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【第312号】帰ってきた志村けん 後編
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【第312号】帰ってきた志村けん 後編

2021-02-24 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第312号 2021/2/24
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    おはようございます。マクガイヤーです。

    先日の放送「最近のマクガイヤー 2021年2月号」はいかがだったでしょうか?

    最近の映画についてきちんと話せて満足しております。


    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    〇3月7日(日)19時~「スーパー戦隊と東映不良性感度」

    3月7日よりスーパー戦隊シリーズ第45記念作『機界戦隊ゼンカイジャー』が放送されます。これまで放送されていた『魔進戦隊キラメイジャー』も傑作でしたが、『海賊戦隊ゴーカイジャー』とはまた違った形でスーパー戦隊シリーズを総括するような記念作になりそうです。

    そこで、これまでのスーパー戦隊シリーズを振り返りつつ、スーパー戦隊の魅力について語るような番組を行います。


    ゲストとしてお友達のナオト(https://twitter.com/Triumph_march)さんをお迎えしてお送り致します。



    〇3月22日(月)19時~「こんな時だからみたい旅行映画たち」

    新型コロナ過の中、10都府県に発令されていた緊急事態宣言も延長され、気軽に旅行に行けない状況が続いています。緊急事態宣言が解除されれば国内旅行は可能でしょうが、海外旅行は少なくともあと一年は無理そうです。

    そんな中、気分だけでも旅行に行ったような感覚を味わえる映画を特集します。ロードムービーに限らず、全く別の土地や風景、旅行そのものの魅力を味わえるような映画は数多くあり、そんな映画たちについて語れればと思います。


    ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。



    〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

    当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

    https://macgyer.base.shop/items/19751109


    また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

    https://macgyer.base.shop/items/25929849


    合わせてお楽しみ下さい。




    さて、今回のブロマガですが、この前みた志村けんが実は生きていたという夢の続きについて書かせて下さい。




    ●3

    それは、志村けんが第二の人生である番頭仕事にも慣れた、ある連休のことでした。

    誰よりも早く起きた志村けんは、日課である犬の散歩を済ませると、旅館の玄関と門に続く小路の周辺の掃き掃除をはじめました。周囲では、散歩が終わったばかりの犬二匹が自由にくつろいでいます。この犬たち――ゴールデンレトリバーと柴犬は元々志村けんが三鷹で飼っていた犬で、今となっては三鷹や港区の自宅も車も処分した志村けんですが、犬と別れるのは忍びなく、一旦「家政婦に引き取ってもらった」という体をとることで、連れてきたのでした。

    犬たちが、二匹同時に門の方向に顔を向けます。お客さんがきたのです、三人の親子連れ――いや、年長の男性がかなり老けているので違うのかもしれませんが、ともかく、6、70台の男性、3、40代の女性、小学校低学年の男の子三人の、家族連れらしきお客さんがやってきました。


    志村けんが気になったのは、男の子の表情です。

    自分の顔を覗き込んだ直後に、明らかにびっくりしたような顔をしているのです。

    これはまずい……

    こんな顔をした人間は、過去に何人かいました。新型コロナの後遺症で人相が変わった志村けんですが、世の中には話し方や身振り手振りで、もしくは直感的ななにかで、志村けんが志村けんであることに気づいてしまう人間がいるらしいのです。

    その度に上手くごまかしてきましたが、今回もそうしなければなりません。

    志村けんは、憂鬱な気分になりましたが、致し方ありません。その家族連れに対して常に注意を払いつつ、決して近寄らず、近寄らせず、接客は可能な限り他のスタッフに任せる――いつもの方法をとることにしました。家族連れの宿泊予定は連休いっぱい。数日の辛抱です。


    常に遠目からその家族に注意を払い、観察することになった志村けんですが、翌日には、その家族が普通とは明らかに異なることに気が付きました。

    女性は、明らかに男の子の母親なのですが、男の子に対して厳格なのです。

    志村けんが番頭を務める旅館は温泉が有名で、ほとんどのお客さんはゆっくりした時間を過ごすために宿泊するのですが、男の子の礼儀作法や言葉遣いをことあるごとに注意するのです。料理を運んだり、布団を敷きにゆくスタッフに聞くと、部屋の中では日課の勉強をさせられているそうです。

    一方で、初老の男性は父親ではなく母方の祖父でした。

    年齢的な理由もあるのでしょう。耳が遠く、他人の問いかけにたいし、何度も聞き返します。常に口から軽い息のような、小さな声のようなものが漏れています。軽い痴ほう症もあるようで、食事をした記憶も時折忘れてしまうようです。娘である女性は、そんな父親に対して常に苛々した態度を隠そうともしませんが、孫である男の子は懐いているようでした。

    父親が同行していない理由は分かりませんが、苗字は三人とも同じでした。


    そんな家族連れを数日間みていて、志村けんの胸にはある思いが去来しました。

    礼儀や勉学に厳格な母親の姿は、どこか志村けんの父を思い起こさせるものがありました。志村けんの父は元軍人の小学校教師であり、校長への昇進を目指して勉強に励む毎日を送っており、志村けんはそれをつまらない人生と心の中で蔑んでいたのです。

    しかし志村けんが中学生になった時、自宅近くで交通事故に逢いました。全身打撲と骨折で、命には別条なかったのですが、脳内出血の影響で次第に記憶喪失や認知症といった重度の脳障害を発症するようになったのです。志村や家族が声をかけても「どちら様ですか?」と認識できず、食事の記憶も曖昧になり、晩年には徘徊行動もとるようになっていきました。

    志村けんの芸名は、そんな父――志村憲司への愛憎からつけたものでした。また、「ひとみ婆さん」や「ボケ老人と息子の嫁」といった老人コントは、事故後の父のふるまいをモデルとしてしてることは有名です。


    ●4

    どこかしら自分の父親を思わせるような家族に様々なことを強制させられつつも、家族であるだけに本気で憎んだり、反発したりもできない。幼すぎる為に、家を出ることもできない。そんな男の子をみていると、志村けんはどうしても自分のことを当て嵌めてしまうのでした。

    だから志村けんには油断があったのでしょう。大勢がいる旅館のロビーで接客していると、ふとしたタイミングで男の子が志村けんに近づき、志村けんにだけ聞こえるような小声で話しかけました。

     
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