第三話第四章 反魂香
著:古樹佳夜
絵:花篠
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■『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 連載詳細について
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◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆
交流会から数週間後のことだった。
吽野のもとに編集者の木村が訪れた。
遅筆な作家の進捗窺いも兼ねて、茶を飲みに来たらしい。
吽野は整っていない原稿を文机の引き出しに押し込んで、
しれっとした態度をとった。
そして何食わぬ顔で阿文の出した茶を啜った。
木村「先日の平井先生の交流会、いかがでしたか?」
吽野「いかがも何も、君の付き合いで行った交流会だよ? 楽しいわけがない」
木村「いや、本当に。吽野先生が承諾してくださって、大変に助かりました。平井先生はうちの稼ぎ頭ですから」
吽野「ごきげん取りのために俺をだしに使うなって」
木村「先ほど平井先生宅にもお邪魔してきたのですが、大変に楽しかったと満足されておりましたよ」
人嫌いの吽野は不満たらたらの表情で、煙管から煙を吸った。
阿文は吽野の素直すぎる感情表現を咳払いでごまかした。
何か、話題を変えねばならない。そうだ……
阿文「そういえば……久多という人物を、木村さんはご存知ですか?」
木村「久多……?」
木村は首を捻った。
阿文「はい。あの会にいらっしゃっていた、芸術家の男性なんですけど、平井先生のご友人のようで……」
あの帰り道での気味の悪い出来事を、阿文は話そうとしていた。
吽野は会話の成り行きを黙って聞いている。
木村は思い当たる節があるようだった。
木村「ああ、先ほど平井先生が仰っていた方かもしれない。その男性なら、失踪したらしいですよ」
阿文「失踪!?」
驚いた阿文は声を張り上げた。