アメリカのプロダクションスタジオ「Rooster Teeth Productions」がおくる3DCGアニメーション『RWBY Volume1』が、ついに、ついに日本語吹き替え劇場版公開の運びと相成りました!
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思い起こせば2013年に4人目のトレーラーが公開されてから早2年と5ヶ月、色んなことがありました。
2014年にはRubyの稼働フィギュアが登場し、翌年2月に原作者・監督のモンティ・オウム氏が夭逝、6 月と8月に日本語版のキャストが公開され、そしてついに2015年11月14日(土)、チームRWBYの4人が満を持してスクリーンにやってきました。
そこで今回は、国内外のアニメーションに関して博覧強記な翻訳家である兼光ダニエル真さんに、『RWBY』はぶっちゃけどのあたりがスゴいのか、評価されているのかなど、多面的にお話を伺いました。一部ネタバレがあるので、ご注意ください。
兼光ダニエル真
'72年生まれ。翻訳家。マンガ・アニメなどの翻訳を多数手がける。
新劇場版ヱヴァの他、ブラックラグーンや宇宙戦艦ヤマト2199の制作にも参加。
国内外のアニメ作品動向について詳しい。
――ざっくりと言って、『RWBY』というアニメーションのどこがスゴイと思われますか?
兼光ダニエル真さん(以下兼光):独特なキャラクターとアクションが際立っていますね。
3DCGですが、手書アニメの強みである豊かな表情や随所に細かなデフォルメなどを上手く組み込んでいるのが素晴らしいです。無機質でもなく、計算されつくされたものでもない、そういったところのバランスが非常に巧いと思います。
――本作の見どころの1つはアクションですが、その魅力はなんだと感じていますか?
兼光:やはり殺陣ですね。映像作りにおいてアクションシーンに凄みを持たせるためにありがちなのが、とにかくスケールを大きくしてびっくりさせるという演出ですが、これはインフレを起こしやすいんです。しかし、モンティさんの殺陣はそういったところに一切依存せず、体術で敵を倒していくというところにおいて、人間を基礎にしているんですよね。
インフレを避けて体一つでスリリングなアクションを展開していくのが『RWBY』のアクションシーンの最大の魅力だと思います。単にスケールを大きくすればいい、というものではなく、丁寧な殺陣の魅せ方が突出していますね。
ストーリー冒頭から軽やかなアクションを魅せるRuby。
――日本の作品(クールジャパン)による影響はあると思いますか? それとも、本作が日本風に感じられるのは直接的な影響というより、モンティ・オウムさんの感覚によるものなのでしょうか?
兼光:両方あると思います。少しだけネット上で本人とお話したことがあるんですが、モンティさんは自分がかなりガラパゴス的であることを自分でも認識されていた人で、日本の中の極一部の要素を自分の中で非常に上手く膨らませて展開させているんです。
しかしそれだけではなく、アメリカには日本のアニメの下地が1990年代末の段階で完成されていて、その下地の上にモンティさんのビジョンが上手く乗っかっていた、というところがあると思います。Rooster Teeth Productionsの方々が「これは面白い! 一緒にやろう!」とモンティさんのビジョンに絡み合っているので、作品としての伸びが全然違うんですよね。
海外でも日本の絵柄を取り入れているアーティストはたくさんいますが、それが制作チームとして共有されていて、さらに見る側の方でも共感を受けているかどうかは別だと思います。そのあたりの状況はここ15年で大きく変わりました。
クールジャパンということにおいて下地があるにはありますが、それだけではなく、ちゃんと自分たちが作りたいと思っているものを海外の方々が組み込み、自分たちで押し出しているというのもあると思います。
――アクションのカッコ良さの感じ方が、日本と海外では異なるといったことはあるのでしょうか?
兼光:結局は人間の目線で感じ取るところなので、同じところもあれば違うところもあるでしょうね。ただ、日本のアニメと海外(特にハリウッド)のアクションとで大きく違うのが、日本のアニメは制約が非常に多いという点です。
これはマイナスだけのように感じるかもしれませんが、プラスなところもあります。制約があることで、日本のアニメは最初から最後までガーッと動きを魅せるのではなく、工夫してポイントポイントで動きをつけるという、テンポ的なものを非常に重視するようになりました。
緩急のある展開の中で、日本のアニメはレイアウト(画角作り)をとても重要に捉えるようになりましたが、それは海外の人間からするとかなり奇妙に映るんです。
モンティさんはどこからかそういった日本のアニメのレイアウトのノウハウを吸収していたんだと思います。あの人は「俺はこれが見たいんだ!」というものに対して一切妥協を許さない人だったという印象なのですが、その背景には日本の特殊な背景を吸収していた、という側面もあったのかもしれません。
――兼光さんが個人的に好きなシーン、演出を教えて下さい。
兼光:ペニーの活躍が第一部のクライマックスとしてやはり圧倒的でした。見る側の予想していたことをどこか必ず裏切る(良い意味で)のが作り手側の大事なことですが、見事にそれをやってのけたという印象です。
トレーラー(Red、White、Black、Yellow)もRWBYの4人それぞれの個性が色濃く出ていて好きですね。非常に巣晴らしい殺陣もあるので、是非見ていただきたいです。トレーラーでも本編でもルビーが軽快かつ可憐な体術で、ヤンが力任せで相手を圧倒させる描写が楽しいですよね。
ストーリーの要素としては、キャラクターの異なる文化からそれぞれの出自が浮き立ってくるのが印象的でした。レイアウトやアクションも素晴らしいのですが、ストーリーの中から価値観の衝突というのがにじみ出ていて、それを通してドラマが組み立てられています。
出会ってすぐ友達、みたいなご都合主義ではなく、キャラクターの相関関係を丁寧に描き上げているのが素晴らしいです。主人公であるルビーが「人付き合いが苦手」というのは、すごく上手い切り込み方だと思います。モンティさんがどんなアニメを見て参考にしたのかはわかりませんが(笑)。
チームRWBYの4人、もちろん他のハンターたちもこれから強くなっていくというのが今後の命題になっていきますが、身体や技だけではなく、心も強くなるということを描写する上で、心の交流や価値観、文化の違いを打ち出して乗り越えるというのは重要かつ素晴らしいドラマ的な演出になると思います。
ブレイクがはしゃぐシーンは貴重。
精緻かつ大胆なアクションシーンだけでなく、各キャラクターのドラマも『RWBY』の大きな魅力。今回の日本語吹き替え劇場版は、その部分をより高い感度で味わえます。
スクリーンサイズの殺陣は圧倒オブ圧巻ですし、ドロップDのリフから始まるカッコいいOPテーマも大音量。字幕版と違ってセリフがダイレクトに耳へ届くので、集中して画面が見られます。
そして、11月13日(金)には前夜祭上映と称して、ルビー・ローズ役の早見沙織さん、ヤン・シャオロン役の小清水亜美さんらによる舞台挨拶も行われました。
ヤン役の小清水亜美さん(左)と、ルビー役の早見沙織さん(右)。
小清水さんの靴下がヤン姉と同じ仕様にっ!
収録では、もとが英語なので日本語にするとかなり早口になってしまったり、意味の置き方が英語と日本語で異なるところに戸惑ったりといった苦労があったとか。しかし非常に楽しかったようで、早見さんいわく「小清水さんはヤン姉そのもの(見た目も)」とのことです。
ちなみに、ヤン姉の戦闘時の声は原作よりも多く入っています。その声なんですが「ハッ、ヤァッ」など色々と試しながら録っていった結果、最終的には「オラオラ」になったそうです。なるほど、似合いすぎ。
『RWBY Volume1』は2015年11月14日(土)から27日(金)、新宿ピカデリーほかにて2週間限定公開。本来なら12月9日(水)に発売予定のBlu-rayも劇場内で「劇場限定版」が先行して数量限定発売されるので、ファンは劇場へLet's Go!!
(c) Rooster Teeth Productions, LLC
3DCGアニメ『RWBY』公式サイト[RWBY]
『RWBY Volume1』日本語吹き替え版 冒頭7分・特報映像(11/14~劇場公開)[YouTube]
(ヤマダユウス型)
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