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【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第二話第四章「夕凪の記憶」
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【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第二話第四章「夕凪の記憶」

2022-03-01 21:43
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    第二話第四章 夕凪の記憶


    著:古樹佳夜
    絵:花篠

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    ■『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 連載詳細について

    https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2060929

    ※本作『阿吽』のご感想・ファンアートなどは 

    #あうんくろねこ をつけてツイートいただけますと幸いです

    [本作に関する注意]---------------------------------

    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で
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    また、内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。

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    ◆◆◆◆◆追憶・汐◆◆◆◆◆

    これは、昔の話です。私には5つほど歳の離れた妹がおりました。

    名を汐(しほ)といいます。

    歌が達者な人魚でした。時たま海面に顔を出して、

    海鳥を真似て歌い、面白がっていました。

    そのうち汐は、近くを通る人間の舟唄など真似し始めましたので、

    私も面白がって汐の歌を聞きました。

    そのことを家族に咎められましたが、海の中はひどく退屈で、

    私たち兄妹は暇潰しに余念がありませんでした。


    私たちは岩礁に好んで泳いでゆきました。

    そこは砕破が打ち寄せる、険しく切り立った場所です。

    その一角に、地形の関係で潮が穏やかな窪みがありました。

    窪みは、二人が腰掛けるのにちょうどよかったのです。

    ここであれば、人間も近寄りません。


    その日、汐は海底で拾ったという

    珊瑚でできたかんざしを得意げに見せてくれました。


    「兄さん、私の髪に飾って」

    夕凪 「いいよ」


    私は人間がそうするように汐の髪の毛にさしてあげました。

    汐はご機嫌になって、人間の歌を口ずさみました。


    「私もっと歌が知りたい。人間と友達になるの」


    汐が言いました。もちろん、私は賛成しませんでした。

    人魚を捕まえて、すり潰しては不老長寿の妙薬だとありがたがる

    人間の野蛮さは親から聞かされていました。

    事実、私たちの世界では、

    人間と会うのも、話すのも、してはいけないことでした。

    皆が口を揃えて、禁忌だと子供に教えます。

    約束を違えたら、家族全員、仲間外れです。


    それでも汐は私に言うのです。

     
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