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第三話第四章 反魂香


著:古樹佳夜
絵:花篠

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■『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 連載詳細について

https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2060929

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◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆

交流会から数週間後のことだった。

吽野のもとに編集者の木村が訪れた。

遅筆な作家の進捗窺いも兼ねて、茶を飲みに来たらしい。

吽野は整っていない原稿を文机の引き出しに押し込んで、

しれっとした態度をとった。

そして何食わぬ顔で阿文の出した茶を啜った。


木村「先日の平井先生の交流会、いかがでしたか?」

吽野「いかがも何も、君の付き合いで行った交流会だよ? 楽しいわけがない」

木村「いや、本当に。吽野先生が承諾してくださって、大変に助かりました。平井先生はうちの稼ぎ頭ですから」

吽野「ごきげん取りのために俺をだしに使うなって」

木村「先ほど平井先生宅にもお邪魔してきたのですが、大変に楽しかったと満足されておりましたよ」


人嫌いの吽野は不満たらたらの表情で、煙管から煙を吸った。

阿文は吽野の素直すぎる感情表現を咳払いでごまかした。

何か、話題を変えねばならない。そうだ……


阿文「そういえば……久多という人物を、木村さんはご存知ですか?」

木村「久多……?」


木村は首を捻った。


阿文「はい。あの会にいらっしゃっていた、芸術家の男性なんですけど、平井先生のご友人のようで……」


あの帰り道での気味の悪い出来事を、阿文は話そうとしていた。

吽野は会話の成り行きを黙って聞いている。 

木村は思い当たる節があるようだった。


木村「ああ、先ほど平井先生が仰っていた方かもしれない。その男性なら、失踪したらしいですよ」

阿文「失踪!?」


驚いた阿文は声を張り上げた。