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「おばあちゃん子」
一年生も終わりに近づいた頃、娘が急におばあちゃん子になった。毎日顔を合わせている親に飽きたんだろうか。親離れの第一歩なんだろうか。いや、先日義母の四十九日を終えたところでひとりだけになってしまった祖母を大切にしなければと思ったのかもしれない。
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「2024年3月12日」
渋谷に降り立ったのは、夜だった。
春の嵐に傘やコートの裾を巻き上げられながら夜の街を歩いていく大勢の人々。前日に東日本大震災から13年を迎えた中で胸に去来したのは「それでも東京の夜は明るいんだな」ということだった。 -
「それは謎だね」
娘は妻に憧れている。
「ママみたいになりたい」といつも口癖のように言っている。
今朝も「いってらっしゃい」と妻に手を振られて家を出たところでぼくを見上げ「ママ、かわいいよね」とうれしそうに言った。
「かわいいよね」とぼくも頷く。そもそも娘の前で「ママかわいいよね」と口癖のように言っていたのはぼくだ。なので娘の「ママかわいいよね」という言葉の半分にはぼく自身の思いが入っていると言えなくもない。そんな娘に「パパがどうしてママと結婚したかわかる?」と質問してみた。
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