Mihoさん のコメント
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国家が転覆するような革命が僕の知らないところで起きているんじゃないだろうか。そして、その革命は音もなく広がってゆく染みのようにゆっくり静かに進んでいるものなんじゃないだろうか。
新年早々、物騒な話だと思うだろう。これは僕が見た初夢じゃない。いや、似たようなものかもしれない。これはこの 10 年ほど僕がぼんやりと考え続けている「空想」だ。着想のきっかけは色々ある。自国の消費だけでは成長の限界を迎えた企業の手が「巨大なグローバリズムの雲」となって世界を覆い尽くしたこと。成長の限界を迎えた企業が「雇用の規制緩和」で人斬りを始めたこと。それによって生まれた「格差社会」が目を背けるほどのものになっていること。その根本にあるのは地球上のフロンティアを開拓し尽くした「資本主義というシステム」が終焉を迎えつつあるのを肌で感じ始めたことだろう。資本主義が終わるなんて何を根拠に、と思うかもしれない。それでいい。だから脅える必要もない。僕は経済の専門家じゃない。ただの放送作家だ。あくまで僕という一個人の漠然とした予感に過ぎない。すなわちこれから書くことも単なる空想でしかないというわけだ。けれど僕は自分と周囲の大切な人たちが「船底に巣喰った小さな穴を見つけ、沈みゆく船からいち早く脱出する鼠」になれればと密かに願っている。もちろんそこにはこれを読んで下さっているあなたも含まれている。と言っても、笑い飛ばす人の方が多いかもしれない。それならそれでいい。初笑いにでもなればと思って筆を進める。
僕がすでに始まっていると感じている革命は神経を研ぎ澄まさなければ気づかないほど静かなものだ。まずこの革命にカリスマ的な指導者はいない。徒党を組んだりもしない。デモも起こさなければシュプレヒコールもない。自己顕示欲の塊のような醜悪な犯行声明を出したりもしない。暴力や武力を行使しての血は、一滴も流さない。だから警察も機動隊も出動しない。
革命の始まりは、たったひとつのメッセージだった。
『 No Work,No Buy,Throw All( 働くな、買うな、ぜんぶ捨てろ ) 』
最初に流したのが誰だったか、或いはそんなメッセージが存在したのかすら、もはや不明だ。おそらく誰ひとり見覚えのないこのメッセージはすでに様々な言語、表現にカタチを変え、世界中に拡散され、僕らの意識下に知らず知らずのうちに浸透している。そして資本主義の未来に猜疑心を抱く中間層の人々、雇用の自由化で痛めつけられている貧困層の人々を中心に具体的な行動に移されている。好むと好まざるとにかかわらず。
シンプルな話だ。誰もモノを買わなくなれば、そして働かなくなれば企業は次々に倒産する。失業者も増える。国民や企業に収入がなければ行政府は税収を失う。にもかかわらず失業者と高齢者の社会保障費は増えてゆく。政府は躍起になって消費税を上げたり、新しい税を考え出したりする。それでも追いつかない。借金だけがみるみる膨らんでゆく。でもそこには担保がない。そう、莫大な借金を将来肩代わりしてくれるはずの子供たちがいないのだ。そして、ある日破綻を迎える。国家という巨大な船が沈没する。そう、まるで「白蟻」が壁や柱を空洞化させ、気がついたときには家屋そのものを倒壊させてしまうのと同じように。
僕はその音もなき革命を「白蟻」と名付けた(ちなみに革命により転覆させられる国家権力側がつけた名前だとご理解頂きたい)。おそらく人類史上もっとも後ろ向きでやる気のない、でも、これまで起きたどんな革命より成功率の高い革命なんじゃないだろうか。
国家の転覆とともに今の格差社会も終焉を迎える。富裕層を富裕層たらしめていた「お金」が信用を失い、ただの紙屑に変わるからだ。
でもそれじゃ革命の主体である「白蟻」も共倒れするのではないかと思うだろう。確かに都会では孤独死や餓死が頻発するかもしれない。 けれど、その多くは生き延びる。国の資産を喰い潰しながら自立する力を蓄え、沈む前に脱出するからだ。買わなくても、お金を得る為に働かなくても、人は生きてゆくことができる。その賢いやり方こそが、ぜんぶ捨てて、身軽で自由になることだ。そして、それはすでに、命を育む土のある場所に移住してミニマムな自給自足生活を営む人々や、人と人のつながりによる互助システム、地域通貨、エネルギーの自給自足などの脱資本主義的な試みが少しずつではあるが証明している。
NEW YEARS DAY
また、新しい 1 年が始まった。
膨らみ続ける社会保障費と防衛費で今年度の国家予算は過去最大となるそうだ。大量生産大量消費はとうの昔に終わり、多くの人々の意識は如何に少ないモノで豊かに生きるかに向かっている。お金の為に働いても収入の多くを社会の為の税金として収奪される割合は日に日に高まってゆく。果たして、人はそれをどこまで幸せだと感じ続けられるのだろうか。
けれど、不安はない。心は新しい 1 年の始まりの日のような清々しい希望で満ちて溢れている。ひょっとするとこの静かな革命には国家を転覆させるほどの力はないかもしれない。けれど確実に自分自身を変えてくれるだろう。自分革命とでも言うべきだろうか。そして、そんな革命の後には、今よりもっと自由で、心地良い風が吹き抜ける場所のような、新しい未来が待っている。そんな気がするのだ。
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