ことCIAと共に答えを探すことに。CIAも離着陸する航空機が見つかる危険性を減らせて、どんな場所にいるエージェントでも素早く回収できる手段の考案に価値を見出したのです。

フルトンさんのアイデアは、人に風船をつけ、ある高度まで風船が上がった段階で、航空機から風船ごと「すくい」上げるというものでした。

1950年代を通じ、フルトンさんは重りやダミー、そして様々な航空機を使ってテストを行い、STARSを使い物になる回収システムへと発展させていきます。そして、CIAも極秘にテストを行っていました。CIAのテストでは、よりシンプルなデザイン、そしてダミーではなく人が使用されていたようです。

『MGS V』をプレイしていると、動物に風船がついているのが奇妙に思えるかもしれませんが、フルトンさんの行った最後のデザインテストのうちの一つは、豚を使ったものでした。

CIAによるとテストの結果は......

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フルトンは、まず生身の人間の回収を試す前にダミーをテストに使用しました。次に彼が試したのは豚です。豚には人に似た神経組織が備わっています。地上から持ち上げられ、豚は宙を時速201kmで飛ぶとともにスピンし始めました。無事に傷一つなく回収できたものの、豚は混乱状態に陥ったようです。そして、混乱状態から回復するとクルーを攻撃しました。


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1958年にフルトンさんの研究は終わりに近づきます。STARSが最初に人間を乗せた記録はその年の8月。その時点でデザインはほぼ最終段階でした。

航空機がハーネス、編んだナイロン製のライン、ヘリウムボトルと風船が入ったパッケージを投下。地上にいる人間がこれを回収し、着用もしくはカーゴに取り付け、風船を膨らませて空へと浮上させます。

ここまでは簡単ですが、航空機(主に回収に使用されるのはC-130ハーキュリーズ)が人/カーゴを回収する部分は、ゲーム中のように簡単にはいきません


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回収用航空機には2つのチューブ状の鉄製「ホーン」がノーズ部分から突き出ています。これは9メートルの長さがあり、70度の角度に開かれています。

航空機は地上130メートルに浮かぶ明るいマイラー・マーカーのラインをめがけて飛行。ラインが航空機の先のホーンの間に引っかかると、風船が解放されると同時に、ばね式のトリガー装置(スカイアンカー)がラインを航空機に固定します。


ラインは航空機の胴体下部に沿っていき、クルーによってJフックを使用して捉えられ、パワーウインチを使用して機内へと引き上げられます。航空機のノーズから翼端にかけてはケーブルが張られており、これによって風船のラインがプロペラに巻き込まれてしまうことを防ぎます。


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STARSが最初に運用されたのは、1962年のコールドフィート作戦

恐ろしいほど視界が悪い状況でしたが、放棄されたソ連の研究基地を調査した2人のアメリカ人エージェントたちを無事に回収しました。下の写真はその2人のうちの1人である、ジェームズ・スミス少佐。作戦のために改造されたB-17内で、無事に回収されたことを祝った瞬間の写真です。


『メタルギアソリッドV』の気球「フルトン」のモデルとなった実話2

回収成功


その後の30年間、アメリカで「STARS」はCIAのミッションに限らず、空軍や海軍などでも幅広く使用されてきました。

大げさで一見危険な見た目にも関わらず(海軍はそれを理由に1961年のコールドフィート作戦をもう少しで中止するところだったとのこと)、1962年から使用されなくなる1990年代までの間に、STARSでの死亡者はたった1人だったそうです。

最後まで使っていた空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)が使用を止める1996年に、STARSは終わりを迎えます。冷戦時代には便利な存在でしたが、ヘリコプターの行動範囲と離着陸性能が向上するとともに、必要性がなくなっていったのです。

もし次回『MGS V』を遊んでいて、気を失っている羊に風船を取り付ける機会があったら、冷戦時代に使われてきたクールな発明が、小島監督の作品の中に登場することのクレイジーさに感動するのもいいかもしれません。


[via Kotaku
FULTON SKYHOOK Extraction of MI6 Operative and Femme Fatale by B-17[YouTube]
The dark knight plane scene[YouTube]
Robert Fulton's Skyhook and Operation Coldfeet[Central Intelligence Agency]
C-130 Hercules & The Fulton Recovery System[YouTube]
コールドフィート計画[Wikipedia]

abcxyz

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RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2015/09/the-real-story-behind-metal-gear-solid-vs-balloons.html
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Payday2にもっとリアルよりなフルトン回収も出てるね

No.1 110ヶ月前

後の時代、アウターヘブン蜂起前とかでやるとなるとドローンとかが飛んでくるんだろうか
・・・普通にコリブリでいいな

No.2 110ヶ月前
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